乳癌 の手術は骨や内臓を切るような手術に比べ「体の表面の手術」と考えられているように比較的回復が早く入院期間も短めです。それでもやはり体にメスを入れるという事はそれなりに負担がかかりリスクもあります。 術後 のトラブルを回避するためにも正しいケアをしていきましょう。
乳癌の術後の状態とケア
乳癌の手術の種類
乳癌の手術には幾つかの種類があります。それぞれの病態や病期を踏まえ再発のリスクとQOLのバランス、患者の希望などが考慮されて手術方法が決まります。
腫瘍が小さい場合や腫瘍が大きくても術前の化学療法で腫瘍が縮小した場合には、乳房の一部だけを切除する「乳房温存手術」が行われます。
一方、腫瘍が大きい状態で手術をする場合や複数の腫瘍が離れた場所に存在している場合、広範囲に腫瘍が広がっている場合、乳頭付近に腫瘍がある場合、遺伝性乳癌の場合などは「乳房切除術」が行われることが一般的です。
リンパに転移が認められる場合にはさらにリンパの郭清が行われます。近年では少なくなりましたが、癌が胸の筋肉に達している場合は大胸筋や小胸筋も切除する「胸筋合併乳房切除術(ハルステッド法)」が行われます。
当然切除する範囲が大きいほど術後の回復に要する期間は長くなります。
術後の状態
手術が終了すると多くの病院では回復室に移動し一定期間体調のモニター管理が行われます。ここで問題がなければ一般病棟に戻され、徐々に体に付けられた点滴や尿管などの管が抜けていきます。
内臓の手術と違い食事も翌日から通常食になり自力で歩いてトイレに行く事も可能になります。切除した場所から排液が出るのでその液を排出させるためのドレーンを体に繋いでおく場合も多く見られます。
術後しばらく経ってから、術側の腕の肘の内側に痛みが出ることがあります。腕を伸ばすと何かがピンと張ったようになり強い痛みを感じます。
リンパの郭清を行った場合にこの症状が出ることが多いようですが、これは血管の炎症によるものですので無理に伸ばさず様子を見るようにしましょう。大抵は1~2ヶ月位で自然に消えていきます。
リンパ郭清後のリハビリ
リンパの郭清をしなかった場合は特別なリハビリは必要ありませんが、そうでない場合は術後の合併症の予防に術後すぐからのリハビリが必要です。
リンパの郭清を行うと肩や腕の動きが悪くなる運動障害が起こる事があります。術後すぐから指や腕の曲げ伸ばしを始め、無理のない程度に少しずつ腕を上げる練習をして肩の可動域が小さくならないように気をつけましょう。
また、リンパを郭清すると「リンパ浮腫」が起こるリスクが高くなります。これは腕にリンパ液が停滞して腫れが続く状態の事で、このリンパ浮腫になるとリンパの流れが悪くなるため抵抗力が低下し、わずかな傷口からでも感染症が起こりやすくなり蜂窩織炎など急性の炎症を引き起こします。
そして一度リンパ浮腫になると元の状態に戻す事が困難になります。そのためリンパ浮腫にならないよう日々のケアがとても重要です。
日常生活での注意事項
リンパ浮腫を予防するためには、第一に術側の腕や手になるべく傷を作らないことです。傷ができるとその修復のためにリンパ液が多く集まり浮腫が起こりやすくなります。注射や採血、血圧測定なども術側ではなるべく行わないよう気をつけて下さい。
虫刺されや過度の日焼けも同様です。皮膚が乾燥すると傷ができやすくなるのでクリームなどで保湿することも大切です。
次に腕に負担をかけないように術側の腕で重いものを持たないようにしたり、就寝する際は腕の下に枕を置いて少し高くして寝るようにして下さい。就寝中の寝返りは無意識なので仕方ありませんが、できるだけ術側を下にしないよう気をつけるようにしましょう。
日常のケアとして、術側の腕に反対側の手をそっと置き、手首から肩に向かって赤ちゃんの頭を撫でるようにゆっくり優しく皮膚表面をなぞるとリンパの流れを促す事ができ、浮腫の予防につながります。気がついたときに行うよう習慣付けると良いと思います。
まとめ
乳癌の術後の状態とケア
乳癌の手術の種類
術後の状態
リンパ郭清後のリハビリ
日常生活での注意事項