現在、女性の10人に1人の割合で罹患している子宮内膜症は、様々な症状を伴いひどい場合には日常生活に支障が出ることがあります。漢方を用いることで、症状を改善し生活の質を向上させることが可能となります。
自分に合った 漢方 を見つけ、 子宮内膜症 と上手に向き合い快適な生活を送りましょう。
漢方を正しく理解して子宮内膜症と向き合いましょう(前編)
子宮内膜症における漢方治療の位置づけ
子宮内膜症とは簡単に言うと、月経が子宮以外の場所で起こる状態です。通常月経の際、症状の感じ方は人それぞれあるものの、月経痛が生じます。子宮内膜症では、月経痛がさらにひどくなったような症状や、通常月経では痛みが生じにくい場所に痛みが発生することがあります。
子宮内膜症の治療は基本的には外科的手術とホルモン剤による薬物療法が主となってきます。しかし、現代の医学では子宮内膜症の根治治療は子宮・卵巣の摘出しかなく、これらの治療法で根治することはできません。
あくまでも、現在発生している内膜症を改善させることを目的とした治療となってきます。
そんな中、漢方治療は子宮内膜症の補助的に用いられる治療法となります。子宮内膜症自体の改善というよりも、子宮内膜症に付随する諸症状の改善により、生活の質を向上させることを目的として漢方薬が用いられます。
漢方に期待できる効果
漢方薬は主に体質改善を目的として使用されます。子宮内膜症と体質改善は関係ないように感じがちですが、この体質改善により子宮内膜症に伴う症状を改善することが期待できます。
体質改善には時間がかかるため、長い時間をかけて改善するつもりで少なくとも2、3ヶ月くらいは服用を中止せずに継続することが大切です。
子宮内膜症の症状の一つとして不妊があります。漢方薬には体質改善に加えて、薬物療法後の妊娠率を高める効果も期待できます。
また、薬物療法に使用されるホルモン剤は比較的副作用が発現しやすく、治療が辛い場合があります。漢方薬の中には即効性があるものもあり、薬物療法と併用することでホルモン剤による副作用を軽減し、治療をスムーズに行うことが期待できます。
更には、外科的手術や薬物療法と併用することで治療効果を高めることも期待できます。
漢方治療の基本的概念
一言に漢方と言っても、非常にたくさんの種類の漢方薬があります。さらに、同じ効果を期待したものであっても、使用する人の体質によって用いる漢方薬は異なってきます。
そのため、きちんと自分の体質に合った漢方薬が選択され、適切に使用されれば副作用の発現を心配する必要はほとんどありません。
漢方の世界では、その人の体質を『証』で表します。この『証』を診断する物差しの一つとして「虚実」があります。この「虚実」は体質や体力、抵抗力などを表しており「虚証」「中間証」「実証」に分類されます。
この『証』とは異なる漢方薬を使用すると効果が出ないだけではなく副作用が生じる場合があります。
また、「気・血・水」という3つの因子で病態を把握し『証』が診断されます。この中で「血」というのは血の巡りを表しますが、子宮内膜症の場合はこの血の巡りが悪い状態であると考えられます。
この状態を漢方の世界では「瘀血」といいます。血の巡りを改善させる漢方薬「活血薬」が子宮内膜症に対して用いられます。
基本的には漢方は継続服用が重要ですが、服用して身体に異変を感じた場合は『証』が合っていない場合があります。ただし、漢方薬の効きはじめの頃に「瞑眩」と呼ばれ、一時的に症状が悪化することがあります。これは副作用とは異なり、効きはじめている証拠です。
しかし、通常副作用との見極めは難しいため、主治医に相談し、指示に従うようにしましょう。また、『証』は必ずしもいつでも同じというわけではありません。その都度きちんと診断してもらい、その時の状態に合った漢方薬を処方してもらうようにしましょう。
後編では、子宮内膜症に用いられる具体的な漢方薬についてご紹介します。
まとめ
漢方を正しく理解して子宮内膜症と向き合いましょう(前編)
子宮内膜症における漢方治療の位置づけ
漢方に期待できる効果
漢方治療の基本的概念