妊娠を望む方の場合、妊娠のしにくさの原因のひとつとして卵巣囊腫である場合がかなり多いのです。卵巣囊腫があるとなぜ妊娠しにくいのでしょうか。 卵巣囊腫 の種類と、 妊娠 のしにくさについて説明します。
卵巣囊腫と妊娠のしにくさの関連性
卵巣囊腫とは
卵粗嚢腫とは、卵巣が腫れて袋状になり、その中に液体や粘液などが溜まってしまった状態のことをいいます。一般に良性であることも多いのですが、中には卵巣の細胞自体が増殖してこぶのようになってしまう充実性卵巣腫瘍があります。この場合は悪性=がんであることも多く、注意が必要となります。
卵巣は卵管にぶら下がるかたちのため動きがよく多少はれているくらいですと自覚できるような症状はほとんどありません。自覚症状の少ない病気といえます。そのため、他の症状や妊娠、病気などで婦人科の診察を受けてたまたま発見されることがとても多い病気です。
しかし、腫れがひどくなり卵巣が相応の大きさになってくると卵巣自身の重みでねじれを生じてしまうてしまうことがあります。こうなると下腹部に激痛を生じ、悪心や嘔吐、ひどい場合にはショック状態になることもあります。このような場合は緊急手術を要します。
ねじれが生じなくとも、ある程度以上の大きさになると周辺臓器を圧迫するようになってきます。そのようなときには、頻尿や便秘、腰痛がでてくることがあります。
また腹部を自分で触ったときにその大きさを感じることが出来ることもあります。このような状態のときは卵巣囊腫を疑い、婦人科を受診をしたほうがよいでしょう。
卵巣囊腫の種類
卵巣囊腫には4つの種類があります。最も多いのは、漿液性嚢腫で卵巣囊腫全体の約半数を占めています。嚢腫の内容物が無色〜淡黄色の水溶性のもので、そのほとんどは良性であることが多いです。
粘液性嚢腫の内容物は淡黄色の粘稠性の高いもので約20%程度はこれにあたります。悪性化していることもあります。
チョコレート嚢腫は子宮内膜症性の卵巣囊腫で、内容物は変性した古い血液です。悪性ではないですが周囲と癒着して強い痛みをもたらすものです。
皮様嚢腫は受精卵の外胚葉に由来している嚢腫で、その内容物の中には脂肪の他に毛髪や骨などがみられます。悪性ではありません。
卵巣囊腫と妊娠率について
小さな卵巣囊腫が不妊の直接の原因となることはあまりありませんが、卵巣の腫れの程度がひどい場合や、嚢腫が卵管など他の臓器と癒着を起こしているような場合は不妊の原因となってることがあります。つまり、卵巣囊腫だから不妊であるとは一概にはいえません。
しかし、チョコレート嚢腫については不妊の原因となっていることが多いのです。子宮内膜組織が卵巣に張り付き、嚢腫となっているものですが、このチョコレート嚢腫の特徴として、強い癒着があります。強い癒着は妊娠のしにくさを引き起こします。
不妊治療目的での卵巣囊腫治療
卵巣囊腫が原因で妊娠しにくい状態になっていると医師が判断したときには不妊治療の一環として卵巣囊腫の治療をすることも多々あります。
卵巣囊腫は自覚症状もおきにくい病気のため、経過観察となることも多い病気です。自然に消失することも考えられますので、1~2ヶ月程度の経過観察の後嚢腫の切除手術をいうことも多いのです。
ただし、経過観察の診断が出来るのは嚢腫が良性である場合であって、悪性であると診断されれば早期に手術で切除または卵巣摘出ということもあり得ます。
卵巣囊腫の手術
卵巣囊腫で手術をする場合は、悪性であったり、茎捻転(卵巣のねじれ)を起こしていて緊急を要するときには開腹手術が適応です。しかし近年では、お腹を切らずに行う腹腔鏡手術が普及し、3日間程度の入院期間で卵巣囊腫の手術が可能になりました。
開腹するにしろ腹腔鏡にしろ、卵巣嚢腫を全摘する方法、嚢腫部分だけを切除する方法など、患者本人の希望を最大限考慮しながら術式を医師が判断します。なお、妊娠を望む患者の場合は癒着が少ないという利点を活かし、腹腔鏡手術で嚢腫のみ切除という術式が最も適しています。
実際に卵巣囊腫が原因の不妊の患者が手術後に妊娠・出産までに至るケースがとても多く、不妊治療目的での卵巣囊腫の手術はその意味では効果の高いものといえます。
まとめ
卵巣囊腫と妊娠のしにくさの関連性
卵巣囊腫とは
卵巣囊腫の種類
不妊治療目的での卵巣囊腫治療
卵巣囊腫と妊娠率について
卵巣囊腫の手術