本来は骨盤内に収まっている臓器(膀胱、子宮、直腸)が下垂し、体外に飛びでた状態のことを骨盤臓器脱と呼びます。その中でも特に子宮がそのような状態になっていることを子宮脱と呼びます。
子宮脱は妊娠や出産をきっかけになる場合がとても多く、その根本治療は外科的手術によるものとなります。 子宮脱 の 手術 とそのメリットデメリットについてみていきましょう。
子宮脱の手術とそのメリットデメリット
子宮脱は誰にでも起こりえる
子宮脱は女性であれば誰にでも起こりえる病気です。とりわけ妊娠出産を機に子宮脱になる場合がとても多いと言われています。子宮は本来、骨盤内に収まっているものですが、それは骨盤底筋群という筋肉によって下から支えられています。
しかし、妊娠によって大きく重くなった子宮を支えるために骨盤底筋群が伸びてしまったり、さらに出産の時の強い負荷によって伸びてしまいます。そのため緩んでしまった骨盤底筋群が元通りに戻らずに子宮脱を起こしてしまうのです。
妊娠出産だけでなく、加齢によって筋力が低下したり、喘息や慢性の咳によって強い負荷がかかり続けたり、肥満によって負荷がかかることによっても子宮脱の原因となりえます。
根本的な治療は外科的手術で行う
子宮脱の場合は、根本的に治療する方法は外科的な手術によるものとなります。その他の治療方法もありますがいずれも対処療法的なものであり、外科的手術に適応できない患者以外は原則手術による治療を選択する場合が多いようです。
現在の術式として最もよく用いられているものはメッシュ手術(TVM手術)というもので、再発率も従来の術式よりも低くまた安全性も保障されたもので世界的に普及している術式です。
生体に無害なメッシュシートを骨盤底の部分にハンモックのように敷き、周囲の組織と癒着して一体化します。緩んでしまった骨盤底筋をメッシュで補強し支持力を補うものです。
手術は腰椎麻酔か全身麻酔で行い、手術時間も60~90分程度のものです。
手術後の過ごし方
手術後は、メッシュが組織としっかり結合し一体化するまでは約10週間程度を要します。退院後は無理をしない程度の日常生活であれば問題なく過ごせます。
しかし、この期間内は入浴は感染を防ぐためにバスタブにつかることは避けてシャワー浴のみとし、陰部を清潔に保つようにします。
また、便秘にならないよう便通を整えるよう規則正しい生活や、食事に気を使い、かつ排便時に強くいきむことがないように気をつけましょう。
激しい運動は医師の許可が出るまでは控えるようにしましょう。
手術の合併症について
メッシュ手術は合併症の頻度はとても少ないものの、以下のようなものがあります。
手術の際にニードルという器具を挿入するために5mm程の切開をしますが、まれにニードルを進める過程で出血が見られることがあります。また、ニードルを刺す際に直腸を損傷する可能性があります。
膣の創の回復不良によって、メッシュの一部が膣壁から露出してしまうことがあります。手術直後まれに、骨盤底や股間に痛みを感じることがありますが、時間が経つにつれ改善されていきます。
TVM手術は、従来の手術方法に比べて再発率は低く、安全性も高い術式とされていますが、リスクゼロではありません。
手術を受けるかどうかは担当の医師とよく相談したうえで決めるのがよいでしょう。
手術が適合しない場合
子宮脱を根本的に治療するには手術が最もよいのですが、以下にあてはまる場合は手術が適合しない可能性がありますので、担当の医師に相談してみるのがよいでしょう。
今後の妊娠、出産を予定している方の場合は、経膣分娩に影響が出るため手術ができません。
膠原病や関節リウマチ等の疾患があり、ステロイド剤を服用中の方は、感染リスクが高いため手術を回避します。
股関節の開きに異常のある場合は、手術の体位がとれないため手術不可となる場合があります。
手術ができなかったとしても、手術以外の治療法を続けることで生活する上での不便さや不快感はかなり軽減することができますので、どのような治療を選択するのかはご自身の希望を踏まえ、医師と相談して決めていくのが良いでしょう。
まとめ
子宮脱の手術とそのメリットデメリット
子宮脱は誰にでも起こりえる
根本的な治療は外科的手術で行う
手術後の過ごし方
手術の合併症について
手術が適合しない場合