「子宮内膜症とその症状を理解するために(前編)」では、子宮内膜に似た組織が子宮の内側ではなく腹膜、卵巣、ダグラス窩などの子宮以外の場所にでき、その組織が増殖と剥離を繰り返すものと説明しました。
今回は、さらに詳しく 子宮内膜症 の 症状 や治療法をご紹介します。
子宮内膜症とその症状を理解するために(後編)
子宮内膜症の症状
子宮内膜症では全く症状が出ない人から初期から症状が出る人もいます。また、子宮内膜症の発生部位や大きさ、癒着の程度によっても症状は異なってきます。その中でも疼痛と不妊は子宮内膜症の2大症状となっています。
月経痛
月経痛は誰しも経験することがあると思いますが、月経を重ねるごとに痛みが強くなるのが子宮内膜症の特徴です。痛み止めが効かなくなり、日常生活に支障をきたすほどになることもあります。場合によってはめまいや吐き気を伴います。
下腹部痛・腰痛・股関節痛
月経以外の時にも痛むことが出てきます。繰り返す炎症によって生じる癒着が刺激するため痛みを発生します。
排便痛・子宮の奥の痛み
ダグラス窩や、直腸に内膜症が発生していたり、子宮と直腸が癒着により固定されてしまうことで痛みを生じることがあります。
不妊
進行し、癒着が生じることが不妊の原因となることがあります。原因不明の不妊で検査をおこなうと20~40%程度で子宮内膜症が発見されていますが、子宮内膜症と不妊の明確な因果関係はわかっていません。
下血・血便・腸閉塞
小腸に内膜症が発生した際に生じます。軽症の場合は下腹部痛にとどまることもあります。
血尿・頻尿・尿閉塞
膀胱や尿管に内膜症が発生した場合に生じます。
子宮内膜症の治療法
子宮内膜症の治療法には薬物療法と手術の2つがあります。緊急手術を必要とする場合以外は、いつ妊娠を希望するかによって治療法が変わってきます。
薬物療法にはホルモン剤を用いた治療法が主体となりますが、副作用の発現があるため、すぐに妊娠を希望しない場合や比較的症状が軽い場合は対症療法で様子を見ることもあります。
対症療法としては、痛みを軽減させる目的とした痛み止めが用いられたり、体質改善を目的とした漢方が用いられます。
手術には腹腔鏡手術と開腹手術の2つの方法があります。基本的にはホルモン剤による薬物治療で十分な効果がみられなかった場合に手術の適応となります。
腹腔鏡手術は数か所に穴をあけて行う手術になるため、体への負担は比較的少なく入院期間も短くなります。開腹手術の場合はお腹を切って手術を行うため、腹腔鏡手術に比べると体への負担は大きくなり、入院期間も長くなります。
ただし、手術をしても根治手術による子宮や卵巣の摘出をしない限り子宮内膜症は再発します。妊娠を希望する場合は保存手術が取られ、病巣を取り除いたり癒着している部分を剥離させる目的で行われます。
子宮内膜症の予後
子宮内膜症は良性の腫瘍に分類され、直接的に生命を脅かすことはありません。子宮内膜症によって妊娠しづらくなることは事実ですが、治療をすれば妊娠することができます。
早期に治療ができれば、その分妊娠も容易となってきます。また、妊娠・出産によってエストロゲンの分泌が抑えられるため、子宮内膜症の改善や抑制にもつながります。
しかし、子宮内膜症は月経がある限り再発する病気です。一度、子宮内膜症になったことがある患者さんは定期的な検査が必要となります。
現在、子宮内膜症を完治させる治療法は確立していないため、早期に治療を行い悪化させないことが重要となります。
まとめ
子宮内膜症とその症状を理解するために(後編)
子宮内膜症の症状
子宮内膜症の治療法
子宮内膜症の予後