卵巣がんの患者さんは現在増加傾向にあります。卵巣がんは死亡率が非常に高い悪性腫瘍の一つとなっていますが早期に発見できれば生存率は上がります。一言に卵巣がんといっても、細かく様々な種類に分類されています。
まずは 卵巣がん の概要について理解し、卵巣がんから離れた生活ができるよう心がけましょう。
卵巣がんについて知って、予防・早期発見につなげましょう(前編)
卵巣がんとは
卵巣とは女性にのみ存在する臓器であり、卵子を作ったり、女性ホルモンの分泌を行う場所です。この卵巣にできた悪性腫瘍を総称して卵巣がんと呼びます。
卵巣がんは、年間約9,000人程が罹患し、年間4,500人以上の患者さんが死亡しており、死亡率が非常に高い疾患です。これは、卵巣がんの初期症状が自覚しづらく、発見される頃には40~50%がⅢ期あるいはⅣ期にまで進行しているためです。
Ⅰ期は腫瘍が卵巣内に留まって発育している状態で、この時期に適切な治療を受ければ治り、5年生存率も90%です。Ⅱ期は腫瘍が卵巣のみならず骨盤内にまで広がっていっているものをいい、5年生存率は70%となります。
Ⅲ期になると腫瘍が腹膜やリンパ節にまで転移し、小腸や肝機能に影響がでることがあり、体調面でも変化が出てきます。5年生存率は40%となり、この時期に適切な治療を受けなければ生存が難しくなってきます。
Ⅳ期では卵巣から離れた肺や肝臓などの臓器に転移した状態です。5年生存率は20%程度と非常に厳しく、長くは生きられないことを示しています。
欧米と比べると卵巣がんの罹患率は低いですが、現在、日本においても増加傾向にあります。食の欧米化に伴う高脂肪食の摂取や、晩婚化による未産婦の増加や不妊、などのライフスタイルの変化などが関係していると考えられています。
また、子宮内膜症のうちチョコレート嚢胞は約0.7%で悪性化し、卵巣がんになることがあります。悪性化は年齢が高く、チョコレート嚢胞の直径が大きいほど増加する傾向にあります。
卵巣がんの分類
卵巣腫瘍は、腫瘍の発生部位によって分類されています。卵巣腫瘍のうち悪性のものを卵巣がんとよびます。
表層上皮性・間質性腫瘍
腫瘍が卵巣の表面を覆う上皮に発生するものをいいます。これは卵巣腫瘍の60~70%を占め最も発生頻度が高くなっており、40~60歳代の閉経前後の女性において好発します。卵巣がんのうち、この上皮性悪性腫瘍のことを医学においては「卵巣癌」とよんでいます。
胚細胞腫瘍
腫瘍が卵子に発生するもので、主に10~20歳代の若年女性に好発します。全卵巣がんのうち悪性胚細胞腫瘍は約3%を占めています。
性索間質性腫瘍
腫瘍が卵胞や黄体に発生したものをいい、卵巣腫瘍のうち15~20%を占め、比較的発生頻度は低い腫瘍となります。主に閉経期前後の45~55歳の女性において発生しますが、約5%は思春期前の女児に発生しています。
転移性卵巣腫瘍
これは他の臓器に発生した腫瘍が卵巣に転移することによって発生する腫瘍です。卵巣は他の臓器からの転移が多くみられ、卵巣の活動が活発で、血液やリンパ液の循環が活発な性成熟期の女性において好発します。
後編では、卵巣がんの症状や治療方法をご紹介します。
まとめ
卵巣がんについて知って、予防・早期発見につなげましょう(前編)
卵巣がんとは
卵巣がんの分類