SLEは自己免疫疾患である「膠原病」の中でも関節リウマチと並ぶ代表的な疾患です。 SLE の特徴として、発症は女性が圧倒的に多く、さらに20代30代の 妊娠 可能期の患者が非常に多いため、必然的に患者の妊娠・出産の問題が非常に多くなる傾向にあります。
SLE患者の妊娠について
SLE患者の妊娠はハイリスク
SLE患者の妊娠や出産には様々なリスクが伴います。ですが、病気をもちながら母子ともに正常な分娩をする人もたくさんいますので、まずは諦めないこと、医師との信頼関係を築き、妊娠の希望を伝え続けることが肝要です。
しかしながらSLEは妊娠によって軽症化するケースが少なく妊娠中はもちろんのこと、産後まで注意深く治療を続けなくてはならない場合が多いのです。
また、SLE患者のうち20%ほどは妊娠をきっかけに発症するともいわれていることからも、SLE患者にとって妊娠や出産は、そうでない女性とを比較すると相対的にリスクが高いと言わざるを得ません。妊娠が実現するか否かはその患者の病状によるところが大きいのです。
妊娠・出産によって病状が悪化する場合もある
SLE患者が妊娠・出産をすると、3分の1から半数くらいは分娩後に病気が悪化するとされています。悪化の症状、内容としては約8割程度の人は関節炎や皮疹が出る程度の比較的軽いもので済みますが、残りの2割の人には本格的なSLE治療が必要な程度の病態が発現します。
しかしながら、出産後になんらかのSLE症状が発現するのは妊娠・出産した全SLE患者の約半数です。つまり残りの半数の人は出産後に容態が変わることはないということです。
また、SLE患者が妊娠中になりやすい症状として妊娠高血圧症候群(子癇前症)が挙げられます。子癇前症とは妊娠高血圧症候群でも重症のタイプで尿たんぱくと高血圧が特徴です。
妊娠後半に急激に発症しますが、SLEの妊婦は高確率で子癇前症を発症します。子癇前症はすでに高血圧があり、かつ抗リン脂質抗体のある人には起こりやすいといわれています。
妊娠によるSLE悪化のリスク因子
妊娠によってSLEが悪化するリスク因子としては、妊娠の3~6カ月前くらいからSLEの活動性が高く、ループス腎炎があると妊娠中のコントロールが難しいため妊娠は危険と判断されます。
一般的に、プレドニン(ステロイド薬)を1日30mg以上必要な状態、かつ心疾患がある場合は妊娠中の母子に異常がでる確率が高くなります。特に母体の心疾患が悪化する可能性が高いため、妊娠は断念せざるをない場合が多くなります。
妊娠中~出産前後にSLE悪化を防ぐ治療プログラム
病気が軽症なら、妊娠中はステロイド治療の必要性が減りますが、出産後、分娩日から2週間は薬の必要性が増します。SLE悪化予防の治療として、妊娠3期(28週以降の妊娠後期)からステロイド薬を増量し、分娩後2~3ヵ月まで続けたのちに徐々に減らしていく方法を取ることがあります。
出産前後の治療プログラムとしては、まず妊娠30週までは薬は維持量としますが、30週以降はプレドニン(ステロイド薬)1日のその患者の必要量を増やします。1日10mg以下の人は10mgに、10mgに人は20mgに、10mg以上の人は30mgにといった具合です。
これを分娩後4週まで続けてからその後徐々に減らしていきます。なお、分娩当日および翌日はコートリル(ステロイド薬)も追加することもあります。コートリルとプレドニンは胎児に移行しにくいことが確認されているステロイド薬です。以上のような治療を妊娠中~出産後まで行っていきます。
胎児へのリスク
SLEの母親の胎内の胎児にもリスクはあります。母体にSLEや子癇前症があるとその影響によって皮湿、心ブロック、血算・肝機能障害、胸膜炎が見られることがあります。
なおこれらの原因として母体の抗SS-A抗体が胎児に移行しSLE状の症状を起こしている(新生児ループス)と考えられています。抗SS-A抗体の移行以外には、抗リン脂質抗体による流産や死産のリスクもあります。
まとめ
SLE患者の妊娠について
SLE患者の妊娠はハイリスク
妊娠・出産によって病状が悪化する場合もある
妊娠によるSLE悪化のリスク因子
妊娠中~出産前後にSLE悪化を防ぐ治療プログラム
胎児へのリスク