子宮筋腫 の治療において、 漢方 を用いることがあります。漢方自体は病気を根治するものではありませんが、辛い症状の緩和が期待できるものですので、漢方と西洋医学による治療とを上手に併用しながら治療をしていきます。
子宮筋腫の治療に用いられる漢方
薬物療法における漢方の考え方
漢方の考え方というのは病気そのものを治すというよりは、体質を改善したり症状を緩和したりすることに重点がおかれています。
病気を体全体の「ゆがみ」ととらえて、自然の植物などを原料にした「生薬(しょうやく)」によって体に生じた「ゆがみ」をとり、バランスのとれた本来の状態に戻すことを目的としているのです。
その意味では、西洋医学における薬物療法とは性質のちがうものであり双方をうまく併用しながら治療がされます。
病気に対してではなく体質を見極めて処方される
漢方では、病気そのものに対してではなく、その人の体質や体格を見極め一番必要と思われるものを処方します。この体質のことを、漢方の世界では「証(しょう)」といいます。
西洋医学と異なり、同じ症状の人でも体格や体質(証)が異なれば、違う漢方が処方されるのです。漢方は素人判断せずに必ず専門医の処方のもと服用するようにしましょう。
体質(証しょう)のタイプ
証の見極めの根拠となるものは以下の通りです。
- 自覚症状のでかたや、病歴
- 話し方、声のトーン
- 体格(がっしり、華奢、やせ形、肥満気味等)
- 顔、舌、皮膚、爪、髪等の色やツヤ
- 脈拍
- お腹の触診
これらをトータルに判断し、体質のタイプ(証)を見極めます。証は「気」・「血」・「水」の3つのタイプに分けられそれぞれさらに「虚」・「実」にタイプ分けされます。
「気」
体内を流れるエネルギーのことで、活力や神経系統、精神状態、免疫力が影響されます。
「血」
血液の状態と全身の血のめぐりの状態のこと。血行が滞りドロドロの状態か、逆に血液が不足して貧血の状態かで判断されます。
「水」
体内の血液以外の水分の状態のことです。各臓器の働きがスムーズかどうかを判断します。
子宮筋腫に処方される主な漢方薬
以下に、子宮筋腫の人に処方される、代表的な漢方をご紹介します。
温経湯(うんけいとう)
手足が火照る、口唇がカサカサに乾くなどの症状の改善に。
温清飲(うんせいいん)
皮膚の色つやが悪い、のぼせの改善に。
桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)
のぼせ、下腹部痛、お腹のハリ、頭痛、肩こりの改善に。
加味逍遥散(かみしょうようさん)
虚弱体質で、肩こり、疲れやすい、精神不安定等の精神神経症状や便秘の改善に。
香蘇散(こうそさん)
気分がすっきりしない、頭痛、食欲不振の改善に。
大黄牡丹皮湯(だいおうぼたんびとう)
下腹部痛、お腹のハリがあり、お腹にしこりを感じる人の便秘改善に。
桃核承気湯(とうかくじょうきとう)
目の下にクマがある人へ、血の巡り、便秘の改善に。
当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)
月経痛、貧血、冷え性の改善に。
漢方薬による副作用
生薬を原料としていても、自分の証とは合わない漢方薬を服用するのは大変危険です。素人判断での漢方の服用は絶対に避け、必ず専門医の処方のもと服用するようにしましょう。
また、証があっていても副作用がでることがあります。とはいえほとんどの場合が軽い食欲不振や軟便といった軽度のものですが、人によっては胃炎を起こしたり、ごく稀に肝機能障害を起こしたりする可能性もゼロではないので、漢方服用後に体調に違和感を感じるようならすぐに専門医に相談することをお勧めします。
まとめ
薬物療法における漢方の考え方
病気に対してではなく体質を見極めて処方される
体質(証しょう)の種類
子宮筋腫に処方される主な漢方薬
漢方薬による副作用