卵巣は最も腫瘍が生じやすい場所と言われており、良性・悪性問わず自覚症状がほとんどないため、良性の卵巣腫瘍ではそのまま気付くことなく一生を終えることも多い病気でした。近年は、検診や妊娠時のエコーが普及したため、初期の段階で見つかる人も少なくありません。
今回は、そんな 卵巣腫瘍 の 症状 についてお話しします。
卵巣腫瘍の症状とは?
卵巣が「沈黙の臓器」と呼ばれる由縁
卵巣は腹腔という大きなスペースに存在する、2cm程度の小さな臓器です。そのため、多少腫れても腹腔のスペースには影響を与えません。
さらに、卵巣は骨盤との間と子宮との間の2つの靭帯で支えられているものの、ぶらぶらしたルーズな状態なので、少々腫れても近くの子宮や膀胱に影響を与えません。
これらの特徴から、卵巣は「沈黙の臓器」と呼ばれています。大きいものでは、1kg以上、20cm位の大きさになっても、気付かないケースもあります。
良性卵巣腫瘍の症状とは?
卵巣の良性腫瘍は、「卵巣のう腫」「卵巣充実性腫瘍」の大きく2種類に分けられます。
卵巣のう腫は、卵巣内に液体や脂肪たまる病気で、柔らかい腫瘍です。頻度は非常に高く、卵巣腫瘍の約8割を占めます。
内容物の種類によって「漿液性(しょうえきせい)のう腫」、「粘液性のう腫」、「皮様性(ひようせい)のう腫」、「チョコレートのう腫」の4種類がありますが、いずれも握りこぶし大以上の大きさになることも少なくありません。
7cm以上になると無症状であっても、卵巣の根元がねじれる「茎捻転」のおそれがあるため、手術の適応となります。
「茎捻転」とは、腫瘍が大きくなり重たくなると、卵巣を支える骨盤との間と子宮との間の2つの靭帯が伸びてブランコのような状態になり、ブランコの台がねじれるように全体がねじれてしまうことです。
ねじれが強くなると、ずっと血管が圧迫された状態になり、循環が滞って卵巣に血液が溜まります。この状態が長引くと、卵巣に炎症が生じて自覚症状としては「下腹部痛」、「発熱」、「吐き気・嘔吐」が起こります。
また、腫瘍が破裂することがあり、腫瘍の中の液体や脂肪がお腹の中にばらまかれて、「腹膜炎」を起こすことがあります。この場合、「激しい下腹部痛(破裂した側)」、「発熱」、「吐き気・嘔吐」があり、虫垂炎と似た症状を呈します。ここまで、進行すると緊急手術が必要となります。
充実性腫瘍は、「下腹部のしこり」として触知することがあります。
どちらのタイプの腫瘍でも、周りにある膀胱や腸を圧迫して「頻尿」、「便秘」になることがあります。
悪性卵巣腫瘍の症状とは?
悪性腫瘍は充実性腫瘍のみになります。充実性腫瘍がエコーで見つかった場合は、良性か悪性か血液検査、画像検査などで精査する必要がありますが、摘出して病理検査で決着をつけることもあります。
悪性腫瘍も良性と同様、初期には全く症状がないため、他の臓器に転移して末期癌になってから気付くことが多いのが特徴です。
この特性から、英語では「サイレントキラー」とも言われています。日本語では「沈黙の臓器(腫瘍)」とも訳されていますが、「忍び寄る殺し屋」という訳のほうが近いかもしれません。
近年、卵巣腫瘍は、妊娠を希望する女性が産婦人科を受診する際や、妊娠時のエコーでたまたま見つかるケースが多いのですが、卵巣癌は40歳後半から60歳によく見られるため、こういった検査を受ける機会がないことも発見の遅れにつながっています。
しかし、下記の症状が認められることもあります。
- 下腹部の膨満感(ぼうまんかん)や、太っていないのにお腹が張っている
- 下腹部や骨盤周囲に痛みがある(腰痛として感じることもあります)
- 食欲がなくなった、あるいは食事をしっかり食べているのに体重が減っている
- 便秘や頻尿がある
これらの症状がある人は「早期に」産婦人科を受診しましょう。通常、エコー検査は5分程度で終わり、膣からエコーの器具をいれますが、滑りやすい液体をつけるので痛みはほぼありません。
まとめ
卵巣腫瘍の症状とは?
卵巣が「沈黙の臓器」と呼ばれる由縁
良性卵巣腫瘍の症状とは?
悪性卵巣腫瘍の症状とは?