「失った機能を取り戻すための再生医療(前編)」では、現在の日本における医療技術をご紹介いたしました。後編では、現在注目を集めている再生医療についてご説明いたします。再生医療の登場により、治療の難しい病気も治る日がやってくるかもしれません。
また、 再生医療 は私たちの日常生活にどのような影響を及ぼす可能性があるのでしょうか?
失った機能を取り戻すための再生医療(後編)
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さまざまな種類の幹細胞
現在、一つの細胞から体のあらゆる器官をつくり出す再生医療の研究が進められています。その元となる細胞を幹細胞といい、いくつかの種類にわけられます。
体性幹細胞は、私たちの体に元々備わっている幹細胞です。
普段は他の細胞に紛れながら体の奥で眠っているのですが、どこかの臓器や組織に損傷がおきたり、代謝に必要な細胞が足りないと判断すると、自らその細胞に置き換わり細胞数を増やすことにより、その臓器や組織を修復し正常な機能を維持させています。
その他、白血球や赤血球などの血液成分の元となる造血幹細胞も、この体性幹細胞の一種です。
胎児性幹細胞は、母親のお腹の中にいる胎児の体の中に存在している幹細胞です。
胎児はわずか10カ月ほどで、一つの卵細胞と遺伝子情報を持つ精子から何度も分裂や分化を繰り返して、人となって産まれてくるために、胎児性幹細胞は急速にあらゆる臓器や組織をつくり出す能力を持っているのです。
ES細胞は、受精した胚の中に存在しいずれ胎児となるため、どの細胞へも分化することができる万能幹細胞です。
そして、近年話題になっていたiPS細胞は、皮膚の細胞からつくられた幹細胞であり、ES細胞と同じくらいの能力が期待されています。
このように、私たちの体に元々備わっている幹細胞ですが、年を重ねる度に減少し、次第に体の中での再生や修復がおこなえなくなってしまいます。
しかし、これらの幹細胞の研究が進み、幹細胞移植や幹細胞からつくり出された臓器などを移植することが可能になれば、もっと多くの人々を救うことができるようになると期待されています。
口の中の再生医療
病気というと、体の中でおこるものを中心に思い浮かべてしまいますが、歯の治療も私たちが生きていくためには欠かせないものです。
人は口から物を食べることにより、同時にさまざま機能を使っています。しかし、歯を失い口から食べることができなくなれば、それらを使う機会が減り機能低下を招いてしまい、そこから全身の異常や機能低下を招くこともあります。そのため、歯が健康であることはとても重要なことなのです。
現在、他の幹細胞と同様に歯をつくり出したり、失った歯の神経を再生させる研究が進められています。動物実験では、歯の神経である歯髄の幹細胞を移植することにより、歯の神経や血管、歯髄、象牙質の再生は既に成功しており、臨床研究もはじまっています。
義歯やインプラントといった歯の代わりを形成する治療法により、口から食べる機能は維持されていますが、熱さや冷たさがわかりづらかったり、味がわかりにくいことから、食事を今までのように楽しむことができないという方も少なくありません。
歯や臓器、組織などを再生し、その機能を取り戻す再生医療により、病気を治療するだけでなく、生活の質を向上させることができる可能性が期待されています。
まとめ
失った機能を取り戻すための再生医療(後編)
さまざまな種類の幹細胞
口の中の再生医療