卵巣癌は、別名「サイレントキラー」と言われるほど自覚症状がほとんどないため、全身に癌細胞が散らばっている進行癌の状態で見つかることが少なくありません。
今回は、そんな 卵巣癌 の 転移 について詳しくお話しします。
卵巣癌の転移とは
なぜ転移した状態で見つかることが多いの?
卵巣ガンの進行度分類は、Ⅰ~Ⅳ期に分かれており、転移がないものがⅠ期でそれ以降は転移部位によってⅡ~Ⅳ期に分かれます。癌が、お腹全体に広がっている状態(進行度分類Ⅲ期以上)で見つかるケースが最も多いとされています。
では、なぜ卵巣癌は転移した状態で見つかることが多いのでしょうか?
まず、卵巣は、2~3cmと非常に小さい臓器で、解剖学的に広い腹腔内の奥深くに存在します。そのため、腫瘍ができても気がつきにくいという特徴があります。しかも、漿液性腺ガンなど、腫瘍が小さくても転移するタイプもあり、画像検査をしても早期発見が難しいのです。
また、発症年齢も関係しています。卵巣癌は閉経後にも発症します。出産可能年齢での発症では、妊娠時のエコーで偶然見つかることもありますが、閉経後は婦人科検診を受ける人が少なくなるため、見つかった時にはすでに進行していることが多いのです。
転移のしかた
お腹の中に癌細胞が散らばる腹膜播種(ふくまくはしゅ)と、リンパ行性転移の主に2つがあります。
卵巣は腹腔内にあるため、卵巣の癌細胞がお腹の中に散らばり、腹腔内にある臓器(胃、小腸、大腸、子宮、膀胱、大網など)に転移します。これを、腹膜播種と呼び、卵巣癌では最も多い転移様式です。
リンパ行性に関しては、腹膜播種を起こしている時期はもちろんですが、腹膜播種を起こしていない、比較的早い時期にも見つかることがあります。リンパ流にのって腹腔から全身に癌細胞が散らばっていきます。
転移したときの症状
卵巣癌は近くの組織である、子宮・膀胱・腸といった臓器に加えて、遠隔転移(遠い組織への転移)では、肺・脳・骨・肝臓に転移しやすいとされています。
近くの臓器では、頻尿や頑固な便秘、腹部のしこりや腹水でお腹が膨らむといった症状があります。
肺では胸水がたまり呼吸困難となり、脳転移では頭痛・麻痺、骨では腰痛、肝臓転移では黄疸が出ることがあります。肝臓は最も症状が出にくく、腫瘍がかなり大きくなってから発見されることが多いのが特徴です。
転移した場合の治療は
卵巣癌は比較的抗ガン剤が効きやすいため、抗ガン剤が第一選択となります。また、進行癌であっても、抗ガン剤の効果を高めるために手術で腫瘍の量を減らしてから(腫瘍減量手術)、抗ガン剤を投与することがあります。
逆に、抗ガン剤で腫瘍の量を減らしてから手術を行うこともあり、進行癌では、ケースに応じて、腫瘍減量術と抗ガン剤による化学療法をうまく組み合わせて、ガン細胞を根絶することを目標にします。
抗ガン剤は、普通、静脈点滴注射で注入しますが、腹腔内に卵巣ガンが散らばっている場合は効きにくい(血管のないところに抗ガン剤は届かないため)ため、腹腔内に直接抗ガン剤を注入するIP療法(腹腔内化学療法)が行われることがあります。
再発転移とは?
卵巣癌は転移した状態で見つかるケースが多いため、一旦消失したように見えた卵巣癌が再び増殖(再発)することがあり、治療後も定期的な通院が必要です。
卵巣癌治療後5年目までは数ヶ月ごとのフォローアップ検診を行います。5年目以降になると再発リスクが下がるため、半年から1年ごとのフォローになります。血液検査での腫瘍マーカー(CA125)に加えて、CTやMRIを半年~1年に1回行います。
再発した場合、主な治療は抗ガン剤治療です。最初の治療が終了して半年以上経ってから再発した場合には、初回と同じ抗ガン剤が有効なことが多いのですが、半年未満の場合は初回の抗ガン剤の効果が低いと考えて別の抗ガン剤を選択します。
ケースに応じて手術が組み合わされることもあります。
まとめ
卵巣癌の転移とは
なぜ転移した状態で見つかることが多いの?
転移のしかた
転移したときの症状
転移した場合の治療は
再発転移とは?