2013年2月にピロリ菌に感染した胃炎の除菌治療が保険診療で受けられるようになってピロリ菌の除菌をする方が2~3倍になったと言います。 ピロリ菌 の 除菌後 には体はどのように変化するのでしょうか。
除菌後の注意点とあわせてご紹介いたします。
どんな病気の発症リスクが下がる、ピロリ菌の除菌後
ピロリ菌の除菌とは
ピロリ菌は正式名称をヘリコバクター・ピロリ菌という胃の中に生息する菌です。強力な酸性の胃酸の中には菌は存在しないと考えられていましたが、1983年にロビン・ウォレン、バリー・マーシャル両博士によって培養されて存在が確認されました。
当初は胃炎や胃潰瘍の発症とピロリ菌には関係がないと考えられていましたが、バリー・マーシャル博士は自らピロリ菌を飲んで胃炎が発症することを証明しました。
2005年には両博士の「ヘリコバクター・ピロリ菌の発見と胃・十二指腸潰瘍における役割の解明」に対してノーベル医学生理学賞が授与されました。
研究が進んだ現在では慢性胃炎、胃・十二指腸潰瘍の原因のひとつとなることや胃がんの発症にも関連があることなどがわかってきました。
感染経路は完全には解明されていませんが、衛生状態の悪い発展途上国などでは飲み水による感染が報告されています。日本では衛生状態も悪く、井戸水を飲用することの多かった50歳代以上の世代のおおよそ70パーセントがピロリ菌に感染していると言われています。
検査の結果、ピロリ菌に感染していることが判明した場合は除菌治療を受けることになります。除菌治療は内服薬を服用するのが一般的です。プロトンポンプ阻害薬で胃酸の分泌を抑えながら2種類の抗生物質を朝夕7日間服用することが多いようです。
この治療によって7~8割の方は除菌に成功します。昨今では胃酸の分泌を抑えるためにボノプラザンを用いることで除菌の成功率が9割近くまで上がってきているという報告もあります。
ピロリ菌を除菌するとどうなるのか
ストレスやタバコが原因で発症するとされていた胃・十二指腸潰瘍などは、たとえストレスがあったとしてもピロリ菌の除菌後は発症の確率が低くなることがわかっています。
例えば、1995年の阪神大地震の際に震災のストレスで潰瘍を発症した方はしなかった方に比べてピロリ菌感染率が高かったという研究結果からも、潰瘍の発症にピロリ菌感染の有無が大きく関与していることを示しています。
さらに、胃がんの99パーセントはピロリ菌感染がベースにあると言われています。遺伝的な体質や塩分の過剰な摂取といった食生活が原因でピロリ菌には感染していないものの胃がんを発症したというケースは1パーセント未満です。
ピロリ菌の除菌が100パーセントの確率で胃がんを防ぐわけではありませんが、かなりの確率で予防できるのは確かです。また、胃マルトリンパ腫という悪性リンパ腫の発症を抑制することも知られています。
アスピリンやワルファリンなどの抗血栓薬を服用するような場合、ピロリ菌を除菌することで出血性潰瘍を引き起こすリスクが低下します。
ピロリ菌除菌後の注意点
ピロリ菌の除菌治療を終えて4週間以上経過後、除菌できたかどうかの確認の検査を受ける必要があります。一次除菌で除菌できなくても薬を変えて再び7日間服用する二次除菌を行うことでほとんどの場合に除菌が成功すると言われています。
除菌後2~3日間、除菌に用いた薬の影響で頭痛や下痢に悩まされる方があるようです。長く続くようであれば、処方した医療機関に相談するといいでしょう。
除菌に伴い使用する胃酸の分泌を抑える薬の影響で逆流性食道炎を発症する方があるようです。胸やけや胃痛などの症状が強かったり、長引く場合も処方した医療機関に相談する方がいいでしょう。
ピロリ菌の除菌に成功すると発症にピロリ菌が関与しているさまざまな病気の発症リスクは非常に低くはなりますが、完全にゼロになるわけではありません。かかりつけ医と相談の上、定期健診を怠らないことは必要です。
まとめ
どんな病気の発症リスクが下がる、ピロリ菌の除菌後
ピロリ菌の除菌とは
ピロリ菌を除菌するとどうなるのか
ピロリ菌除菌後の注意点