便通を改善する 効果 を期待して処方される 下剤 の働きはどれも同じではありません。
下剤の作用はおおまかにいって、①硬い便を軟らかくする、②腸や肛門を動かす、の2つに分類することができます。①として膨張性下剤、浸透圧性下剤、分泌性下剤などがあり、②には刺激性下剤や直腸刺激性下剤があります。
それぞれの薬剤に排便効果だけでなく、注意点や副作用が存在します。
下剤が排便効果を発揮する仕組みを説明します
下剤の効果と作用
医療現場ではさまざまな下剤(緩下薬(かんげやく)や便秘薬とも言われますが、この項では下剤という言葉で統一させていただきます)が使用されています。下剤は便通を改善する効果を期待して処方されるわけですが、実は下剤の働きはどれも同じではありません。
そのために作用が異なる複数の下剤を組み合わせて使用するケースもあります。
下剤の作用はおおまかにいって、①硬い便を軟らかくする、②腸や肛門を動かす、の2つに分類することができます。この項ではそれぞれの下剤がどのような作用によって排便効果を発揮しているかについて説明します。
膨張性下剤
ポリカルボフィルカルシウム(商品名コロネル、ポリフルなど)という薬剤です。1日3回服用することが基本です。服用した薬が胃に到達すると、胃酸のためにポリカルボフィルとカルシウムに分離します。
分離したポリカルボフィルには吸水作用があるために、胃の先の小腸や大腸で水を吸って便が軟らかくなるしくみです。カルシウムがたくさん含まれているために副作用や他の薬との飲み合わせに注意が必要です。
浸透圧性下剤
マグネシウム製剤と呼ばれている薬で医療機関ではマグミットやマグラックスなどの商品名で処方されます。1日3回服用することが基本です。この薬は腸内の浸透圧を上げることで、便に含まれる水分量を増やし、その結果便を軟らかくする効果があります。
昔から広く使用されている薬剤で排便効果もよいのですが、マグネシウムを含んでいるために副作用として高マグネシウム血症を起こすことがあります。高マグネシウム血症は最悪の場合不整脈を生じて死亡することもあるこわい副作用です。
特に高齢者、腎機能が低下している人、ビタミンD3(骨粗鬆症(こつそしょうしょう)などに対して処方される薬です)を服用している人では血中のマグネシウム値が高くなりやすいために要注意です。この副作用については、比較的最近、厚生労働省から医療機関に警告が出されています。
分泌性下剤
ルビプロストン(商品名アミティーザ)という近年発売されたもっとも新しい下剤で、これまでの下剤とは異なる作用によって強力な排便効果を発揮します。1日2回服用することが基本です。
この薬は小腸粘膜にあるClチャネルと呼ばれる部位を刺激することで腸液の分泌を促進します。その結果、便を軟らかくするとともに、便の量を増加させることで排便を促します。主な副作用として吐き気を生じることがあります。また妊娠している人には使用することができません。
刺激性下剤
大腸や直腸、肛門を刺激することでその部位を動かし、排便させる薬です。アントラキノン系誘導体(商品名プルゼニドなど)は上述のマグネシウム製剤とともに広く使用されている薬剤で、大腸の壁を薬が直接刺激して腸を動かします。1日1回眠前に使用することが基本です。
腸を動かすために、副作用として腹痛や下痢を生じることがあります。また長期間使用し続けると、耐性が生じて効果が弱くなる、あるいは習慣性(下剤なしでは排便がなくなる)などの問題を生じることがあります。
ピォスルファートナトリウム水和物(商品名ラキソベロンなど)もしばしば処方される薬で、大腸で腸内細菌によってジフェノール体という物質に変換されて大腸を刺激します。
錠剤もありますが、水薬(個人差がありますが10~15滴程度を使用することが一般的です)もあります。この下剤は妊娠中の方でも使用可能です。
直腸刺激性下剤
直腸を刺激して動かし排便を促します。ただし上記の刺激性下剤は飲み薬であるのに対して、直腸刺激性下剤は肛門から入れる薬剤です。そのため吐き気が強いときなど内服ができない場合でも使用が可能です。
これまでに記載したさまざまな下剤に比べてもっとも短時間で排便が得られるメリットがありますが、便失禁や乱用による肛門部の外傷に注意を要します。
炭酸水素ナトリウム(商品名新レシカルボン坐剤)は直腸内で炭酸ガスを発生させて直腸を刺激します。ビサコジル(商品名テレミンソフト坐剤)は直腸の粘膜を刺激する薬剤です。
有名なグリセリン(商品名グリセリン浣腸)は肛門や直腸の粘膜を刺激するとともに便を軟らかくして排便を促進します。
まとめ
下剤が排便効果を発揮する仕組みを説明します
下剤の効果と作用
膨張性下剤
浸透圧性下剤
分泌性下剤
刺激性下剤
直腸刺激性下剤