子宮筋腫 は、「30代~40代の女性の4人に1人」といわれるほどに女性にとっては身近な病気です。早期発見・早期治療によって治せることもありますが、手術となった場合もお腹を切らずにできる 腹腔鏡手術 が主流となっています。
子宮筋腫治療における腹腔鏡手術
子宮筋腫とはどんな病気か
子宮はそのほとんどが平滑筋という厚い筋肉からできています。子宮筋腫とはこの筋肉の一部が変性、発育してできる良性の腫瘍のことで、平滑筋の繊維が渦巻状に固いこぶとして発達している状態のことです。
好発年齢は40代、3人に1人が大小かかわらず子宮筋腫を持っていると言われており、20代~50代の月経のある女性なら誰でもかかる可能性のある病気です。
子宮筋腫がなぜできるのか原因ははっきり解明されていないものの、卵巣から分泌される卵胞ホルモンが関係していることがわかっており、そのため卵巣機能が活発な性成熟期に子宮筋腫ができやすくなります。発生原因が解明されていないため、発病予防の手立てもないというのが現状です。
子宮筋腫のタイプ
子宮筋腫はできる場所によって3つの種類にわけられます。子宮内側の粘膜下にできるタイプ・子宮の筋肉内にできるタイプ・子宮の外側にできるタイプがあり、それをそれぞれ「粘膜下筋腫」・「筋層内筋腫」・「漿膜下筋腫」と呼びます。
子宮筋腫のタイプによって症状やその程度は変わりますが、いずれのタイプも早期発見および早期治療が大切となります。筋腫が増大している、多数の筋腫がある、また不妊の原因になるなど生活に支障がある場合には手術による治療となることもあり、その患者数も少なくありません。
手術方法の種類と選択
手術には大きく子宮ごと取ってしまう子宮全摘出術と子宮を残し筋腫だけを取る子宮筋核摘出術とがあります。さらに子宮全摘出術には腹式子宮全摘出術と膣式子宮全摘出術があります。
子宮全摘出術の場合は一般的にはお腹側から子宮を取りだす開腹術や腹腔鏡手術が行われています。40歳以上かつ今後出産予定のない患者に適しており、その理由は子宮が原因の各症状を根本的になくすことに加えて、予後の子宮筋腫の再発や子宮がんリスクを取り除くためです。
対して子宮筋核摘出術は若い患者で、これから妊娠・出産を希望している患者に対し行われるのが一般的です。子宮を残し将来の妊娠や出産の可能性を残すことを優先するためですが、再発リスクがあります。
腹腔鏡手術の進め方
子宮筋腫治療の手術は子宮を摘出する、しないに関わらず内視鏡を使った手術で対応できる場合が多く、特に腹腔鏡を使いお腹側から治療を行う腹腔鏡手術が一般的です。
お臍の横をほんの少し切ってお腹の中を観察するための鏡(腹腔鏡)を挿入し、さらに処置を行うための鉗子などの器具を腹腔内に挿入するため2か所を同様に5mm~1cm切開して行われます。子宮核摘出術の場合は合計3か所、大きくても1cm程度の切開で済みます。
手術は全身麻酔で行われ、所要時間はおおむね1時間半~3時間程度となることが一般的です。腹腔鏡手術の利点はお腹を切る部分がとても小さく済むため、患者への負担が少なく済むことです。
術後の痛みがほとんどないため術後翌日には自力で歩く、食事する等ができるまでに回復し、術後3日目には退院する患者がほとんどで、入院日数も少ないために入院費用も低く抑えることができます。また退院後にはすぐに社会復帰することも可能です。
腹腔鏡手術の注意点
このように腹腔鏡手術は患者にとって利点が大きいと言えますが注意点もあります。ひとつは、全ての症状に適応することができないということです。
子宮筋腫があまりにも大きくお腹の切開箇所から取りだせない場合や、子宮筋腫の数が非常に多すぎるといった場合には腹腔鏡手術での適応が難しく、開腹手術での適応となることがあります。
もうひとつは、安全性についてです。お腹の中を鏡を通してしか見ることができないうえに、お腹の外から器具を操作して処置を行う方法なので、お腹の中を直接見ながら行う開腹術に比べると処置の難易度としては高いものです。術者には高い技術や経験が求められるうえに手術による合併症リスクもゼロではありません。
まとめ
子宮筋腫治療における腹腔鏡手術
子宮筋腫とはどんな病気か
子宮筋腫のタイプ
手術方法の種類と選択
腹腔鏡手術の進め方
腹腔鏡手術の注意点