乳腺症の病名は有名ですが、どのような病気かはあまり知られていません。病名の意味があいまいであることも理由のひとつと考えられます。乳腺の組織に正常とは異なる変化が見られる状態が乳腺症ですが、 乳腺症とは 乳がんとは異なり良性です。
乳腺が生理周期や妊娠、授乳により変化し続けている組織であることが乳腺症の原因であると考えられています。乳房のしこりや痛み、乳頭からの分泌物の出現が主な症状です。
乳腺症とはけっきょくどんな病気なの?
乳腺症がどんな病気か説明できますか?
乳腺症(にゅうせんしょう)は30~45歳の閉経前女性に多い病気です。乳腺症という病名を知っている、あるいは聞いたことがある人はたくさんいると思います。でも乳腺症がどんな病気か説明できる方は少ないのではないでしょうか?
有名なのに乳腺症がわかりにくい、あるいはイメージしにくい理由のひとつに“乳腺症”という病名があると思います。
悪性腫瘍である乳がん、乳腺に炎症を生じる乳腺炎はなんとなく理解しやすいでしょう。でも乳腺症・・・?。乳腺の異常であることはわかるとしても、“症”がわかりにくい。じつは“症”は病気・疾病(しっぺい)という意味です。
ということは乳腺症=乳腺の病気ということになります。なんともあいまいな病名ですが、乳腺症を表す英語のmastopathyという用語も、mastoが乳腺、pathyは病気という意味ですから、英語でも“乳腺の病気”と言っているわけです。
余談ですが、肺がんや肺炎という病気は存在しても、肺症はありません。同じく胃がんや胃炎、胃潰瘍は存在しますが、胃症という病気はありません。
ただし脳症という病気は脳炎や脳腫瘍とは独立して存在します。脳症は何らかの原因で脳にダメージを生じている病気の総称で、肝性脳症や低酸素脳症、低血糖脳症などが代表的です。
乳腺症とは
それでは乳腺症は結局どのような病気なのでしょうか?一言で表現すると乳腺の組織に正常とは異なる変化が見られる状態を乳腺症と言います。ただし上述の乳がんや乳腺炎など他の病気に分類される変化は含みません。
悪性の変化がある場合には全て乳がんと診断されますから、乳腺症はがんとは異なる良性の病気です。
ただし“正常とは異なる変化”というざっくりとしたくくりですから、同じ乳腺症の病名であっても、実際に認めている変化の形態や範囲、程度は個人個人でさまざまです。そういった意味では上述の脳症の例に近いかもしれません。
実際、乳腺症を起こっている変化ごとに細かく分類すると10以上の病名がつくとされています。さらに、あくまでも乳腺組織に変化を生じているだけですから、必ずしも病気ではない場合もあります(乳腺“症”なのに病気でないというのも変な話ですが)。
どうして乳腺症が起こるの?
それではどうして乳腺に正常組織とは違った変化が起こるのでしょうか?その理由は乳腺が子宮と同じように生理周期とともに変化しているからです。
生理周期の中で卵巣ホルモンは子宮内膜を増殖させますが、乳腺にも作用し、月経直前には乳房のボリュームは通常よりも30%程度増加します(もちろん個人差があります)。そのため乳房に痛みやはりを感じる人も少なくありません。
そして月経後にもとのボリュームにもどります。さらには妊娠、授乳によっても乳腺組織は大きな影響を受けます。こういったことが長い間積み重なると、乳腺組織の一部には他の部位と違った変化や反応を生じてくる部分が出現することがあります。これが乳腺症です。
乳腺症の症状
乳房にしこりができる(片側・両側いずれもあります。また1個だけのことも複数ができることもあります)、乳房に痛みがある(生理前に強くなり、生理が始まると軽くなることがよくあります)、乳頭から分泌物が出る(透明なこともミルクのような場合もあります)などが主な症状です。
上述のように乳腺症は良性であり、基本的に治療を必要としません。しかし乳がんと区別することはとても大切です。
レントゲンやエコー、必要であれば生検(せいけん。バイオプシーとも言います。)でチェックしますが、実際には乳がんをチェックするためにこれらの検査を行い、その結果乳がんではなく乳腺症と診断されるケースがほとんどです。
まとめ
乳腺症とはけっきょくどんな病気なの?
乳腺症がどんな病気か説明できますか?
乳腺症とは
どうして乳腺症が起こるの?
乳腺症の症状