乳癌は、女性に診断される癌の部位のトップに位置しています。現在日本人女性の16人に1人がかかっており、毎年約5万人が新たに診断されています。乳癌治療の基本は手術です。手術の種類は2つ、全摘術と乳房温存手術です。
全摘術では乳房を全て切除しますが、近年、乳房の再建術が進歩しているため、この全摘術を選択する女性が増えています。ここでは、選択肢の一つとなる全摘術について正しい知識を得て、どちらの手術が適しているのか、じっくり考えてみます。
乳癌治療で最近若い女性に選択されている、全摘術(乳房切除術)とは
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全摘術
腫瘍が大きい、広範囲に広がっている、乳房内で多発している、温存術ができても放射線治療ができない、そして本人が希望している場合、温存ではなく全摘術が行われます。乳房の全てを切除しますが、大胸筋・小胸筋は残しますので、腋の下がへこむことがなく、肋骨が浮き出ることもなく、腕や肩の筋力低下・運動障害も軽度ですみます。
温存手術同様、センチネルリンパ節(リンパ管に入った癌細胞が最初にたどりつく腋窩(えきか)リンパ節のことです)生検(癌が転移してないか検査します)が行われますが、基本的に放射線治療はなく、術後のリハビリが重要になります。
進化する乳房再建術
近年、若い女性の間では、全摘術による乳房切除への抵抗感がなくなってきています。これには乳房再建術の高い技術進歩が背景にあります。最近の乳房再建術では、乳房摘出と同時に皮膚を伸ばすエキスパンダーを入れる方法(一次再建)がとられています。
これは従来の摘出後あらためて手術をするという二次再建よりも手術回数が減り、そして手術後目覚めたときにすでに胸にふくらみがあることから精神的なダメージがありません。手術後半年間かけて、エキスパンダーに生理食塩水を足してゆき、皮膚を伸ばし、乳房のふくらみ部分まで伸びたところで、シリコーンの人口乳房と入れ替えます。
保険適用外ですので費用は約100万円と高額です。しかし、身体負担がないこと、また腹部や背中に大きな傷が残ることを避けたいという女性から積極的に選択されています。乳房温存手術では残った乳房に微小癌が残る可能性がありますが、全摘術の場合は微小癌を残すリスクが完全に排除されますので再発リスクの軽減という安心感があります。
しかしながら、術後10年は安全のために医師の指示に従って定期健診を受けます。乳癌はゆっくり増殖するという特徴があり、通常の癌は5年経過で再発のリスクがなくなるといわれていますが、乳癌の場合は10年間は注意が必要です。
乳癌を発見するために
遺伝子検査を受ける: 乳癌の家族歴があり不安を抱えている女性は、保険適用外(費用は約20-30万円)ですが、積極的に遺伝子検査を受けることが薦められています。まず、病院の乳腺外科の担当医による問診を受け、該当する項目があった場合は遺伝カウンセラーによるカウンセリングが実施され、最終的に遺伝子検査が実施されます。
自分で見つける: しこり、乳頭からの分泌物、腋の下の腫れが特長です。しこりには痛みがない場合がほとんどですが、乳頭から血液が混じった茶褐色あるいは透き通った分泌物が見られたら、危険サインと思ってください。また、鏡の前で、左右の乳首の高さや乳房の形に差がないか、4本の指で両方の乳房を触り、腋の下にもしこりがないかチェックしてください。しこり、分泌物などの異常があれば、すぐに外科(婦人科ではありません)を受診してください。
医師による検診: 問診のほかに、視診、触診、マンモグラフィ、超音波(エコー)によって、手で触ることのできない小さなしこり、あるいは石灰化(マンモグラフィ画像に映る白い点で、癌細胞が死んでカルシウムになり沈着したもの)を見つけます。しこりがあっても癌でない可能性もありますので、しっかり診察してもらいましょう。
医療機関による乳癌検診ですが、40歳以上の主婦であれば、自治体(市町村)の検診を2年に一度受診できます。(実施しない自治体もあるので問い合わせてください。実施している自治体であれば、乳癌検診の告知が通知されるはずです。)費用負担は市町村により異なりますが、約3000円程度の自己負担です。
追加として、マンモグラフィ検診約5000円、超音波3500円が受けられます。40歳以上の会社員の女性であれば、自治体もしくは企業による職場検診のどちらかを選択できます(自治体、企業によっては実施しない場合もありますので問い合わせてください)。
まとめ
乳癌治療で最近若い女性に選択されている、全摘術(乳房切除術)とは
全摘術
進化する乳房再建術
乳癌を発見するために