卵巣腫瘍 は近年日本人女性に増えている病気です。卵巣腫瘍の中でも悪性の卵巣癌は、症状が出にくいため、発見されたときには進行癌になっていることが多い病気です。進行度や妊娠希望の有無により治療法は変わってくるため、医師とよく話し合うことが大切です。
卵巣腫瘍の症状・検査・治療
卵巣腫瘍の分類
卵巣腫瘍は発生母地により表層上皮性・間質性腫瘍、性索間質性腫瘍、胚細胞腫瘍の3つに分けられ、それぞれに良性腫瘍、境界悪性腫瘍、悪性腫瘍があります。
表層上皮性・間質性腫瘍は卵巣を覆う表層上皮が起源となり、性索間質性腫瘍は卵胞・黄体が起源となり、胚細胞腫瘍は卵子が起源となっています。この中で表層上皮性・間質性腫瘍の悪性腫瘍のものを卵巣癌といいます。
卵巣腫瘍の症状
卵巣腫瘍は初期には症状に乏しいため、気づかれにくく、腫瘍が大きくなる傾向があります。腫瘍が大きくなることで、周辺臓器を圧迫し、腹部膨満、消化器症状、頻尿が見られます。
これらの症状の他に、急に若返える、ヒゲが生えるなどのホルモン過剰症状が見られることや、骨に浸潤することで腰痛が生じることもあります。
また、良性腫瘍では腫瘍が卵管などを巻き込んで捻転する、卵巣茎捻転を起こすこともあります。血管を巻き込んで捻転した場合は壊死を起こし、腹膜炎に至ることもあります。
卵巣腫瘍の検査
卵巣腫瘍は自覚症状が乏しいため、妊婦健診や子宮がん検診などで偶然発見されることが多く見られます。卵巣腫瘍が発見された場合、内診・経腟エコー・MRI・CT・腫瘍マーカーを調べます。
まず、MRIで良性・悪性の推定をし、周囲組織への浸潤の有無をみます。次にCTでリンパ節転移や遠隔転移の検索をします。そして腫瘍マーカーを測り、組織型の推定をします。腫瘍マーカーは採血で調べることができます。
卵巣腫瘍は他疾患と異なり、術前に細胞診や組織診をすることができないため、術中迅速診断により、良性・悪性を判断して術式を決定します。確定診断・病期の決定は標本の病理学的検査により行われます。
良性・悪性の違い
腫瘍の良性・悪性の判別は経腟エコーで9割程度わかります。良性腫瘍の場合、腫瘍は平滑で可動性があり、腫瘍内部の壊死や出血があまり見られません。
一方悪性腫瘍の場合、腫瘍は不整で、周囲組織との癒着があり、腫瘍内部の壊死や出血が見られます。腹水や周囲のリンパ節の腫大も見られます。経腟エコーにMRIや腫瘍マーカーの所見を併用することで、良性・悪性の判定精度は上がります。
治療
卵巣腫瘍の手術は、良性・悪性により異なります。まず、術前診断で明らかに良性の場合、腫瘍の大きさにより術式を選択します。
腫瘍径が6~10cmかつ、単房性~二房性の場合は、腹腔鏡による手術を行います。開腹手術よりも侵襲が低く、術後の離床も早いです。また、腫瘍径が10cm以上または多房性の場合は、開腹手術になります。
次に悪性が否定できない場合は、開腹手術により患側付属機器切除と術中迅速診断を行います。この術中迅速診断で良性の場合はそのまま手術が終了になり、悪性の場合は卵巣癌根治術の治療に移行します。
最後に、悪性を強く疑われる腫瘍の場合は、妊娠の希望の有無により術式が変わります。妊娠の希望がある場合は、患側の卵巣と卵管のみを摘出し、反対側の卵巣と卵管は温存します。
悪性が強く疑われる場合は、周辺臓器へ浸潤している可能性もあるため、疾患や温存手術についてのリスクをよく理解した上で、治療を行っていくことが大切です。また、妊娠の希望がない場合は、子宮・卵巣の全摘術を行います。
最後に
卵巣腫瘍は症状が表れにくく、サイレント・キラーと呼ばれています。発見された時の腫瘍の進行度や、良性・悪性により治療は異なるので、信頼できる医師を見つけ、よく説明を受け、納得した上で治療を行っていくことが大切です。
まとめ
卵巣腫瘍の症状・検査・治療
卵巣腫瘍の分類
卵巣腫瘍の症状
卵巣腫瘍の検査
良性・悪性の違い
治療
最後に