多嚢胞性卵巣症候群とは若い女性の排卵障害によくみられる疾患で、卵胞がなかなか発育せず、排卵しにくくなるものです。妊娠を望んで妊活中に発見されることも多いのですが、どのような治療が施されるのでしょうか。
多嚢胞性卵巣症候群 の 治療 についてご紹介いたします。
妊娠も望める多嚢胞性卵巣症候群の治療のいろいろ
多嚢胞性卵巣症候群とは
多嚢胞性卵巣と呼ばれる病態の方の卵巣のエコー画像をみると、卵巣の表面に沿って10㎜程度に発育して排卵しないままの卵胞が数珠つなぎになっています。
日本産科婦人科学会の診断基準によると、多嚢胞性卵巣症候群とはこのエコー画像にみられる多嚢胞性卵巣であることと月経異常があること、血中男性ホルモンが高い値であるか、LH(黄体形成ホルモン)が高い値でFSH(卵胞刺激ホルモン)が正常な値であることの3点を満たすものだとされています。
卵巣の中に複数の卵胞が発育しているという状態は、正常な排卵がある女性でも起こりうることで、月経異常やホルモン異常が伴っていない多嚢胞性卵巣は疾患とはみなされません。
多嚢胞性卵巣症候群の治療
上述のように多嚢胞性卵巣症候群は若い女性に多く、妊娠を望む場合が多いことから、排卵の機会を増やす治療が施されることになります。
まず、クロミフェンなどの薬を内服して排卵を促します。クロミフェンに反応しない場合には、プレドニンなどのステロイドやウンケイトウなどの漢方薬を併用して効果を待ちます。
内服薬で効果が出ない場合は注射での排卵誘発を試みます。一般的に多嚢胞性卵巣症候群の方は注射量が少量だと反応せず、少し多いと過剰反応をするというように、排卵誘発の注射の有効域が狭いと言われています。
注射に過剰反応をすると卵巣が3~4倍に腫れて、血液が濃縮してしまう卵巣過剰刺激症候群に陥ってしまうこともあります。
腹腔鏡下で卵巣に穴を開ける手術をする場合もあります。この手術をすると自然に排卵するようになったり、薬に対する反応がよくなったりしますが、効果は半年~1年だとされています。
多嚢胞性卵巣症候群の症状が重症でかなりの注射量を必要とする場合、早めにもう一段階進んだ治療を勧められる場合があります。
昨今では、卵巣過剰刺激症候群になりやすい方や卵胞がなかなか大きく育たない方には7~10㎜の卵胞を採卵することもできるようになってきました。ただし、妊娠率は低くなり、施術できる医療機関も限られています。
過剰なインスリンが関与しているタイプの多嚢胞性卵巣症候群の方には糖尿病の薬であるメトフォルミンが排卵障害の症状を改善することがわかってきました。
糖尿病の薬は血糖を下げてインスリンの過剰な分泌を抑えますので、卵巣内の男性ホルモンが抑えられて、ホルモンバランスが整うと考えられています。過剰なインスリンが関与しているかどうかは血液検査で調べることができます。
多嚢胞性卵巣症候群の症状は年齢とともに進んでいくと言われています。月経周期はだんだん長くなっていく傾向にあります。そのために不妊治療を受ける場合、多嚢胞性卵巣症候群の方は治療の段階の進め方が早くなることが多いようです。
多嚢胞性卵巣症候群であっても自然妊娠することや治療の結果妊娠することは十分に可能です。
ただし、いざ妊娠したいとなってから長期にわたる治療を必要とするということがないように、月経異常がある場合にはできるだけ早く専門医を受診することをお勧めいたします。
多嚢胞性卵巣症候群の注意点
妊娠を望まない場合でも月経は女性の健康のバロメーターと考えられますので、月経異常がある場合には専門医の受診が必要です。
アンドロゲンという男性ホルモンの分泌が増えることによって毛深くなったり、ニキビが増えたり、声が低くなったりする男性化がみられることがあります。
若い女性には気がかりなことであるだけでなく、昨今ではいじめの原因になったりすることも考えられますので、配慮が必要です。
多嚢胞性卵巣で男性ホルモンが多く、月経異常がある典型的な多嚢胞性卵巣症候群の方は糖尿病になる可能性が高いと言われています。
年齢が高くなり、体重が増えるほど血糖のコントロールができにくくなりますので、減量や運動によって肥満を改善することが大切になってきます。
肥満の傾向にあると多嚢胞性卵巣症候群になる可能性が高くなると言われていますが、多嚢胞性卵巣症候群になるとお腹周りの脂肪が優先的に増えるという報告もあります。このような過剰な体脂肪が頸動脈や冠動脈などの重大な疾患の一因になってしまうこともあります。
多嚢胞性卵巣症候群のためだけではなく、生活習慣病の予防のためにも適正体重を維持する努力が大切です。
まとめ
妊娠も望める多嚢胞性卵巣症候群の治療のいろいろ
多嚢胞性卵巣症候群とは
多嚢胞性卵巣症候群の治療
多嚢胞性卵巣症候群の注意点