「乳がん発症の原因にはならない乳腺嚢胞(前編)」では、乳腺の役割についてまたしこりの正体についてご説明いたしました。後編では乳腺嚢胞についてご説明いたします。
乳腺嚢胞 は、乳がんを発症する 原因 とはなりません。
乳がん発症の原因にはならない乳腺嚢胞(後編)
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嚢胞と乳がんの関係
乳腺嚢胞が発見されても、その後は経過観察のみの場合がほとんどであり特に治療の必要はありません。嚢胞が大きい場合は、直接針を刺して分泌物を吸引してしまえば嚢胞は消失します。
乳腺嚢胞がいずれ乳がんになってしまうことを心配する方も多いのですが、乳腺嚢胞というのは分泌物が溜まってできたものであり、がん細胞が増殖してできる腫瘍ではないため、良性の嚢胞ががん化して悪性になることはありません。
乳がんは、主に乳管内に発生し、増殖を繰り返しながら大きくなるがん細胞の塊です。そのため、エコーやマンモグラフィーでは嚢胞のように分泌物を溜める袋状ではなく、塊として写ります。そして、触ると石のような硬さがあるのが特徴です。
ところが、全ての乳がんの1~2%に嚢胞内に発生する嚢胞内乳がんというものがあります。乳腺嚢胞の場合は、嚢胞内に分泌物のみがみられるのですが、稀に分泌物以外の物がみられることがあります。その場合は、分泌物を採取して細胞検査をおこなう必要があります。
しかし、この嚢胞内乳がんは乳腺嚢胞ががん化したのではなく、がん細胞からの分泌物によって嚢胞が形成される稀なケースです。
そのため、乳腺嚢胞とは関係なく、乳がんが発生する可能性は誰にでもあるため、定期的ながん検診の必要はありますが、乳腺嚢胞があるからといって、それが原因で乳がんになるという心配はありません。
また、乳腺嚢法が1つしかできない方もいれば、複数できてしまう方もいますが、個数が多いからといってがん化することもありません。
良性腫瘍と悪性腫瘍の見極め
嚢胞内乳がんと同じように、乳腺嚢胞のような嚢胞を形成する乳管内乳頭腫という良性の腫瘍があります。乳管内乳頭腫は、乳頭からの分泌物が最も多い自覚症状としてあらわれます。
腫瘍の特徴としては、正常の細胞よりもがん細胞に違い異形の細胞が増殖することにより発生するため、細胞検査以外の方法では良性か悪性かの判断が難しいのです。乳管内乳頭腫であることを診断するためには、嚢胞内の分泌物を採取して細胞を検査する必要があります。
また、分泌物内にがん細胞が認められない場合でも、分泌物に血液が混じっていたり、吸引しても嚢胞が残っていたり、一度消失したあと数週間で再発するような場合は、嚢胞内にがん細胞が潜んでいる可能性が考えられます。
このように、同じような病変があらわれる乳腺嚢胞、嚢胞内乳がん、乳管内乳頭腫の3つは、判別が簡単な場合もあれば、判別が非常に難しい場合もあるのです。
乳腺嚢胞は多くの女性にできる嚢胞ではありますが、嚢胞が大きいものや他の症状を伴う場合は、細胞検査などにより適切な診断をしてもらい、その後の変化がないかを注意して観察していく必要があります。
まとめ
乳がん発症の原因にはならない乳腺嚢胞(後編)
嚢胞と乳がんの関係
良性腫瘍と悪性腫瘍の見極め