子宮頚管 無力症 は本来開かない子宮口が開いてしまうために妊娠が維持できなくなり妊娠中期の流産や早産の原因となる状態で、診断基準が明確ではないものの1%程度の頻度とされています。
原因ははっきりしませんが、母体子宮の体質的な問題や子宮頚部手術の既往と関連しています。自覚症状がないために、エコーでの子宮頚管長の測定や内診でチェックされます。頚管縫縮術と呼ばれる手術が代表的な治療法です。
流産や早産の原因になる子宮頚管無力症とはどんな病気?
子宮頚管無力症とは
子宮頚管(しきゅうけいかん)は子宮と膣とがつながる部分で、胎児は出産の際には子宮頚管を通って生まれてきます。子宮頚管につながる子宮側は内子宮口(ないしきゅうこう)、膣側は外子宮口(しきゅうこう)と呼ばれます。 “子宮頸管”と違う漢字を使う場合もありますが、意味は同じです。
子宮頚管無力症は、さまざまな原因によって本来ならば開かない子宮口が開いてしまうために妊娠が維持できなくなり、妊娠中期の流産や早産の原因となる状態です。“妊娠中期”とはいつ頃?と疑問をもたれた方もおられるでしょう。
2013年に日本産科婦人科学会が、“子宮頸管無力症(日本産科婦人科学会はこちらの字を使用しています)は妊娠16週頃以後にみられる習慣流早産の原因の1つである”と定義しています(日本産科婦人科学会(編):用語解説. 産科婦人科用語集・用語解説集 改訂第3版.日本産科婦人科学会, 2013)。
子宮頚管無力症のはっきりとした診断基準は現時点では存在せず、医療機関ごとに診断されているのが現状です。そのために正確な頻度の統計はありません。しかし2011に日本のShinozakiらから発表された論文では、子宮頚管無力症の発症頻度は1.21%であったと報告されています(J Obster Gynecol Res)。
子宮頚管無力症のリスク因子
子宮頚管無力症がなぜ起こるかについては、いまだによくわかっていません。子宮頚管がもともと短い場合や、子宮にある種の奇形があるケースなど体質的な問題との関連が以前から言われており、実際、妊娠するたびに子宮頚管無力症を生じる場合もあります。
また子宮頚部手術の既往(子宮頚部円錐切除術や妊娠中絶時の機械的延長術など)と関連するとも言われています。ただしこれらに当てはまらないケースも少なくありません。
上述のShinozakiらは子宮頚管無力症のリスク因子、すなわち子宮頚管無力症になりやすい傾向があった母体・胎児の要因として、多胎妊娠(双子や三つ子の妊娠)、喫煙、ART(高度生殖医療のことで、具体的には体外受精や顕微受精のことを意味します)、そして子宮疾患があったと報告しています。
子宮頚管無力症の自覚症状と診断
2013年に日本産科婦人科学会が“子宮頸管無力症では切迫流早産徴候を自覚しない”と定義しているように、子宮頚管無力症には自覚症状はなく、自分で気づくことはできません。
上述のように子宮頚管無力症の診断基準はないのですが、子宮頚管が短くなることが子宮頚管無力症の前段階と考えられているために、経膣超音波検査(エコー。おなかの上からエコーを当てるのではなく、膣内にエコーの先を挿入して検査します)で子宮頚管長を測定することがしばしば行われています。
子宮頚管の長さが25mm未満は特に早産のハイリスクとされています。さらに子宮頚管無力症が疑われる場合には、内診で子宮口が実際に開いていないかどうかをチェックします。
子宮頚管無力症の予防法と治療法
原因がはっきりとしていないこともあって、現在子宮頚管無力症の予防に有用とされるものは確立していません。
子宮頚管無力症の治療法として頚管縫縮術(けいかんほうしゅくじゅつ)と呼ばれる手術療法が代表的で、最初に引用した日本産科婦人科学会の用語解説でも、“子宮頸管無力症の初期ならば頸管縫縮術により未然に流早産を防止することができる”と記載されています。
この“初期ならば”というところがポイントで、流産や早産の予防という観点からは子宮口が開いてしまってからでは治療のタイミングを逃してしまう場合があります。頚管縫縮術は子宮や糸で縛って閉じる手術でシロッカー法とマクドナルド法の2つがあります。
妊娠中期に3回以上の流産または早産の既往がある妊婦さんは予防的頚管縫縮術の適応があるとの報告がありますが、どのような場合に頚管縫縮術を行うのか、どのタイミングで行うのかなどについて一定の見解は得られておらず、施設によって異なります。したがって必ず手術が行われるわけではありません。
まとめ
流産や早産の原因になる子宮頚管無力症とはどんな病気?
子宮頚管無力症とは
子宮頚管無力症のリスク因子
子宮頚管無力症の自覚症状と診断
子宮頚管無力症の予防法と治療法