乳癌 は急増しています。現在、日本では年間約5万人に乳癌が発見され、約1万人が命を落としています。40歳以上の女性、そして閉経後の女性に多く発生していますが、これは日本だけではなく世界的に同じ傾向にあります。乳癌の治療の基本は 手術 です。
癌はもはや不治の病ではなく、早期発見・早期治療によって、十分に治療効果を発揮します。ここでは、乳癌について正しく理解し、乳癌治療の6割を占める乳房温存手術について徹底的に勉強し、不安な気持ちを取り除きます。
乳癌治療の6割を占める、乳房温存手術(部分切除術)とは
乳癌の基礎知識
乳房は脂肪と乳腺組織で構成されていますが、乳癌は乳腺のみに発生する悪性腫瘍です。乳腺の上皮細胞の遺伝子に、何らかの原因で障害がおき、それらが積み重なると細胞が癌化します。この細胞の増殖や発育を促進しているのが女性ホルモン(エストロゲン)といわれています。
乳癌の原因
乳癌の発症原因は、高い確率で遺伝子の変異を受け継いでしまうことです。遺伝性乳癌、家族性乳癌といわれています。乳癌の家族歴をもつ女性は、乳癌の発症リスクが一般より25倍も高くなっています。
また米国の統計では、乳癌患者の5-10%は遺伝子性という結果がでています。しかしながら日本では、まだ遺伝性乳癌、家族性乳癌についてあまり知られていません。
乳癌治療の基本は手術
乳癌では、根本となる癌を摘出することが第一ですので、必ず手術が必要となります。手術では、乳房にできた癌、癌組織を含む周辺の正常組織、そして腋の下のリンパ節が取り除かれます。手術方法は2つ(温存手術と全摘術)です。
以前は、乳房を大きく切除すれば再発を防ぎ、生存率が上がるといわれてたのですが、大きく切除してもしなくても生存率には影響がないこと、そして近年では手術以外の放射線治療・抗がん剤治療・抗ホルモン剤治療などが発達していることから、摘出する範囲がずいぶん狭くなってきています。現在日本では乳房温存手術が最も多い治療方法(乳癌治療の約6割)です。
乳房温存手術
しこりを含む乳腺の一部が切除されます。基本的に、乳頭と乳輪は残します。しこりを切除した後、残った乳房に放射線をかけ、残っている微小癌、眼に見えない癌細胞を破壊します。このように、温存手術では、乳房の部分切除そして残された乳房の放射線治療があわせて行われます。放射線療法には術後から約5-6週間程度かかります。施術方法は以下3つです。
乳房扇状部分切除術
乳頭方向にむかって、乳管内から入って癌が進展することが多いため、しこりとその周辺の正常乳腺組織を乳頭を中心にして扇型に切除し、センチネルリンパ節(リンパ管に入った癌細胞が最初にたどりつく腋窩(えきか)リンパ節のことです)生検(癌が転移してないか検査します)を行い、その後、放射線治療へと続きます。
切除する部分が広いため癌の取り残しが少ない方法です。また、乳房と腋の下が乳房切除部分より小さいため、肩の運動障害が軽度で済み、術後のリハビリで回復がさらに早まります。しかし、乳房が小さい場合は、残された乳房に変形がみられるため形を整える必要があります。また残った乳房に癌細胞が多く残っている場合は、再切除あるいは全摘術が必要になります。
乳房円状部分切除術
しこりと周辺の正常乳腺を、癌の広がりに応じて部分的に切除し、センチネルリンパ節生検(前述)を行い、その後、放射線治療へと続きます。切除部分が極めて少なく、乳房が小さい方でも変形があまりありません。また腕や肩の運動障害も軽度で、リハビリによりさらに回復が早まります。(しこりが大きい場合は変形があります)。
腫瘍摘出術
正常の乳腺をほとんど切除せず、しこりだけ取り除き、センチネルリンパ節生検(前述)が行われますが、癌を取り残す可能性が大きいことを覚悟しなければなりません。
術後10年は安全のために医師の指示に従って定期健診を受けてください。通常の癌は5年経過で再発のリスクがなくなるといわれていますが、乳癌はゆっくり増殖するという特徴があり、術後10年間は注意が必要なためです。
まとめ
乳癌治療の6割を占める、乳房温存手術(部分切除術)とは
乳癌の基礎知識
乳癌の原因
乳癌治療の基本は手術
乳房温存手術