リンゴ病 は正式には伝染性紅斑と言い、ヒトからヒトにうつるパルボウイルスB19による感染症です。左右の頬がリンゴのように赤くなることからリンゴ病と呼ばれていますが、全身性エリテマトーデスや皮膚筋炎など他の病気でも同様の症状が出ることがあり注意が必要です。
基本的には治療をしなくても自然に治る病気で、健常な人では1度かかるとふつうは再度感染することはありません。
リンゴ病はパルボウイルスB19による感染症です
リンゴ病
リンゴ病は左右の頬がリンゴのように赤くなる(両頬の紅斑)ことから、その病名がついていますが、医学的には伝染性紅斑(でんせんせいこうはん)が正式な病名です。
“伝染性”という言葉が示しているように、伝染性紅斑は麻疹(ましん。いわゆる“はしか”のことです)や風疹(ふうしん。いわゆる“三日はしか”のことです)と同じヒトからヒトにうつるウイルス感染症で、ヒトパルボウイルスB19というウイルスが原因です。
風疹と同じように飛沫感染(ひまつかんせん。咳やくしゃみなどでウイルスなどの病原体が飛び散ってうつっていくものです)の形式で感染していきます。ちなみに麻疹は空気感染という形式をとります。
伝染性紅斑は子どもがよくなる病気ですが、大人では子どもと接触する機会が多い30代女性に多く発症します。
麻疹や風疹などのウイルス感染症でも症状が出ない人がいるように(これを不顕性感染(ふけんせいかんせん)と言います)、パルボウイルスB19に感染した場合でも、子どもの30%程度、成人の60~70%は不顕性感染となり、知らない間に感染していることも珍しくありません。
一般的にはリンゴ病(伝染性紅斑)の治療は不要で、自然に治ります。また1度かかると生涯にわたって免疫が得られるために、健常な人ではふつう再度感染することはありません。
伝染性紅斑の症状
伝染性紅斑の症状は大きく皮膚症状と全身症状に分けることができます。皮膚症状で有名な両頬の紅斑は実は大人では少なく、このことが伝染性紅斑の診断を難しくしています。頬以外には体幹(たいかん。胸や背中、腹部など)や手足などに紅斑や皮疹を生じます。
全身症状としては、発熱(子どもでは平熱や微熱程度ですむことが多いのに対して、大人では38℃以上の発熱を示すことが少なくありません)、全身のだるさ、さまざまな部位の関節痛、関節や手足の腫れが起こります。
手足が腫れることは特徴的で特に、両側の膝より下、足背(そくはい。足の甲です)、前腕(ぜんわん。腕の肘より先の部分)、手背(しゅはい。手の甲です)に多く出現します。ただしこれらの症状が全て出そろうとは限りません。
両頬が赤くなる他の病気
両頬が赤くなる病気は実は伝染性紅斑だけてはありません。全身性エリテマトーデス(英語表記の病名を省略してしばしばSLE(エス・エル・イー)と言います)、皮膚筋炎でも両頬の紅斑が出現することがあります。
全身性エリテマトーデスと皮膚筋炎はいずれも膠原病と呼ばれる領域の病気で、伝染性紅斑と違って治療が必要になります。
膠原病は伝染性紅斑と同じように全身の皮疹、手足の腫脹、発熱、多関節痛を生じることがあること、しかも膠原病は比較的若い女性に多い病気であることから、伝染性紅斑との鑑別が必要になります。
また接触性皮膚炎、アトピー性皮膚炎、酒さ様皮膚炎(しゅさようひふえん)、日光皮膚炎などの皮膚科領域の病気でも両側の頬が赤く見えることがあります。
パルボウイルスB19感染に注意が必要な人
リンゴ病(伝染性紅斑)は上記のように自然に治り、基本的に予後もよい病気ですが、妊娠中の人、溶血性貧血(ようけつせいひんけつ。血液内科の病気です)患者、免疫不全の人は注意が必要です。
妊娠している方がパルボウイルスB19に感染すると、ウイルスが胎内に以降し、免疫力の不十分な胎児に感染して胎児貧血を生じます。貧血が重度の場合には胎児水腫をきたすことがあります、ただし頻度は多くありません。
先天性慢性溶血性貧血患者がパルボウイルスB19に感染すると、急激に無形性発作と呼ばれる重症の貧血を生じることが知られています。
さらに免疫が低下している人にパルボウイルスB19が感染すると、ウイルスを排除することができずに年単位でウイルスの持続感染を生じ、その結果慢性骨髄不全をきたすことがあります。その結果、血液をつくる骨髄に不具合が起こるために、貧血が起こります。
まとめ
リンゴ病はパルボウイルスB19による感染症です
リンゴ病
伝染性紅斑の症状
両頬が赤くなる他の病気
パルボウイルスB19感染に注意が必要な人