乳癌の治療は、手術、抗がん剤、放射線治療など多岐にわたり、大変複雑です。同じ乳癌と言う病名でも、病理結果や腫瘍径、転移の有無などで治療法が変わります。 ガイドライン とは、 乳癌 診療を行う医療者のために、道しるべとなる標準治療について記載されたものです。
乳癌のガイドライン(前編)
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乳がん診療ガイドライン
日本では、主に日本乳癌学会が刊行している「乳癌診療ガイドライン1 治療編」「乳癌診療ガイドライン2 疫学・診断編」の2冊が使用されています。
Q&A式で記載されており、アンサーはグレードA(十分な科学的根拠があり、積極的に実践するよう推奨する)からグレードD(患者に不利益が及ぶ可能性があるという科学的根拠があるので、実施しないよう推奨する)までがあります。
現在は2015年版が発刊されています。次項で、治療編の外科療法・放射線療法・薬物療法について紹介します。実際の治療においては、必ず主治医とよくご相談の上決定してください。
また「患者さんのための乳がん診療ガイドライン」が2014年に発刊されており、こちらは、わかりやすい言葉でガイドラインを解説してあります。
外科療法について
ステージⅠ・Ⅱの場合、乳房温存療法(乳房温存術+放射線療法)は乳房切除術と同等の生存率を示します。腫瘍径などの条件を満たし、患者が希望する場合は乳房温存療法(乳房温存術+放射線療法)が勧められます。
また、腫瘍径が大きい場合でも、術前化学療法で腫瘍が縮小し、温存療法が可能になる場合があります。術前の臨床検査でリンパ節転移が認められず、センチネルリンパ節生検で転移陰性の場合は、リンパ節郭清の省略が勧められます。
リンパ節郭清を行わないことで、リンパ浮腫のリスクが軽減できます。リンパ浮腫の外科治療(リンパ管細静脈吻合術など)は科学的根拠が現在は不十分であり、推奨グレードはC2(適用にあたっては十分な注意が必要)となっています。
早期乳癌において、乳房切除を行う場合、本人が希望すれば乳房再建が選択肢となります。
後編では、放射線療法や薬物療法についてご紹介します。
まとめ
乳癌のガイドライン(前編)
乳癌診療ガイドライン
外科療法について