SLE とはSystemic Lupus Erythematosusの略称で、日本語では全身性エリテマトーデスや全身性紅斑性狼瘡、またはエリテマトーデスと言われています。
発熱、全身倦怠感、易疲労感、関節炎、皮膚の紅斑、日光過敏症、痛みのない口内炎、脱毛症、臓器障害などの症状があります。それぞれの症状は軽症~重症まであり、症状の重さは一人一人全く違います。
SLEとは
SLEの原因
現在のところ原因は分かっていません。しかし、自分を防御するためのタンパク質が、自分の組織、細胞、タンパク質などを攻撃してしまうということがわかっており、SLEは代表的な臓器非特異的自己免疫疾患といわれています。
※自己抗原=様々な自分の組織、細胞、タンパク質などの事(攻撃される側)
※自己抗体=自己抗原に対して攻撃するタンパク質の事(攻撃する側)
標的となる自己抗原は自分の細胞中にある細胞核を構成する成分(核抗原)が圧倒的に多く、これに対する抗体を抗核抗体と言います。
SLEの病態
通常の生体内では、免疫複合体(抗原と抗体などがくっついてできたもの)が作られ、血液中に流れても、異物を処理する細胞によりこの免疫複合体は排除されます。
しかし、SLEではこの免疫複合体(自己抗原と自己抗体などがくっついてできたもの)が処理する能力を超え、血液中に大量の免疫複合体が流れます。これにより全身の臓器に免疫複合体が沈着し、各臓器に炎症が起きます。
とくに血液や脳脊髄液、関節液を濾過する腎臓やその通り道となる血管、脈絡叢、関節に免疫複合体が沈着しやすく、これらの臓器に炎症が起きやすくなります。その結果、免疫複合体性糸球体腎炎、血管炎、関節炎などがおきます。
SLEの疫学
日本のSLE患者数は約3万人と言われています。SLEは女性に多く(男女比=1:9)、15~50歳の挙児可能年齢に好発します。
この理由としては、性ホルモンの関与が示唆されていますが、このほかにも紫外線やウイルス感染、妊娠・出産などが言われています。
SLEの診断
SLEの診断には1982年にアメリカリウマチ協会(ARA)より以下に示す疾患の分類基準が示され、現在ではこれをもとに診断しています。
- 蝶形紅斑
- 円盤状皮疹
- 日光過敏症
- 口腔潰瘍(無痛性の口腔・鼻咽頭潰瘍)
- 関節炎(2ヶ所以上の非びらん性)、⑥漿膜炎(胸膜炎、心膜炎)
- 腎症状(タンパク尿、細胞性円柱)
- 神経症状(痙攣、精神病)
- 血液異常(溶血性貧血、白血球減少症、リンパ球減少症、血小板減少症)
- 免疫異常(LE細胞、抗DNA抗体、抗Sm抗体、梅毒反応疑陽性)
- 抗核抗体の11項目中4項目以上陽性である場合にSLEと診断します
SLEの治療法
SLEの治療は本人の症状に合わせて行われます。基本となるのは副腎皮質ステロイドによる薬物治療です。商品名としてはプレドニンやプレドニゾロン、ケナコルトーA、リメタゾン、リンデロンなどがあります。しかし、他の薬物同様、ステロイドには副作用があります。
各種ステロイド剤が効かない、または重篤な副作用があり使用できない場合は免疫抑制剤が使われます。免疫用製剤にはシクロホスファミドやシクロスポリンなどが使われます。しかし、免疫抑制剤はその名の通り「自己の免疫を抑制してしまう。」のでいろいろな感染症にかかりやすくなります。
よって、虫歯や歯周病、風邪やインフルエンザなどの細菌やウイルス感染、膀胱炎、水虫(白癬菌感染)などに気を付けなくてはいけません。マスクやうがい手洗いは必須となります。薬物治療を行っても症状が進行する場合は各種透析や血液浄化、血漿交換などが行われます。
SLEへの補助金
日本でSLEは特定疾患として医療費が補助されます。特定疾患治療研究費補助金があり、対象疾患の治療に対してのみ公費負担となります。この補助金を受けるためには特定疾患医療受給者証を必要とし、特定疾患医療受給者証は検査や書類提出、診断書などを作成し取得します。
また、自治体によっては難病手当などの補助金を出しているところもあるので居住地の自治体への確認が必要です。
まとめ
SLEとは
SLEの原因
SLEの病態
SLEの疫学
SLEの診断
SLEの治療法
SLEへの補助金