卵巣腫瘍とは左右に一つずつある卵巣のうち、片側もしくは両側にはれが生じた状態をいいます。 卵巣腫瘍 には非常に多くの種類があり、大きく分けて良性、悪性、その中間である境界悪性に分類できます。
ここでは卵巣嚢腫の種類と 手術 について知っておくべきことをまとめました。
卵巣腫瘍の種類と手術について知っておくべきこと
良性卵巣嚢腫と診断されたら
良性卵巣嚢腫には、3種類に分けられます。
1.全体の約25%を占め、嚢胞内部に漿液という黄色い透明な液体がたまり、卵巣がこぶし大の大きさになり、自然には縮小ない漿液性嚢胞線種という種類。
2.全体の20%を占め、嚢胞内部に粘液がたまり、巨大な腫瘍を形成する粘液性嚢胞線種という種類。この種の嚢腫は嚢胞が破れて粘液がお腹全体に広がることにより、腹膜炎をおこし、死亡することがあります。
3.全体の50%以上を占め、サイズは直径10cm以下、嚢胞の内部に皮脂、毛髪、歯、軟骨などが見られる成熟嚢胞性奇形腫という種類です。
腫瘍が5cm以下であり、画像診断で良性と分かる場合は経過観察をすることも可能ですが、2個ある卵巣のうち、病巣が片側である場合は手術で切除し、嚢胞が悪性か悪性でないかの診断を下すことが勧められます。
両側に腫瘍が認められ、かつ将来妊娠を希望する場合は、腫瘍のみを摘出し可能な限り卵巣を残す、卵巣腫瘍摘出術という術式を採用することも可能です。
妊娠を希望しない場合は、卵巣と卵管を摘出する術式の方が短時間で済みます。
更に、腫瘍の直径が10cm以下ですと腹腔鏡を用いた手術を選択することが出来ます。開腹手術に比べてダメージが小さい為、回復も早いです。
境界悪性卵巣腫瘍と診断されたら
良性の腫瘍と卵巣がんの中間に当たり、卵巣がん(悪性卵巣腫瘍)がリンパ節に転移する可能性が高いことに対し、境界悪性卵巣嚢腫ではリンパ節転移の可能性は低いです。
手術によって卵巣を摘出し、細胞診断を行い、悪性か否かの確認を行うことが最善の方法です。術式は開腹手術となり、摘出後も経過観察が必要です。
悪性卵巣腫瘍(卵巣がん)と診断されたら
いわゆる卵巣がんを指します。ごく初期であれば手術による摘出と化学療法で完治する確率が高いですが、進行していた場合は転移の可能性、範囲が高いことから治療が困難です。
卵巣がんと診断されたら、卵巣だけでなく、転移の可能性が極めて高い子宮、大網とよばれる胃と腸の間にある膜の切除、リンパ節の郭清が必要です。
また、腹膜に病変が見つかった場合はその部分も切除します。一度に多くの臓器、器官を切除するため手術による体の負担が大きくなります。
しかし、先に述べたように手術後化学療法を行うことにより完治する確率が高いので一刻も早く治療を開始することをお勧めします。
卵巣腫瘍と手術
婦人科系の病気一般にいえることですが、卵巣に腫瘍ができても症状が出にくく気が付いた時には卵巣がんになっていた、ということがないように早期に気づくことが重要です。
その為にも少しでも生理が異常であると感じたら婦人科を受診しましょう。そして、万一卵巣に腫瘍が見つかったら、それが大きくなる前に腹腔鏡で卵巣を切除してしまうことが重要だといえます。
幸い卵巣は2個あるので片方だけであれば更年期障害の心配をする必要はありません。腫瘍が大きくなったり、悪性化したりしてしまうと手術による体への負担は非常に大きくなってしまいます。
また、悪性化してしまうと他のがんに比べて非常に転移しやすいことから、化学療法が効果的であるとはいえ、手術で多くの臓器を摘出しなければいけないので心へのダメージも深刻です。
良性だからと楽観せず、医師とよく相談し、早めに的確な治療を受けるのが望まれます。
まとめ
卵巣腫瘍の種類と手術について知っておくべきこと
良性卵巣嚢腫と診断されたら
境界悪性卵巣腫瘍と診断されたら
悪性卵巣腫瘍(卵巣がん)と診断されたら
卵巣腫瘍と手術