子宮脱というと耳慣れない方も多いかもしれませんが、高齢化社会を迎え、 子宮脱 になる女性が増えています。何かが出てきた!とびっくりして受診される方は少なくありません。行われている治療で最も一般的なのは、 リング による保存的療法です。
子宮が下がってくるような感じがしてお悩みの方は、恥ずかしがらずに産婦人科で診てもらいましょう。
子宮脱のリング療法
リング療法(ペッサリー療法)とは
昔からずっと行われており、手術を必要としないことから今も最もよく行われている治療です。リング(ペッサリー)と呼ばれるドーナッツ状の輪っかを腟の中に挿入します。適切な大きさのリングが適切な位置に嵌まることによって子宮を支え、下がってこないようにする方法です。
根本的な治療ではありませんが、安価であり、体への負担もとても少ないのでよく行われています。
装着方法は連続装着法と自己装着法があります。
連続装着法とは、リングを腟の中に一日中入れておく方法です。リングの挿入と交換は医師が行いますので、2~3か月ごとに産婦人科を受診し、清潔なリングと交換します。定期的に交換しないと腟の肉がリングに絡まり、抜けなくなることがあります。
自己装着法とは、自分でリングを挿入・交換する方法です。朝挿入して夜寝る前に外す、外出や仕事のときだけ使用するなどといったことが可能ですので、適切な位置に自分で挿入する事さえ出来れば、より清潔で負担が少ない方法と言えるでしょう。
最近は少しずつ自己装着法が増えてきました。
リングってどんなもの?
かつてはリングと言えば黒くて細く、非常に硬いエボナイト製のものでした。縮まないため交換の度に痛みや出血を伴うことも多かったのですが、今はポリ塩化ビニル製の軟らかいリングがほとんどです。色は白く、エボナイト製のものに比べふっくらとした形をしています。
リングには5cm大から11cm大まで、3mm〜1cm刻みで16個のサイズがあります。産婦人科医が子宮と腟の大きさから近いサイズのものを選びます。
一発でちょうどいいものを選ぶのは難しく、小さすぎると歩いている間やトイレの際にぽろんと落ちてしまいます。また、大きすぎると違和感があります。
外来で挿入した後しばらく歩いてもらったり、違和感がないかどうか確認しながら、最も適切なサイズに変更していきます。
リング療法のメリット
リング療法のメリットはまず簡便なことです。 外来で診断しリングを挿入しますので、入院の必要がありません。リングの交換は入っているリングをポコッと取り外し、腟内を洗浄して新しいものをまた入れるだけですので、かかる時間も非常に短いです。
また、手術と違ってほとんど体に負担をかけないので、高齢で体力が弱っている方や、持病のある方でも受けられる治療法です。
特にワーファリンなどの血液をサラサラにするお薬を飲んでいる方は、手術となると事前に入院してワーファリンをやめ、ヘパリンに少しずつ切り替えるといった準備を行わなくてはなりませんし、一時的に薬をやめるため血がかたまりやすくなるリスクもあります。
リング療法では、若干出血しやすいというリスクはあるものの薬をやめる必要などはいっさいなく、症状を軽減させることができます。
リング療法のデメリット
メリットもある一方で、デメリットも存在します。
ひとつはおりものです。リングは体にとっては異物ですので、腟が反応しておりものが出ます。中にはおりものの量が多くて常におりもの用シートをつけておかねばならず、かぶれてしまう方もいます。
おりものが増える場合は腟の中で感染がおきていることもありますので病院で診てもらい、必要であれば薬を挿入する必要があります。
また、リングが腟の同じところにずっと当たっていることで、その部分の腟の表面がもろくなって傷ついた状態になることがあります。ちょっとした刺激で出血しやすくなります。これを防ぐ為に、リング交換の際に女性ホルモンを含む小さな薬を腟の中に一緒に入れておくこともあります。
子宮脱を自覚したら、産婦人科を受診しましょう
子宮脱は、それ自体で命を落とすことはありませんが、日常生活に影響をきたす病気です。いわば「健康なのだけれども、不便」といった状態が続きます。
腟から子宮が出ているなんて怖い、見られるのが恥ずかしいといってなかなか病院にいかない方もおられますが、それでは不便な時間も長く続いてしまいます。
リングによる治療は日常生活での不便さをぐっと改善します。子宮がさがってきた、夕方になると違和感があるなど、自覚症状のある方は産婦人科を受診しましょう。
まとめ
子宮脱のリング療法
リング療法(ペッサリー療法)とは
リングってどんなもの?
リング療法のメリット
リング療法のデメリット
子宮脱を自覚したら、産婦人科を受診しましょう