子宮頚がんの検診を受けたところ、 子宮頚部異形成 だと言われたという方や経験者の話を耳にしたことがある方は数多いのではないでしょうか。
前がん状態とも言われる子宮頚部異形成とはどのような状態なのか、その原因も含めてご紹介いたします。
20~30代の女性に急増中の子宮頚部異形成とは
子宮頚部異形成とは
子宮頚がんでは、異常な粘膜からがんができる過程において、子宮頚部異形成という段階があると言われています。
そういう意味においては子宮頚部異形成は確かに将来がんになる可能性のある前がん状態ということが言えますが、その大部分は治療をすることなく自然治癒してしまうものなので、いたずらに心配する必要はありません。
その全てががんになるわけではないので、多くの場合、切除するようなことはなく、経過観察ということになります。
子宮頚部異形成はその程度によって、軽度異形成、中等度異形成、高度異形成・上皮内がんの3種類に分類されています。近年、わが国では子宮頸がんや子宮頚部異形成の方が20~30代の女性を中心に急速に増加しています。
最近の研究によると、子宮頚部異形成はHPV・ヒト乳頭腫ウイルスというイボを作ることで知られているウイルスが原因で引き起こされるということがわかってきました。
このヒト乳頭腫ウイルスは100種類の型が存在していて、それぞれの型の違いによって、病気の特徴が違ってくると言われています。
子宮頚部異形成の場合、異形成を起こしている組織からみつかるHPVの型によって、がんに進行してしまう率が違ってくると言います。
子宮頚部異形成のDNA診断とは
上述のように同じ子宮頚部異形成でも感染しているHPVの型によってがんになる確率に違いがあることから、異形成を起こしている組織の検体のDNAを調べるということもできるようになってきました。
ただし、この方法で、子宮頚部異形成の経過やがん化するかどうかが100%正確にわかるというものではありません。従来から行われてきた細胞診や組織診を補助する診断方法として有用であると考えられているのです。
異形成を起こしている組織のDNA検査をすることで念入りな検診を必要とする方と検診の間隔をある程度あけてもよい方を分けたり、従来の細胞診や組織診で異形成が消失しても潜在的な病変を見逃さないようにするという役割も期待されています。
残念ながら、同じ型のHPVをもっていてもがん化する場合も自然治癒する場合もあって、その理由は現在のところ明らかになっていません。細胞診や組織診などの検査と組み合わせることよって、検診の適正な間隔を考えることができるものとかんがれるとよいでしょう。
子宮頚部異形成の診断と治療
子宮頚部異形成の診断は細胞診・コルポスコピー診・組織診断という方法で行われるのが一般的です。細胞診は子宮頸がん検診で行われるのと同様に子宮頚部から細胞を採取して顕微鏡で検査するものです。
細胞診で異常がみられた場合に精密検査としてコルポスコピー診と組織診がおこなわれます。コルポスコピー診断とは子宮頚部を望遠鏡のような機械を用いて拡大して観察する検査です。
自然治癒することが多い軽度異形成や中等度異形成では直ちに治療することはなく、経過観察ということになります。
高度異形成や上皮内がん、中等度異形成が長期にわたって続く場合には治療が行われます。治療は子宮頚部円錐切除術という手術に代表される手術療法がとられます。子宮頚部を円錐状に切除するこの手術は子宮を温存して妊娠を希望する方の第一選択となっています。
この手術は細胞診で中等度異形成が認められるにもかかわらず、組織診で確定診断ができない場合などに検査目的で施されることもあります。
現在のところ、子宮頚部異形成や上皮内腫瘍に有効な薬は存在しません。昨今、話題になっているHPVワクチンはHPVの感染は予防することはできるものですが、子宮頚部異形成やがんを治療するものではありません。
まとめ
20~30代の女性に急増中の子宮頚部異形成とは
子宮頚部異形成とは
子宮頚部異形成のDNA診断とは
子宮頚部異形成の診断と治療