卵巣嚢腫の90%は良性の腫瘍ですが、放っておかずに手術を必要とする場合があります。手術には腫瘍だけ切除する場合、そして腫瘍が発生している卵巣すべてを摘出する手術があります。
卵巣 を 摘出 しなければならない病状について、ここでご紹介いたします。
再発リスクがゼロになる卵巣嚢腫の卵巣摘出
卵巣嚢腫で卵巣を摘出するケース
卵巣嚢腫で卵巣を摘出しなければならないケースは、茎捻転が起こっている、腫瘍が5センチ以上と肥大化している、チョコレート嚢腫が進行悪化している、そして悪性腫瘍(卵巣がん)の場合です。
卵巣に腫瘍ができることで腫瘍が大きくなり重くなってゆくため、次第に骨盤のほうへ卵巣が下がってゆき、卵巣を支えている2本のじん帯も同時に引延ばされます。
じん帯は子宮と卵巣を結んでおり、卵巣を支えるほかにも、卵巣への血管や神経を送るための通り道の役割もしています。
そのじん帯が引延ばされると、卵巣がじん帯の付け根部分で茎を形成するかっこうとなり、茎を中心としてねじれを起こします。
こうなった状態が茎捻転です。卵巣嚢腫で腫瘍の大きさが5センチ以上になっていると、この茎捻転を起こすリスクが高まります。腫瘍が5センチ以下でも、お腹に力を入れた際あるいは体位を変えることがきっかけとなって、茎捻転を起こすこともあります。
ねじれの角度が180度以上になると、じん帯を通っている静脈が圧迫され、腫瘍がうっ血します。その状態を放っておくと、腫瘍が炎症を起こし、下腹部の激痛あるいは発熱といった症状が出ます。
さらに、この状態を放置し続けると、組織が壊死し、周囲の組織と癒着を起こし、腫瘍が破裂し、出血そして化膿が起こります。このようになった状態の茎捻転では、卵巣と卵管の摘出手術が必要になります。
チョコレート嚢腫は、子宮内膜の内膜組織が子宮外(卵巣)で増殖し剥離し、腫瘍(袋)の中に血液が溜まりタールのようなどろったした状態になっています。これが大きくなると腫瘍は卵巣髄質内にまで拡大し、卵巣の中すべてを占拠するほどの大きさになります。
卵巣の表面の内膜組織は周囲の組織と癒着するリスクが大変高く、子宮、卵管そして大腸と癒着することもあります。このような状態のチョコレート嚢腫では、癒着剥離をしなければならず、年齢と進行状態を考慮した上で、卵巣が摘出されます。
腫瘍が悪性(卵巣がん)の場合は、早期ステージ1でも卵巣と卵管を摘出します。ステージが進行し腫瘍が転移している場合は関係組織や臓器も摘出されます。
卵巣摘出術と付属器摘出術
卵巣摘出術では片側の卵巣を摘出しますが、一般的とされているのは付属器摘出術といい、卵巣と卵管を同時に摘出する方法で、卵巣嚢腫の基本的な手術療法といわれています。
付属器とは卵管のことです。卵巣と卵管をセットにして摘出しますが、摘出されず残された側の卵巣は機能していますので、妊娠を希望している方も術後の妊娠が可能で、また更年期のような症状もありません。
しかし、両側の卵巣、あるいは両側の卵巣と卵管を摘出した場合は、手術後は卵巣が機能しないため妊娠は不可能ですし、また更年期のような症状がでます。
再発
卵巣嚢腫の再発リスクは約10%です。再発というのは、同じ箇所に再び同じ腫瘍が発症する場合ですので、卵巣と卵管および周辺組織を摘出している方は再発のリスクはまったくありません。
部分切除(卵巣を残し、腫瘍だけ摘出)した方に再発リスクがあります。どちらにしろ、手術後は3ヶ月に一度あるいは半年に一度検査を受け、血液検査や超音波検査をメインとし、CTやMRI検査を受け、卵巣の状態を調べます。
まとめ
再発リスクがゼロになる卵巣嚢腫の卵巣摘出
卵巣嚢腫で卵巣を摘出するケース
卵巣摘出術と付属器摘出術
再発