卵巣は、生命の源となる卵子が作られる組織で、女性ならではの大切な臓器です。この大切な部分に発生する癌が、卵巣癌です。今回はこの 卵巣癌 について、 ステージ 分類別の治療法をご紹介します。
卵巣癌のステージと治療法
卵巣癌について
卵巣癌はその名の通り、卵巣の細胞から発生する癌です。しかし卵巣は他の臓器とは異なり「性腺」であるという特徴があります。
そのため卵巣には一般の臓器にも見られる上皮細胞に加え、新しい生命の源となる杯細胞や、ホルモンを分泌する細胞、そして卵巣を結合する間質細胞など、様々な細胞から構成されています。卵巣癌はこれらのすべての細胞から発生しうるため、かなり種類が多くなっています。
卵巣がんの進行ステージ
卵巣癌は、進行度に応じて4つのステージに分かれます。卵巣に発生した腫瘍は種類も多く、良性と悪性の区別がつきにくいため、良性の場合も悪性の場合も手術が行われます。そして術中診断にて、確定診断がつくことが多くなっています。
Ⅰ期
Ⅰ期は腫瘍が卵巣にのみとどまっている状態です。Ⅰ期は大きく3つの段階に分かれ、「Ⅰa期:片側の卵巣にのみとどまるもの」「Ⅰb期:両側の卵巣にとどまるもの」「Ⅰc期:腫瘍は片側または両側の卵巣にとどまるが、卵巣表面への浸潤や被膜の破綻が認められ、腹水または洗浄細胞診にて悪性細胞を認められるもの」とされています。
Ⅰ期の場合は、癌の部位によって片側あるいは両側の卵巣だけを切除する場合と、転移を見落とすことを防ぐために、両側の卵巣・卵管・子宮まで含めて切除する場合があります。また大網は一見して転移がない場合も切除され、顕微鏡的検査が行われます。
大網への転移がみられるとⅠ期ではなくⅢ期以上の診断になります。Ⅰ期の場合、多くは手術で根治でき、5年生存率は90%以上となっています。
Ⅱ期
Ⅱ期は腫瘍が卵巣の片側あるいは両側に存在し、さらに骨盤内への進展を認める状態です。Ⅱ期は大きく3つの段階に分かれ「Ⅱa期:進展が子宮や卵管におよぶもの」「Ⅱb期:進展がほかの骨盤内臓器におよぶもの」「Ⅱc期:腫瘍の発育がⅡaまたはⅡb期の段階で、卵巣表面への浸潤や被膜の破綻が認められ、腹水または洗浄細胞診にて悪性細胞を認められるもの」とされています。
Ⅱ期の場合は、両側卵巣・卵管・子宮の切除に加え、進展がみられる骨盤内臓器の一部や骨盤腹膜を含めて切除されます。またⅠ期と同様に大網は一見して転移がない場合も切除され、顕微鏡的検査が行われます。
さらに後腹膜リンパ節への転移が疑われる場合は迅速病理診断にて転移の有無を診断します。迅速診断にて転移がみられる場合は、傍大動脈リンパ節と骨盤リンパ節の郭清も併せて行われます。
このときに大網か後腹膜リンパ節への転移が認められるとⅡ期ではなくⅢ期以上の診断になります。Ⅱ期の場合も、多くは手術にて根治され、5年生存率は70%以上となっています。
Ⅲ期
Ⅲ期は腫瘍が卵巣の片側あるいは両側に存在し、さらに骨盤外の腹膜播種や鼠径リンパ節転移、小腸・大網への組織学的な転移、そして肝表面への転移を認める状態です。
Ⅲ期は大きく3つの段階に分かれ「Ⅲa期:リンパ節転移は陰性で、腹膜表面に顕微鏡的播種病巣が認められるもの」「Ⅲb期:リンパ節転移は陰性で、組織学的に2cm以下の播種病変が認められるもの」「Ⅲc期:直径2cmを超える播種病変が認められ、さらに後腹膜・鼠径リンパ節に転移が認められるもの」とされています。
Ⅲ期の場合は両側卵巣・卵管・子宮の切除に加え、転移のある臓器の一部を切除しますが、病変範囲が広く、全て取り除くことが困難な場合もあります。Ⅲ期以上の癌に対しては術後に化学療法も併用されますが、術前から癌が大きいことが分かっている場合は術前にも化学療法が施行され、できるだけ癌を小さくしてから手術を行います。
また手術による取り残しが少ないほど化学療法の効果も高いため、手術ではできるだけ多くの癌を切除します。Ⅲ期以上になると、5年生存率は30%程度になります。
Ⅳ期
Ⅳ期は腫瘍が卵巣の片側あるいは両側に存在し、更に遠隔転移を伴う状態です。肝実質への転移や胸水の洗浄細胞診が悪性の場合もⅣ期に該当します。
Ⅳ期の場合もⅢ期と同様の手術が行われますが、より広範囲になるため、全て取り除くことは困難です。しかしできる範囲の癌を取り除き、術後に化学療法を併用した治療法が行われます。Ⅳ期になると、5年生存率は10%程度になります。
おわりに
卵巣は癌が発症してもしばらく症状が出ず、わかりにくい臓器です。癌を予防するには卵巣癌に限らず、規則正しい生活習慣を心がけることが大切です。もともと生理不順がある、家系に女性疾患をもつ人がいる、など心当たりのある方は、定期的に癌検診を受けることをお勧めします。
まとめ
卵巣癌のステージと治療法
卵巣癌について
卵巣がんの進行ステージ
Ⅰ期
Ⅱ期
Ⅲ期
Ⅳ期
おわりに