子宮頸部異形成 という状態をご存知でしょうか?実は子宮頸部異形成は子宮頸ガンになりかけているガンの一歩手前の段階を表す言葉で、初期の子宮頸がんの発見のためには子宮頸部異形成の発見が非常に重要な役割を果たしているのです。
子宮頸部異形成の基礎知識
子宮頸部異形成は重要な病変
異形成というのは細胞の形が変化し始めて、通常の健康な細胞の形や細胞の並びから徐々にずれてきている状態をあらわす医学用語です。ガンにはガンになる一歩手前の段階の前ガン病変という段階があり、さまざまなガンに応じて前ガン病変が提唱されています。
これらのガンの病変の評価は子宮頸がんの治療の必要性の有無や治療方針の決定などに関係する非常に重要な所見なのです。
子宮頸部異形成は子宮頸部の異常の有無を肉眼的に確認したり、子宮頸部の細胞を少しだけ採取して顕微鏡で検査する細胞診などで診断することができるので、非常に簡単に調べることができます。
子宮頸部異形成とガンの関係
子宮頸部というのは基底膜という膜の上に細胞が並び、この並んだ細胞の事を上皮と呼ばれます。
子宮頸ガンはこの上皮の中にできるガンで、上皮の内部に並んだ細胞に異常が起きている異形成の段階で3種類に分類され、軽度異形成 中等度異形成 高度異形成 という病態に分類されています。
このような異形成のなかでも高度異形成という状態からさらに悪化して起こるのが子宮頸がんです。初期の子宮頸がんは特に上皮内ガンという子宮の基底膜を超えないガンなのですが、この状態からさらにガンが成長し、基底膜を超えて発育してしまった状態を浸潤ガンと分類しています。
これらの分類によって子宮頸部の病態の把握が容易になり、高度異形成の状態や中等度異形成の状態では非常に注意が必要です。患者さん一人一人の病態を頼りに手術の必要性の有無や手術の方針の選択などを行うので、子宮頸部の病態を適切に把握しておく事が重要なのです。
一般的に軽度異形成ではそのまま経過観察を行うのですが、高度異形成では注意が必要になります。
高度異形成の40%程度が子宮上皮内ガンへと進行する可能性があり、特にHPV(ヒトパピローマウイルス)への感染が確認された場合には上皮内ガンに進行する可能性が高いので経過観察の結果によってはこの段階で手術を行います。
子宮頸部異形成を引き起こすのはウイルス
子宮頸部に異常を起こすウイルスが提唱されています。これはHPV(ヒトパピローマウイルス)というウイルスで、いわゆる皮膚のイボの原因になるウイルスの仲間です。
HPVには100種類異常のタイプがあるのですが、そのなかでもハイリスク型HPVと呼ばれる16、18、31、33、35などが通常よく知られたハイリスク型のHPVと考えられています。
HPVが子宮頸部の粘膜に感染する事で子宮頸部の上皮の細胞が膨らみ、ガンの前段階の病変を作るのですが、通常ではそのまま治癒してしまいます。このため、大半のヒトは一過性の感染で、そのヒトの免疫力によって自然と治ってしまうのです。
子宮頸部異形成の度合いと治療法の選択
子宮頸部異形成が進展すると治療が必要になります。基本的には子宮頸部の状態を評価したのちに、治療が必要と判断されれば子宮頸部円錐切除術という子宮頸部を切除する治療を行います。
この円錐切除の優れている点は、検査と同時に治療が完結してしまうという点にあって、治療を行いながら切除した切片を病理医の先生に評価してもらい、必要があればさらなる治療を行うことができるのです。
この後に化学療法や放射線療法などを併用することで子宮頸がんの治療を進めていきます。
早期発見には産婦人科の検診が重要
子宮頸部異形成は簡単な検査で発見ができます。子宮頸部は直接見ることができる場所なので、小型の拡大鏡で詳細に観察したり、子宮頸部の細胞を柔らかい筆でこすって細胞を採ってくることで検査ができるので、非常に簡単に病態の評価ができることから広く行われているのです。
定期的に産婦人科を受診して、早期発見や早期の治療ができるように心がけましょう。
まとめ
子宮頸部異形成の基礎知識
子宮頸部異形成は重要な病変
子宮頸部異形成とガンの関係
子宮頸部異形成を引き起こすのはウイルス
子宮頸部異形成の度合いと治療法の選択
早期発見には産婦人科の検診が重要