近年の医学技術革新は日進月歩です。 バセドウ病 は 遺伝 するのかしないのか?いろいろな説が流れていますので、ここで疾患と遺伝との関係について、じっくり考えてみましょう。
誤解しないで バセドウ病と遺伝の関係
バセドウ病は自己免疫疾患です
バセドウ病は自己免疫疾患です。自己免疫疾患とは、免疫システムが正常でなくなり、自分の身体の組織や細胞を攻撃する疾患です。
バセドウ病になると、なんらかの要因がきっかけとなり、自分の甲状腺すら異物であると認識し、甲状腺細胞の表面にあるTSHレセプターに対する抗体を作りだし、甲状腺を刺激し続けるため、甲状腺ホルモンを過剰に分泌し続けます。
自己免疫疾患は、バセドウ病以外にも、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、潰瘍性大腸炎、1型糖尿病、多発性硬化症、血管炎など多岐に渡ります。
自己免疫疾患の発症の引き金
自己免疫疾患の発症の引き金になる要因がいくつか挙げらていますが、ウィルス感染、薬剤、外傷や血管損傷、日光、放射線なども、体内に影響を与える物質といわれています。
自己免疫疾患には遺伝性のものもあり、発症のしやすが遺伝することもあります。また、自己免疫疾患にはホルモン分泌が関係しているので、女性に多く発症するといわれています。
遺伝との関係
特定の遺伝子が原因で起こる疾患は遺伝子疾患とよばれますが、バセドウ病は遺伝子疾患には含まれていないものの、少なからずとも関係があるのでは?といわれています。
また遺伝子疾患といっても、遺伝子が単独で要因になるのではなく、環境要因が関与することで発症するケースが多いのも事実です。
最近の研究によって、自己免疫疾患は多遺伝子疾患ではないか?と考えられています。多遺伝子疾患とは、遺伝子が単独で疾患を発症させるのではなく、複数の遺伝子、さらにそれらになんらかの環境因子が加わることで初めて発症する疾患です。
環境因子とは、食事、運動、汚染物質、ストレスなど、ありとあらゆるものが環境因子となります。なにが環境因子となるのか、これも千差万別です。
多遺伝子疾患には、乳癌や大腸癌などの家族性腫瘍、そして糖尿病、高血圧、循環器疾患、肥満などの成人病(生活習慣病)が含まれています。
そこで、遺伝子の関与による発症のしやすさを調査したところ、バセドウ病では、血縁内に自己免疫疾患を発症している方がいる場合、一般の方(血縁者に自己免疫疾患がいない)よりも15倍発症しやすいという結果がでています。
同じ自己免疫疾患のそれを比較として挙げてみますと、関節リウマチは8倍、1型糖尿病は15倍、多発性硬化症20倍、潰瘍性大腸炎12倍、乾癬6倍となっています。
どの疾患も、一般の方より数倍ほど発症する可能性が高いといえますが、バセドウ病も単独遺伝子で発症するわけではなく、複数の遺伝子になんらかの環境要因が加わることで発症しているということを忘れないでください。
不安は禁物
血縁者に遺伝子を持ってる人がいるから、と不安になり病気を恐れることはありません。前述のように、遺伝子をもっていても、環境要因が加わらなければ発症しないのが多遺伝子疾患です。
遺伝子をもっているから発症や疾患のリスクがある、そうではなく、環境も関係し発症や疾患のリスクに影響を与えているのだ、ということを理解しなければなりません。
遺伝については、おおかれすくなかれ、憶測や誤解そして誤った知識が錯乱しています。正しい知識を身につけなければ不安になるだけです。遺伝子と健康、遺伝子と疾患、これらの関係性を耳にするだけで、多くの方々が悲観的な考え方を持つ傾向があります。
親が正常でも突然変異で起こる遺伝子疾患もあれば、親は異常なのに子供には遺伝しない場合もあります。遺伝子は変えらないけど環境は変えられる、という楽観的な考え方も、疾患、特に多遺伝子疾患には必要です。
バセドウ病においても、多遺伝子疾患といわれていますが、だからといって、常に心配しながら生きてゆくのもおかしな話です。
遺伝子そのものよりも、ウィルス感染や外傷、そして食事や運動やストレスなど、環境要因が発症の引き金とならないように、日ごろから体調管理や健康管理などに気をつけて、ストレスをなるべく受けないでいられるような前向きで明るい気持ちをもった生活を送ることが肝心です。
まとめ
誤解しないで バセドウ病と遺伝の関係
バセドウ病は自己免疫疾患です
自己免疫疾患の発症の引き金
遺伝との関係
不安は禁物