がんの再発や転移の話の中でリンパ節転移という言葉を耳にされたことのある方は非常に多いのではないでしょうか。血管とリンパ管にがんが浸潤してしまうと全身にがん細胞が巡ってしまう可能性があるので問題にされることが多いようです。
がん治療における リンパ節転移 についてご紹介いたします。
がん治療中のリンパ節転移はどんな意味があるのでしょうか
がんの再発・転移とは
正常な細胞は体の状態によって増殖を止め、分化してさまざまな機能を担い、最終的には脱落して新しい細胞と入れ替わります。それに対してがん細胞は際限なく増殖したり、他の場所に移動したりする性質をもっています。
再発とは手術で取りきれなかった微細ながんが残っていたり、抗がん剤や放射線治療で縮小したがんが再び大きくなったり、同じがんが別の場所に現れることを意味します。
転移とはがん細胞が最初に発生した臓器から血管やリンパ管に浸潤することによって別の臓器や器官に移動してそこで増殖することを意味します。リンパの流れが集まるリンパ節や肺・肝臓・脳・骨など血流量の多い部位に転移することが多いことが知られています。
血管が酸素や栄養素を全身に運ぶ上水道であるとするとリンパ管は老廃物を排出するための下水道にたとえることができます。
血管とリンパ管のいずれにがんが浸潤してもがん細胞を全身に運んでしまうという可能性が出てくるために、治療の初期から注意する必要があるのです。
例えば、乳がんの切除手術においては原発巣とともに脇の下のリンパ節まで取り除くことが多いのは、リンパ節からの遠隔転移を未然に防ぐ目的のためなのです。
リンパとリンパ節の働き
人間の体には左上半身と下半身のリンパを集める左リンパ本幹と右上半身のリンパを集める右リンパ本幹に分かれていて、左リンパ本幹は胸管とも呼ばれています。
左右のリンパ本幹は体内で不要になった水分と老廃物を回収しつつ運んで、左右それぞれの鎖骨付近で静脈に合流し、その後腎臓を経由して尿として排出します。
リンパ節とはリンパ管の途中にあるソラマメのように膨らんだ部分で、上半身では脇の下、下半身では足の付け根に多く集まっています。
リンパ管に異物が混入した場合、リンパ節でチェックして免疫抗体を作ることで体内に取り込まないようにします。リンパ節はリンパ管の関所のような働きをしているのです。
リンパ節転移の症状
乳がんの腋下リンパ節を例にリンパ節転移の症状についてみてみると、超音波や医師の触診によって腋下リンパ節の腫大が判明しても患者本人には自覚症状がないと言います。
また、患者本人が腫大に気づく初期の段階では痛みや腕の浮腫もなく、進行して腕が浮腫むような状態になると肩から脇や腕の違和感を感じるようになるのです。
つまり、患者本人が触ってはっきりボコボコと感じるくらいにならないと痛みやだるさなどで気づくことは困難であるということが言えるでしょう。
昨今、女性にも増加してきた肺がんでは肺門や鎖骨上のリンパ節に転移することがよくあります。肺門のリンパ節に転移すると咳や声がれ、上半身のむくみなどの症状で気づくことがあります。
首や鎖骨上のリンパ節に転移すると顔や腕が浮腫んだりしびれたりすることがあります。
大腸がんの摘出手術の際に同時に摘出したリンパ節から病理検査の結果、がん細胞が見つかったなどということはよくあることです。このような場合でも、患者本人には大腸がん特有の症状はあってもリンパ節転移の自覚には乏しいのが普通です。
がんの再発・転移への対応
上述のようにリンパ節転移は自覚症状が出るまでにかなりの期間を要するか、ほとんど自覚できない場合が多いようです。
がんの種類や治療の経過などを総合的に勘案して再発・転移の起こりやすさや起こる場所をある程度予測して対策をとるというのが現在のがん治療のあり方です。その一環として、関連性の強いリンパ節切除もとらえられています。
がんの種類によっては目に見えない小さながんがあるものとして再発・転移を防ぐ治療を早期に開始することの有効性が明らかになっているものもあります。いずれにしても、治療の後も継続的に注意深い検診を受け続けることが大切です。
まとめ
がん治療中のリンパ節転移はどんな意味があるのでしょうか
がんの再発・転移とは
リンパとリンパ節の働き
リンパ節転移の症状
がんの再発・転移への対応