乳房にしこりを感じて、受診したら乳腺線維腺腫と言われた方もおられるのではないでしょうか。 乳腺線維腺腫 は良性の腫瘍です。しかし、急に大きくなる場合は他の病気の可能性もあるので、大きさや大きさの変化が大切です。摘出しない場合でも経過観察が必要になります。
乳腺線維腺腫はどんな病気?
乳房のしくみ
まず乳房のしくみについて知りましょう。乳房には、乳腺と脂肪があります。乳腺は思春期に発達して大きくなり、ホルモンの影響を受けます。閉経すると退縮して大きさが変化します。
乳腺には小葉と乳管があります。授乳期には小葉で母乳がつくられ、乳管を通って母乳が集まり、乳頭から分泌されます。
乳腺線維腺腫とは
乳腺線維腺腫は、乳腺にできる良性の腫瘍です。乳腺線維腺腫が、がんになることは非常にまれです。若い女性に多く見られ、多くは3センチ程度になると、大きくなるのが止まります。その後自然に小さくなることが多いのですが、自然退縮しないものもあります。
ホルモンや避妊薬、妊娠などの影響で大きくなることがあります。しこりは、がんや葉状腫瘍など別の病気の可能性があるので、鑑別診断と経過観察が重要です。10センチ以上になるものは巨大線維腺腫と言われます。
診断と治療
乳腺線維腺腫の検査では、触診や、乳房をはさんでレントゲン撮影を行うマンモグラフィがあります。乳房をはさむ時に少し痛みを伴います。超音波検査ではゼリーを乳房につけて、画像を得ます。超音波検査は痛みがありません。
画像検査で乳腺線維腺腫の可能性が高い場合は、細い針をしこりの部分に刺して細胞を吸引し、顕微鏡で細胞の状態を診断する検査を行います。
クラスⅠからクラスⅤまでの結果があり、クラスⅤの場合は悪性です。この細胞診で乳腺線維腺腫と診断され、40歳未満の場合は、基本的に経過観察となります。細胞診ではっきりしない場合は、もう少し太い針で組織と取り出す針生検や、切除生検に進みます。
また3センチを超えている場合や急に増大してきた場合は、基本的には摘出生検が勧められます。摘出した組織が、乳がんや葉状腫瘍といった他の病気の組織型でないか、乳腺線維腺腫であるか、病理専門医が調べます。
乳腺線維腺腫は、組織学的には上皮性成分と間質結合繊維成分が増殖したものになります。
乳腺線維腺腫と鑑別が必要な葉状腫瘍とは?
葉状腫瘍とは耳慣れない言葉ですね。組織分類上、乳腺線維腺腫と葉状腫瘍は同じ分類になります。そのため、乳腺線維腺腫との鑑別が難しくなり、鑑別が重要なポイントとなります。
葉状腫瘍の場合、良性と境界型、悪性があります。葉状腫瘍の頻度は、乳房にできる腫瘍のうち1%未満と少ないものではありますが、悪性の場合は再発率が高くなります。再発するたびに、再発までの期間が短くなることがあります。
また肺などに遠隔転移をおこしてきます。基本的な治療法は手術になります。放射線治療や化学療法は現在のところ、まだ少ない症例での結果しかわかっていません。5年生存率は6割から8割程度という報告があります。
乳腺線維腺腫が3センチ以上の場合、この葉状腫瘍の可能性も否定できないので、摘出手術がすすめられるのです。また急に大きくなってきた場合も葉状腫瘍の可能性があります。
自己触診が大切
乳腺線維腺腫は、自分でしこりを見つけて受診される方が多いです。普段から自己触診して自分の乳房をよく知っていることが、異常に気付くために重要です。
自己触診を行う時期は生理の後に行うと、乳腺の張りが軽減しているので、しこりがわかりやすいでしょう。また鏡で見て、乳房にひきつれや、くぼみがないかもチェックします。異常に気付くことで、たとえ悪性の葉状腫瘍や乳がんの場合であっても早期に治療することが可能となります。
異常を感じた場合は、まず乳腺外科と標榜している医療機関を受診してください。乳腺の診断は、同じ外科でも専門性が高く、専門外の医師では診断が難しいことが多いです。
日本乳癌学会が認定している乳腺専門医の場合は更に安心です。乳腺専門医のリストは日本乳癌学会のホームページで参照することができます。
また自覚症状がない場合でも、定期的な乳がん検診を受けることで、早期発見が可能になります。そして、乳腺線維腺腫と診断された場合でも、切除手術を受けない場合は経過観察と定期的な受診を必ず行いましょう。大切なあなたの身体は、あなた自身で守っていきましょう。
まとめ
乳腺線維腺腫はどんな病気?
乳房のしくみ
乳腺線維腺腫とは
診断と治療
乳腺線維腺腫と鑑別が必要な葉状腫瘍とは?
自己触診が大切