「更年期障害で薬を使った治療とは(前編)」では、更年期障害の薬として漢方薬や抗うつ薬をご紹介しました。後編では、 更年期障害 の 薬 としてホルモン補充療法(HRT)による原因療法についてご紹介致します。副作用や乳がんとの関係性、投薬の注意点なども考慮し治療について考えましょう。
更年期障害で薬を使った治療とは(後編)
ホルモン補充療法(HRT)による原因療法
更年期障害の原因である卵巣ホルモンを外から補うことでつらい症状を和らげる方法です。
薬の種類としては、エストロゲン単剤とエストロゲン・黄体ホルモン配合剤、黄体ホルモン製剤の3種類があり、錠剤を飲む方法(経口投与)とパッチ剤を貼る方法(経皮吸収型製剤)、指定箇所に薬を塗る方法の3種類があります。
通常、エストロゲン剤と黄体ホルモン剤は併用しますが、子宮の有無、閉経からの年数など個々の状況によって、投与方法は異なります。
注意する点は、長期にエストロゲンのみを投与していると子宮体がんのリスクが高くなることです。そのため、エストロゲンと黄体ホルモンを併用します。ただし、3か月以内であればエストロゲンのみを投与しても、子宮体がんの起こる子宮内膜には影響のでないことが分かっています。
では、HRT療法でよく処方される薬剤をご紹介します。
エストロゲン単剤
錠剤であればプレリン錠、ジュリナ錠、エストリール錠、貼り薬ではエストラーナテープ、フェミエスト、塗り薬ではル・エストロジェル、ディビゲルがよく処方されます。
エストロゲン・黄体ホルモン配合剤
錠剤であればウェールナラ配合錠、貼り薬ではメノエイドコンビパッチです。
黄体ホルモン製剤
錠剤であればプロベラ錠、プロゲストン錠、ヒスロン錠、デュファストン錠、ノアルテン錠の5種類です。
HRTの副作用
エストロゲンと黄体ホルモン剤を併用する場合、ホルモンの調節を行うためにあえて出血をさせます。これを消退出血と呼びますが、この出血は半年ほどでほとんどが消失しますし、通常大きな問題にはなりません。
他には、乳房のハリや痛み、おりもの、下腹部のハリ、頭痛、吐き気などがあります。こういった症状は、投与量の調節で多くは解決が出来ますので、早めに医師へ相談をしましょう。
HRTと乳がん
エストロゲンと黄体ホルモンを併用し、5年以上の治療をすると乳がん発生率が通常より高いというアメリカのデータが過去に発表され、HRTの治療へ不安を感じる方が多くいらっしゃいました。
その後、厚生労働省が調査を行った結果、逆にこの治療を受けた方のほうが乳がんの発生率が少ないという報告がされています。つまり、HRT治療で乳がんが増えるということではなかったのです。
しかし、近年、乳がんの発生率が高くなっている現状では、HRT治療を受けているか否かということではなく、積極的に乳がん検診を受診したほうがよいでしょう。
HRTでの注意点
乳がん、子宮体がん、重度の肝障害の治療中の人は、この治療は受けることが出来ません。乳がん、心筋梗塞、静脈血栓栓塞症、急性血栓性静脈炎、心筋梗塞、冠動脈に動脈硬化の既住歴のある人、妊娠の疑いがある人もこの治療を受けることが出来ません。
その他にも慎重投与をしなければならない場合もありますので、治療を受ける前に必ず医師に既住歴を報告しましょう。
更年期障害の治療に関わらず、投薬による治療では体質・健康状態、投薬期間などによっては薬の副作用が現れることがあります。まずは、自分の状態を医師に告げ、体質や症状にあった薬を処方してもらいましょう。
そして医師からも薬の副作用など、リスクの説明を十分に受け、治療を開始しましょう。もし副作用が現れたときには、すぐに医療機関へ受診してください。
まとめ
更年期障害で薬を使った治療とは(後編)
ホルモン補充療法(HRT)による原因療法
HRTの副作用
HRTと乳がん
HRTでの注意点