「乳房再建が女性に与える新たな人生(前編)」では、乳癌がもたらす環境の変化についてご説明いたしました。後編では、乳房再建という選択肢におけるメリットやデメリット、また乳房再建に適した時期についてご説明いたします。
乳房再建にはさまざまな不安がつきまといますが、 乳房再建 という治療法があることにより、女性は前向きに乳がんと向き合うことができます。
乳房再建が女性に与える新たな人生(後編)
形成外科の再建手術のメリット、デメリット
医療には、病気や怪我を治療するだけでなく、病気や怪我によって失ったり見た目が変わってしまった体の部位を元の状態に近づけるよう修復する再建という治療法があります。
形成外科でおこなわれる手術は、乳がんによって乳房を切除しなければならなかった女性の喪失感や容姿を気にすることにより日常生活に不都合が出てしまうなどの心の障害を改善する目的があります。
乳房再建方法には大きく分けて2通りの手術方法があり、1つはお腹や背中の脂肪と筋肉を胸に移植して胸を再建する方法です。
この場合は、自分の体の一部を移植するため、その部位に傷が残ってしまうというデメリットがありますが、保険適応で手術を受けることができ、自分の脂肪組織を使っているため自然な柔らかさがあります。
また年齢を重ねると共に自然に劣化していくため周囲の組織と比べて違和感なく再建できるというメリットがあります。
もう1つは、人工の乳腺を移植する方法です。直接人工乳房を挿入する方法と拡張器を用いて皮膚を伸ばす処置を行ったあと人工乳房を挿入する方法があります。
人工乳房であるため、硬く感じたり劣化によって変形がおこる可能性があることや、一部保険適応外になるというデメリットがあります。しかし、日帰りで1時間ほどで手術ができ、傷も1カ所で済むというメリットもあります。
乳房再建は、女性のさまざまな面において生活の質を高めることが期待できます。実際に、市販の下着を使用でき、子供と自然に入浴ができたり、周囲を気にせず外出でき、温泉旅行に行けるほど精神面が向上し行動的になる方もたくさんいるのです。
乳房を再建する時期の選択
乳房再建は、乳房を切除したときに同時におこなう方法と、乳房切除後に一定の期間を置いてからおこなう方法があります。
乳房切除と同時に乳房再建をおこなうと、手術も1回で済ませることができ、乳房を失った喪失感を軽減させることもできます。
しかし、放射線療法を行う場合は同時に再建することができません。また、乳がんの告知を受けて治療方針や手術について進めていくと同時に、短期間でどのような再建手術をおこなうのか形成外科で相談し、説明を受けて理解しなくてはなりません。
さらに、元々の胸と比較してしまい満足いかない結果になる場合もあります。
一定期間を置いて乳房再建をおこなう場合は、その期間に十分時間をかけて考えることができ、精神的に落ち着いてから納得のいく治療法や信頼できる医師を探すことができます。また、そのような環境で乳房を再建するため、満足のいく結果になる場合が多いです。
しかし、乳房がない期間の不都合さや、再び手術を受けなければならない不安、医療費の負担などは避けられません。
乳房再建という治療法があることにより、女性は前向きに乳がんと向き合うことができます。しかし、このような両面を把握した上で、自分の納得できる方法を選択することが必要です。
まとめ
乳房再建が女性に与える新たな人生(後編)
形成外科の再建手術のメリット、デメリット
乳房を再建する時期の選択