「乳癌のガイドライン(前編)」では、乳癌のガイドラインについて、さらに外科療法についてガイドラインに沿い説明致しました。後編では、 乳癌 の治療法として放射線療法や薬物療法について ガイドライン に沿いご説明致します。
乳癌のガイドライン(後編)
放射線療法について
乳房温存術後の放射線療法は、乳房内再発率軽減と生存率の改善のために、強く勧められます。
乳房切除術後では、腋窩リンパ節転移が4個以上陽性の場合、生存率の改善が認められるので、術後放射線療法が強く勧められます(グレードA)。また腋窩リンパ節転移が1~3個の場合でも、術後照射が勧められます(グレードB)。
妊娠中、患側乳房や胸壁への放射線療法の既往がある場合は、乳房手術後の放射線療法ができません。また、患側上肢を拳上できない場合や、膠原病(強皮症、全身性エリトマトーデス)を合併している場合、リ・フラウメニ症候群など放射線療法で二次性悪性腫瘍が生じるリスクがある場合は、基本的に放射線療法が勧められません。
乳癌の痛みがある骨転移については、放射線療法で6~8割の疼痛軽減効果があり、放射線療法が勧められます。乳癌脳転移に対しても、転移の状態にあわせて定位手術的照射、全脳照射が勧められます。
薬物療法について
ホルモン受容体陽性の乳癌では、術前内分泌療法については閉経後と閉経前でアンサーが分かれています。
閉経後では、乳房温存を目的として術前内分泌療法を考慮してもよい(C1)ですが、閉経前は勧められない(C2)です。術前化学療法は、腫瘍径が大きく乳房温存を希望する場合、勧めてもよいとなっています。
閉経前ホルモン受容体陽性乳癌に対する、術後内分泌療法では、タモキシフェンの5年投与は強く勧められます。今回の2015年版でタモキシフェンの10年投与についてもグレードBで勧められると記載されました。
術後化学療法では、アンスラサイクリン・タキサンの順次もしくは同時併用が記載されています。またHER2陽性の場合、トラスツズマブが強く勧めらます。HER2陽性転移再発乳癌では、トラスツズマブ・ペルツズマブ・ドセタキセルの併用療法が一次抗HER療法として記載されています。
薬物療法の分野はガイドラインに記載された後も、次々と新しい知見が発表されますので、早いスパンで標準治療が変化していく分野です。
乳癌骨転移に対して骨吸収薬(ビスフォスフォネート・デノスマブ)は、骨折などの骨関連事象を抑制するため、強く勧められています。
ガイドラインを役立てよう!
ガイドラインを知ることで、自分の治療についての理解度が上がり、主治医の考えもわかりやすくなるので、医師とのコミュニケーションにも活用できます。何より、自分自身の治療を、自分で選択していくための、重要な参考ツールとなります。
ただしガイドラインに書いてある通りに、治療をすすめることが、あなたにとってベストの治療方針とは限りません。なぜなら、ガイドラインは一般的なものであって、あなたの信条や信念、あなたの身体の個性までは入っていないからです。
例えば、ある抗がん剤を使用することがガイドライン上すすめられていても、その薬に重度のアレルギーがあれば、使用するほうが危険です。その治療のメリット・デメリットを十分理解した上で、医師と相談しながら、自分自身で治療方針を決めていきましょう。
あなたにとっての、ベストな治療方針を納得して選ぶことができますよう、願っています。
まとめ
乳癌のガイドライン(後編)
放射線療法について
薬物療法について
ガイドラインを役立てよう