卵巣囊腫 の手術にはお腹を切って行う開腹手術と、お腹を切らずに行える腹腔鏡手術の大きく2つがあります。さらに、卵巣を摘出するのか温存するのかの違いもあります。
それらの術式には適応や 術後 の経過に違いがあり、患者の希望を最大限尊重しつつ医師が最終的に判断して決めます。
卵巣囊腫の術後の経過
手術した方が良い卵巣囊腫とは
卵巣囊腫は必ずしも手術しなくてはならない病気ではありません。良性のものであったり、痛みなどの自覚症状がない状態であったり、不妊の原因になっていなかったり、生活に支障のないものであれば経過観察や薬物療法を試みることも少なくない病気です。
ですが、手術によって積極的に治療した方がよい卵巣囊腫もあります。具体的には悪性(がん)である場合・卵巣囊腫が不妊の原因である場合・薬物療法では治療の効果が見込めない場合・卵巣囊腫が原因で激しい月経痛や腰痛等、日常生活に支障をきたしている場合などがあります。
また、茎捻転を起こした場合や嚢腫破裂の場合には緊急手術が必要となります。
開腹手術の適応
開腹手術はほぼすべての症状・状態に適応できる、安全性の高い術式です。しかし、手術によって癒着を起こすため将来の不妊の原因になりうること、術後の回復までに患者の負担が大きいことなどから近年は腹腔鏡手術の増加が目覚ましく、開腹手術での治療は最小限に抑えられつつあります。
しかしながら開腹手術でしか対応できない場合もあります。悪性の卵巣囊腫である場合・大きく成長した卵巣囊腫の場合・茎捻転や嚢腫破裂など緊急手術の場合です。
開腹手術後の経過
開腹手術は、大きく皮膚や腹膜を切開するため術後の痛みが強く、回復までに時間を要するために入院日数は10〜14日間程度かかります。術後すぐは強い痛み止めを投与しつつベッドの上で安静にします。術後3日目くらいからは自力で立ち上がったりゆっくりと歩行できるようになる人もいます。
傷口の経過が良好で特に問題がない場合は、手術後1週間前後には抜糸及び入浴(シャワー)の許可がでますが、この段階でも痛みを感じる人には鎮痛剤が処方されます。退院する頃には、傷口に引きつれ等の違和感はありますが、動けないほどの痛みはほとんど感じなくなるため、ゆっくりであれば日常生活での動作は一通り出来るようになります。
ただし、縫合した傷口はまだ不安定のため急激な動作や重いものを持つ、大声で笑うなどの激しい動きには注意が必要です。退院後はすぐに軽い家事程度であればできるようになり、肉体労働でなければ1ヶ月程度で仕事復帰も可能です。
腹腔鏡手術の適応
腹腔鏡手術には多くの利点があり、近年は手術症例が非常に増加している術式です。最大のメリットは患者の負担が軽くて済むことです。
また、手術の際に出血が少なく手術後の癒着がほとんど起きないことから不妊治療目的、あるいは将来妊娠の可能性のある患者への卵巣囊腫手術には非常に有効であるとして広く採用される術式となっています。
腹腔鏡手術の術後の経過
腹腔鏡手術は、お腹を小さく切開し、そこから処置をするための器具と腹腔鏡と呼ばれるお腹の中を観察するカメラを挿入して行う手術です。
開腹手術を違って切開部分が非常に小さくすむために術後の痛みが少なく、回復もとても早いのが利点です。手術のときこそ全身麻酔が使われますが、術後は痛み止めを使う必要のある患者がほとんどおらず、痛み止めを要する人はごくわずかです。それほどまでに痛みが少ないのです。
手術の翌日には自分の足で立って歩くことができるようになりますし、食事や入浴(シャワー)等の日常動作はこなせるようになります。しかも傷口の縫合もしていないので、抜糸の必要もありません。そのため、通常は3日ほどの入院日数で退院となります。
退院後の生活の注意点
退院後は日常生活に戻って構わないという医師がほとんどです。家事や、仕事への復帰も許可が出ます。しかし開腹手術の場合にはまだ傷口の癒合の程度が安定していないため、術後1ヶ月ほどは重いものを持ったり肉体労働は避けた方が無難です。
卵巣全摘術を受けた場合は、急激に女性ホルモンが欠乏することによって更年期障害に悩まされる場合がとても多いために、ホルモン療法(女性ホルモンを薬で投与し欠乏を補う)の指示がされる場合があります。
まとめ
卵巣囊腫の術後の経過
手術した方が良い卵巣囊腫とは
開腹手術の適応
開腹手術後の経過
腹腔鏡手術の適応
退院後の生活の注意点