女性の癌の発症部位の一位は乳癌です。日本では、女性の12人に1人の割合で乳癌になり、約3割で再発そして転移がみられます。 乳癌 と診断された場合、どのような 治療 を選択するのでしょうか。
乳癌治療の基本は4つ
乳癌の基礎知識
乳癌は、40代後半から60代後半の女性で発症リスクが高い傾向にあり、女性ホルモンの1つであるエストロゲン分泌の期間が長い方で発症リスクが高まっているのが特徴です。
エストロゲン分泌の期間が長い方(エストロゲン優位状態)とは、初潮年齢が早い、閉経年齢が遅い、妊娠や出産未経験、高齢出産、閉経後の肥満、ホルモン補充療法経験者などです。
それは、癌細胞の増殖や発育を促進しているのがエストロゲンだからです。逆に、プロゲステロン分泌作用を受ける期間が長い方、つまり妊娠や出産により大量のプロゲステロンが分泌される方、出産回数が多い方などは発症リスクが低いといわれています。
手術療法
手術は乳癌治療の基本です。疾患の根本である癌細胞を摘出することが必要で、後の再発や転移といったリスクを減らします。基本の手術は2つ。乳房全摘術そして部分切除術(乳房温存)です。
まず、全摘術ですが、腫瘍が大きい、癌が広範囲に広がっている、乳房内で多発している、そして本人が希望している、このようなケースで実施されます。
全摘術では乳房すべてが切除されますが、大胸筋と小胸筋を残すため肋骨が浮き出ることもなく、運動障害も軽度で済み、基本的に術後の放射線治療も必要ありません。
この全摘術は、近年若い女性の間で支持されています。その背景には、乳房再建術の技術進歩があります。近年の高技術により、再建手術の回数が減り、手術後目が覚めたときに胸のふくらみもあるため精神的なダメージが少なくなっています。
健康保険適用外のため費用は100万円ですが、身体負担がないこと、腹部や背中の大きな傷がないことなどメリットが多く、積極的に支持する女性が増加しています。
つぎに、部分切除術ですが、腫瘍を含む乳腺の一部が切除されるに留まり、乳頭と乳輪が残されます。この手術は、現在日本の乳癌手術の約6割の患者で選択されています。
生存率は切除の大きさに比例しないこと、近年の放射線治療、化学療法、ホルモン療法の発達により切除する範囲も狭くなってきていること、などが支持されている背景です。
術後の運動障害も軽度で、回復も早いのが特徴です。しかし、残った乳房に微小癌が残されている可能性があるため、術後は必ず放射線療法が施されます。
放射線療法
外側から癌細胞にX線をあて、癌細胞の増殖を抑え、死滅させる局所療法です。この療法は、効果が現れやすく、治療の傷みもありません。
放射線をあてるので、妊娠中や膠原病の方は受けられません。また前述のとおり、放射線療法は、部分切除術の後に必ず実施されます。
化学療法
化学療法とは、抗がん剤による治療のことです。血液やリンパ管を通じ、癌細胞が全身に散らばった可能性のある場合に実施されます。
点滴による静脈注射あるいは錠剤の服用のどちらが選択されます。抗がん剤は、癌細胞だけでなく正常な細胞も破壊してしまうので、脱毛、白血球減少、嘔吐、胃腸粘膜への影響などの副作用があります。
抗がん剤が効きやすい方もいますが、化学療法を勧められた場合には、副作用などについて医師としっかり相談し、前向きに取り組みましょう。
ホルモン療法
手術終了後の初期治療そして再発転移治療の際に実施されます。ホルモン療法を受けるかどうかは、まず手術により摘出された癌細胞にレセプターがあるかどうか調べることからはじまります。
レセプターは癌細胞内に存在していて、エストロゲンと結びつくことで癌細胞を増殖させていますが、この療法によって、レセプターとエストロゲンが結合することを阻止します。摘出された癌細胞にエストロゲンそしてプロゲステロン、どちらかのレセプターがあれば、この療法が実施されます。
ホルモン療法だけ受けてもよいですし、前述の化学療法を同時に受けることも可能です。しかし、摘出された癌細胞にレセプターがなければ、ホルモン療法は必要なく、手術後は化学療法のみ受けます。
このホルモン療法を受けると、低エストロゲン状態になるため、更年期障害のような症状が出ることがあります。
まとめ
乳癌治療の基本は4つ
乳癌の基礎知識
手術療法
放射線療法
化学療法
ホルモン療法