癌は日本人の死因第1位であり、乳癌は女性の死因の第4位となっています。また、女性が発症する癌の中で最も多いのも乳癌なのです。
比較的進行が緩やかだとされる 乳癌 ですが、発見されたときの進行度によって生存率は大きく異なります。特に腋窩リンパ節だけでなく他の リンパ節 への 転移 がみられた場合は、全身へ転移する可能性が高まり、 生存率 も急激に低下してしまいます。
リンパ節への転移が乳癌の生存率を低下させる(前編)
異常な細胞は場所を変えて増え続ける
転移という言葉をよく耳にすると思いますが、この転移というのは、最初に癌が発生した原発巣とは違う部位に原発巣と同一の癌が増殖し発生することをいいます。
たとえば、乳房で発生した乳癌細胞と同一の乳癌細胞が肺で増殖した場合が転移です。原発巣と違う癌細胞であれば、それは転移ではなく同時に別の癌が発生したことになります。
また、転移した部位によって、原発巣の付近に転移する局所転移、原発巣から近い局所のリンパ節に転移する領域転移、原発巣から離れた部位に転移する遠隔転移の3種類にわけられます。
さらに、癌細胞が移動して転移する部位に到達するための手段としてリンパ液、血液、腹膜や胸膜の3つの経路を使用します。
これらの経路は、リンパ行性転移、血行性転移、播種といわれ、原発巣の種類や発生した部位によって、どの経路で転移する可能性があるのかを予測することができます。
癌は正常な細胞の遺伝子に、いくつかの傷が付くことにより発生する癌細胞の異常な増殖が原因です。正常な細胞は、周囲の組織が必要なときに適量の増殖をし、必要がなくなれば増殖をやめることができます。
しかし、癌細胞は周囲に関係なく増え続けるため、正常な細胞や組織が圧迫されたり、破壊されてしまい、正常な機能を維持できなくなってしまうのです。
転移とその生存率
癌はその性質によって、転移しやすいものとしにくいものがあります。乳癌の多くは乳管という乳汁を運ぶ管を形成する上皮に発生する上皮細胞癌です。
この乳管の上皮は、基底膜という組織に覆われており、癌が上皮に留まり乳管上皮に広がっていくものは非浸潤癌、上皮から基底膜を破って増殖するものは浸潤癌といわれています。
乳癌の種類が浸潤癌であった場合、まず一番近いリンパ節である腋窩リンパ節に転移します。そこからリンパ液の流れに乗って癌細胞は全身をめぐり、たどり着いた部位で増殖するリンパ行性転移をおこしてしまうのです。
乳癌が転移しやすい部位は、骨、肺、肝臓、脳などであり、転移があるかないかによって、5段階のステージにわけられます。
乳癌が発生した乳管を含む、乳腺に留まっている非浸潤癌の段階で早期発見できた場合、ステージは0期になり、生存率は100%といわれています。しこりが2cm以下であり、腋窩リンパ節に転移がみられない場合のステージはⅠ期であり、生存率は89%になります。
既に腋窩リンパ節への転移がみられたり、しこりが2~5cmと大きくなっている場合は、Ⅱa~Ⅱb期となり生存率は78%になります。
さらに進行すると、腋窩リンパ節の癒着や胸骨内側のリンパ節への転移がみられるⅢa期、胸壁に固定されていたり皮膚に炎症が広がっているⅢb期、腋窩、胸骨内側のリンパ節の両方に転移していたり、鎖骨上下のリンパ節に転移がみられるⅢc期となり、生存率は58~52%まで減少してしまいます。
そこから遠隔転移がおこるⅣ期では生存率は25%となり、完治は非常に難しい状態になります。
まとめ
リンパ節への転移が乳癌の生存率を低下させる(前編)
異常な細胞は場所を変えて増え続ける
転移とその生存率