全身性エリテマトーデス という病気をご存じでしょうか。別名SLE(Systematic Lupus Erythematosus)とも呼ばれるこの病気は、主に全身の臓器に原因不明の炎症があらわれるという病態を有し、自己免疫疾患の一種として膠原病のひとつに分類されている特定疾患です。
今のところ原因は未解明であるものの、抗体を作る作用を有するBリンパ球が異常に活性化し、それに伴い産生された自己抗体により臓器の病変が生じると考えられています。近年の薬剤の開発に伴い、 生存率 は著しく向上しています。
飛躍的に生存率が向上した難病 全身性エリテマトーデス
全身性エリテマトーデスの特徴と医療の進歩
全身性エリテマトーデスは、全身性紅斑性狼瘡の異名のとおり、大部分の患者の皮膚に、狼に噛まれた痕のような紅斑の発疹が生じることを特徴とします。
更に発熱、全身倦怠感といった全身症状に加え、関節、皮膚、腎臓、肺、中枢神経など内臓のさまざまな症状が、一度に、あるいは時間の経過とともに見られます。
具体的な発症内容及や発症時期が千差万別であることから、以前は診断が非常に難しく手遅れになる場合もありましたが、近年の診断技術の進歩と治療法の発達により、早期発見及び早期治療を施した場合の生存率は健常人と同程度の水準へと著しく向上しました。
なお、上述したとおり症状が多様であるため他の病気との見分けは困難を伴いますが、自己免疫疾患であることに起因し、健常人の血液には存在しない自己抗体が検出されます。
具体的には、患者の98~99%の血液中で抗核抗体という自己抗体が陽性を示します。この抗核抗体により自分の体や組織を異物(抗原)として認識し攻撃が生じるのです。
治療法
免疫抑制効果を有する薬剤を用います。特に副腎皮質ステロイドは、現在のところ治療に不可欠の薬剤として知られています。また副腎皮質ステロイドの効果が不十分であったり強い副作用が現れるといった場合には、免疫抑制薬を使うことがあります。
ただし副腎皮質ステロイドにはさまざまな副作用があります。大量使用は、満月様顔貌(ムーンフェース)やニキビをもたらします。また精神症状(不眠、抑うつ)、高血圧、脂質代謝異常、骨粗しょう症、大腿骨頭壊死、糖尿病、さらには感染症にかかりやすくなる等の危険性があります。医師の指導下、適切に服用することが重要です。
改善した生存率と死亡原因の変化
副腎皮質ステロイドが未開発であった1950年代に対し、生存率は飛躍的に進歩しました。当時は、発症してから5年以上の生存率は50%程とされていましたが、現在の生存率は95%以上にまで改善しています。
死因では従来、腎不全がトップでしたが、近年は血液透析を含む治療法の発達によりその死亡は著しく減少し、代わりに、免疫力低下に伴う日和見感染症などの感染症死が最多となっています。
また最近では動脈硬化性病変(心筋梗塞や脳血管障害)や悪性腫瘍による死亡が増加傾向を示しています。
個人差の大きい予後
臓器障害の広がりと重症度により予後は大きく異なります。関節炎や皮膚症状だけにとどまる場合は、薬剤の服用により健常人とほとんど変わらない通常の生活をおくることが可能です。
一方、臓器障害を示している場合には、多種類の薬剤を大量に長期間服用するため、免疫を抑える薬剤により従来持っていた細菌やウイルスに対する免疫作用も抑制され、感染症に罹患する危険が高まります。
その結果、弱い病原体によっても病気が引き起こされてしまうため注意が必要です。
重篤化を防ぐため適切な受診と治療を
生存率が著しく改善したとはいえ、全身性エリテマトーデスの経過は予測困難であり、予後は実にさまざまです。慢性化しやすく、症状の無い期間を挟みながら再燃を繰り返す傾向があるためです。
この再燃は、紫外線照射(日光過敏)やウイルス感染、薬剤過敏、妊娠・出産、外科手術、美容形成手術、寒冷・ストレスなど様々な要因が引き金となり生じます。再燃防止に日頃から注意を払うとともに、早期かつ定期的な受診と治療を心がけることが重要です。
まとめ
飛躍的に生存率が向上した難病 全身性エリテマトーデス
全身性エリテマトーデスの特徴と医療の進歩
治療法
改善した生存率と死亡原因の変化
個人差の大きい予後
重篤化を防ぐため適切な受診と治療を