乳管内乳頭腫とはどんな病気でしょうか?普段はあまり耳にすることがない病名です。乳頭から赤い分泌液が出てあわてて受診し、初めて知ったという方が多いのではないでしょうか。この疾患は良性疾患ですが、癌との鑑別が重要になります。
乳管内乳頭腫 について詳しく知りましょう。
乳管内乳頭腫とは
乳管内乳頭腫とは
乳房の中の乳腺は、乳管と小葉という部分からできています。乳管は乳汁が通る部分です。乳管内乳頭腫とは、乳管内にできた、乳頭状や樹枝状の腫瘍で良性病変です。英語ではintraductal papillomaと言います。多い年齢層は30代後半から50代の女性です。
主な症状は、乳頭から血性もしくは漿液性の分泌液が見られます。赤い分泌物は乳癌でも見られるので、驚かれる方が多いですが、血性乳頭分泌をきたす疾患の中では乳管内乳頭腫が最も高頻度です。
また乳管内乳頭腫では腫瘤がある方がいます。無症状ですが、検査で見つかる方もおられます。乳管内乳頭腫は、2~3ミリから2~3センチまで様々な大きさのものがあります。
乳頭に近い太い乳管に単発的にできる中枢型乳管内乳頭腫と、乳腺の末梢に多発してできる末梢型乳管内乳頭腫があります。乳頭腫が嚢胞のように拡張した乳管内にできた場合は、嚢胞内乳頭腫と呼ぶことがあります。
検査と診断
乳管内乳頭腫は良性疾患ですが、悪性疾患との鑑別が重要となります。マンモグラフィは乳房をはさみレントゲン撮影する検査です。乳管内乳頭腫の腫瘤が大きい場合はマンモグラフィで描出される場合があります。
ゼリーを塗布し超音波で画像を得る、エコー検査では、ある程度小さな病変でも描出されます。超音波の所見では、拡張した乳管内に隆起性病変は見えるものや、腫瘤内部が病変で埋め尽くされているもの、乳管が嚢胞上に拡張して内部に病変が見えるものなど、様々なパターンがあります。
乳頭腫の場合は腫瘤の立ち上がりが急で、悪性の場合は立ち上がりが、なだらかなことが多いです。造影剤を注射し撮影するMRIでは、病変の広がり具合に役立つ場合がありますが、乳頭腫でも造影剤で染まることがあるので、良性か悪性かの確定診断は困難です。
乳管造影は乳頭から細いチューブを入れて、造影剤を注入します。チューブを入れるときに痛みが伴います。症状が血性分泌物だけの場合、病変部位を探すのに役立ちます。乳頭腫の場合は限局しているため、末梢乳管内は乳管造影で異常が見られません。
しかし悪性の場合は病変が末梢側に続くため、造影剤が入らず、末梢乳管が映らないことが多いです。乳管内視鏡は、乳管内に内視鏡を挿入します。病変を直接見ることができます。また乳管内視鏡は、病変の組織の一部を採取することで、確定診断につながります。
画像で捉えられる場合は、組織診断の適応になります。組織診断は、針で組織を採取する針生検があります。局所麻酔薬を使用しますが、やはり痛みを伴います。針生検が難しい場合、乳管腺葉区域切除をすることがあります。
採取した組織で病理検査を行い、確定診断を行います。病理検査では、専門の病理医が診断を行います。乳頭腫では乳管上皮細胞と筋上皮細胞の2相性が保たれています。
乳管上皮細胞はアポクリン化生がみられることもあります。筋上皮細胞は大型の核と豊かな細胞質を持つものや、小型の核と細胞質が乏しいものなど様々です。
筋上皮細胞がまばらにしか見えない場合は免疫組織学的にその存在を確認することもあります。乳頭がんでは、上皮細胞の2相性が失われます。
治療
乳管腺葉区域切除などで、摘出した組織が乳管内乳頭腫と診断され、病巣がすべて切除されると、乳頭からの血性の分泌はなくなり、治癒となります。針生検で確定診断を行った場合や病巣が残っている場合は、その後も定期的な経過観察を行う必要があります。
乳管内乳頭腫は良性の経過を示し、悪性化することは極めて稀です。しかし、乳管内乳頭腫の近くにがん組織が存在し、がん細胞が乳管に沿って乳頭腫の中に伸び、同じ乳管内に乳頭腫と、がんの成分が併存することもあるので、注意が必要です。
過度な切除や、過度な心配は必要ありませんが、治療や検査については主治医とよく相談し、疑問点があれば確認していきましょう。
まとめ
乳管内乳頭腫とは
乳管内乳頭腫とは
検査と診断
治療