卵巣は腫瘍ができやすい器官ですが、その9割は良性の卵巣嚢腫だと言われています。ですが、良性だからと言って安心はできません。 卵巣嚢腫 を放置して大きくなると、 茎捻転 という現象が起こり、ひどい場合には命に関わる事にもなりかねないのです。
突然の激しい腹痛は卵巣嚢腫の茎捻転の可能性も
卵巣嚢腫とは
卵巣嚢腫とは、卵巣にできた良性の腫瘍の総称です。卵巣の中に液体や組織細胞などの内容物が溜まり、卵巣が大きく腫れる病気です。左右の卵巣のうち片方に発症する事が多いですが、両側に同時に発症することもあります。
また、発症年齢は10代から70代までと幅広く、どの年代の女性にも発症する可能性があります。
卵巣腫瘍にはいくつかの種類がありますが、種類を問わずあまり自覚症状がない事が多いので、発見しずらい病気でもあります。
茎捻転とは
卵巣は正常な場合はクルミ大の大きさですが、腫瘍が大きくなり卵巣が握りこぶし大の大きさになると、卵巣を支えているじん帯が腫瘍の重みに引っ張られてねじれる事があります。これを茎捻転と言います。腫瘍が小さくても茎捻転を起こす事があります。
中でも皮様嚢腫という種類の卵巣嚢胞は表面がツルツルしていて周囲との癒着がないため、捻転を起こしやすい嚢胞とされており特に注意が必要です。
発症部位を見ると右側の茎捻転が多いというデータがありますが、これは左側にS字結腸がある関係で、左側の嚢腫はねじれにくいからと考えられています。そのため、盲腸炎と間違われる事もあります。
茎捻転は激しい運動をした時、体位を変えた時、また、出産時や出産後に起こりやすいと言われています。
茎捻転の症状
茎捻転の多くは下腹部の突発的な強い痛みから始まります。その痛みは出産を経験している女性でさえ耐え難い程だと言われます。さらに腰痛、悪心、嘔吐、発熱、不正出血といった症状を伴うこともあります。
茎捻転を長時間放置すると、ねじれた部分の血流が滞り卵巣が壊死する危険がある上に、嚢胞内でできた血栓が他の場所に飛び、二次的に血栓症を引き起こす事もあるので、茎捻転が疑われる時は一刻も早く医療機関を受診する必要があります。
茎捻転の治療
茎捻転の治療は手術が一般的ですが、手術にも様々な方法があります。以前はお腹を開いて腫れた卵巣(場合によっては卵管などの附属器官も)を取り除く手術が一般的でしたが、現在では状況に応じて腹腔鏡を使った手術も行われるようになりました。
また、切除範囲も患者の年齢や状況、その後の妊娠・出産の事を考慮し、可能であれば卵巣を丸ごと切除するのではなく、腫瘍部分のみ除去して卵巣は温存するケースも増えてきています。
ただし、これはねじれの程度や病状の進行具合などを見て、最終的に医師が判断する事なので、必ずしも希望通りの術式で手術が受けられるとは限りません。
ですので、卵巣を温存するためには症状が出たらできるだけ早く手術を受ける事が重要なのです。茎捻転の治療はある意味、時間との勝負と言えるかもしれません。
茎捻転の予防
茎捻転を予防するためには、まず卵巣嚢腫があることを自覚し、病状をモニターしていく事が大切です。卵巣嚢腫自体が小さければ、たいていの場合は経過観察となり手術は行われません。
ですが、握りこぶし大の大きさになれば茎捻転のリスクが高まるので、茎捻転を起こす前に治療を開始します。
通常の婦人科検診では子宮と乳房の検査のみである事が殆どで、卵巣の検査はスタンダードではありません。ですので、卵巣の検査を受けたことがない、という女性も多いのではないかと思いますが、卵巣の腫れはエコー検査で発見できるので、いつもの婦人科検診に卵巣のエコー検査もプラスしてみるといいかもしれません。
ただし、卵巣は生理周期に影響されやすいので、何もなくても腫れることがあります。その場合は期間を開けて再度検査し、異常が続くようならさらに詳しい検査をすると良いでしょう。
まとめ
突然の激しい腹痛は卵巣嚢腫の茎捻転の可能性も
茎捻転とは
茎捻転の症状
茎捻転の治療
茎捻転の予防