現在、日本では年間約11,000名が 子宮体がん にかかっています。20年前までは子宮体がんはそれほど多いがんではありませんでした。ところが近年になって急増しています。
その背景には、女性のライフスタイルの変化があると考えられています。ライフスタイルと子宮体がん、どのような関係があるのでしょうか?
ライフスタイルが関係している?近年増加している子宮体がん
子宮体がんとは
子宮体がんとは、子宮内部の粘膜から発生するがんです。子宮内膜がんと呼ばれることもあります。
発生したがんは徐々に子宮の筋肉に浸潤してゆきます。子宮頸部、卵管、卵巣、骨盤内、リンパ節に転移することもあり、進行がすすんだ場合は腹膜、腸、肺、肝臓、骨にまで転移することがあります。
40歳を過ぎたころ患者数が多くなりますが、年齢層としては50代、60代で多く、特に顕著なのが閉経前後の50歳前半です。また近年では30代で発症する方もいます。
危険因子
肥満(欧米化食生活)、出産未経験(晩婚化)、月経不順、閉経が遅い(53歳以上)、糖尿病、高血圧などがあげられます。
原因
子宮内膜のエストロゲンの刺激作用が原因とされています。エストロゲンは子宮内膜を増殖させますが、排卵障害などによって排卵後のプロゲステロンの作用を受けずにエストロゲンに刺激され続けると子宮内膜が過剰に増殖するため、がんの発生につながると考えられています。
妊娠すると黄体そして胎盤から大量のプロゲステロンが分泌されるため、出産回数が多いほうが子宮体がんにかかりにくいことがわかっています。したがって出産未経験の方では、エストロゲン優位の状態が長く続くことになります。
また肥満の方では、脂肪組織からエストロゲンが作られ続けます。更年期障害治療のためにホルモン治療を受けた方では、エストロゲン投与が長期使用されています。
近年の女性のライフスタイルが子宮体がんに関係している所以であるといわれているのは、このように、肥満、晩婚化による出産の有無、ホルモン治療、そして月経不順など、子宮体がんの原因となるエストロゲンの刺激が以前より増しているためです。
症状
ほとんどの場合、不正出血(月経ではありません)があります。その他にも、漿液性帯下(さらっとした水っぽいおりもの)、血性帯下(血液が混じったおりもの)、下腹部痛がみられます。
子宮体がんになる方の年齢は比較的高いわけですが、どの年齢層であっても不正出血があった場合は、すぐに婦人科を受診することが肝心です。
子宮体がんの進行はとても遅いため、初期段階で発見される場合は、治癒は100%に近いといわれています。
検査方法
不正出血がある場合は、まず妊娠しているのかどうか確認がなされます。超音波検査を受け、子宮内膜厚測定が行われます。
その後、子宮に細い器具を挿入し、子宮内膜の細胞を採取し、子宮内膜細胞診(細胞検査)がなされます。検査が陽性また再検査が必要となった場合は、精密検査に移ります。
ここでは、子宮内膜組織診(がんの有無を検査)がおこなわれます。子宮体がんであると確定診断された場合は、X線、経静脈性尿路造影、膀胱鏡、直腸鏡検査、腹部超音波検査、CT、MRIによって、がんの広がり(進行度)具合を調べます。
治療方法
治療の基本は開腹手術で、単純子宮全摘と両側付属器(卵巣、卵管)切除が原則です。
子宮以外の腹膜やリンパ節などにがんが転移していた場合は、放射線療法や化学療法が実行されることもあります。
子宮を温存し妊娠の可能性を維持したい方は、ホルモン剤によって治療することも可能ですが、あくまでも初期の場合に限ります。子宮以外に転移が認められない場合は、約80%で完治が可能です。
他のがん同様、早期発見、早期治療が重要です。子宮体がんは、近年のライフスタイルの変化と関係していますので、すべての年齢層で、子宮がん検診(定期検診)を習慣づけることが望ましいといえます。
まとめ
ライフスタイルが関係している?近年増加している子宮体がん
子宮体がんとは
危険因子
原因
症状
検査方法
治療方法