高プロラクチン血症は、月経不順や不妊の原因となります。薬物による治療が行われる場合、妊娠を希望する女性にとっては、赤ちゃんへの薬の影響や、本当に妊娠できるのかなど、不安でいっぱいになるのではないでしょうか。
そこで今回は、「 高プロラクチン血症 の 妊娠 」についてお伝えします。
高プロラクチン血症がある場合の妊娠について
出産から産後のホルモン変動
プロラクチンが血中で高いと、体内環境が妊娠後と同じ状態となるため不妊となるのですが、妊娠から産後にかけてホルモンはどのように変化するのでしょうか。
妊娠中は、女性ホルモン(または黄体ホルモン)であるプロゲステロンが増加して、子宮の内膜を分厚くすることで赤ちゃんが成長しやすい環境を作っています。胎盤の形成に関わるため、妊娠初期の流産を防ぐために、非常に大切な役割をします。
プロゲステロンと共に、もう一つの女性ホルモンであるエストロゲンも、胎盤から分泌され、出産までプロゲステロンとエストロゲンは上昇し続けます。
産後は、乳汁分泌ホルモン(あるいは母乳ホルモン)であるプロラクチンが増加し、エストロゲンが急激に低下します。プロラクチンは母乳の開始と維持に非常に大切であり、分娩直後に最高値となります。その後ゆっくり低下し、赤ちゃんがお乳を吸う刺激で一過性に上昇します。
なぜ不妊の原因になるの?
母乳分泌に関わるプロラクチンにはもう一つの働きがあり、それが「排卵の抑制」です。黄体ホルモンであるプロゲステロンに働きかけて、黄体期の状態を維持し、排卵を抑える作用があります。高プロラクチン血症が不妊となるのは、この働きによるものです。
授乳中の乳首への刺激は、子宮収縮を促し、産後の子宮の回復を助けます。しかし、この期間に妊娠してしまうと、子宮収縮により、次の赤ちゃんが流産しやすくなってしまいます。
また、分娩したばかりのお母さんの身体にとっても、次の妊娠は大きな負担になります。そのため、産後に上昇するプロラクチンは、卵巣に働きかけて排卵を抑制し、産後の数ヶ月間は次の妊娠を防ぐという重要な働きもあるのです。
不妊に関わる症状とは
プロラクチンの血中濃度や個人差によって、現れる症状は異なります。プロラクチンは乳汁分泌に関わるため、乳房が大きく張り痛みがでる、あるいは乳汁が出ることもあります。
それ以外に不妊に直接関わるものとしては、排卵困難による月経不順、無月経、無排卵月経、不正出血、性欲の減退、習慣性流産があります。
月経の異常や不妊の相談で産婦人科を受診した時に、高プロラクチン血症を指摘されるケースが最も多いです。
妊娠のためにできること
前述したように、高プロラクチンの状態では非常に妊娠しにくいため、プロラクチンの血中値を抑えることが重要です。
高プロラクチン血症は、薬物から腫瘍まで様々な要因によって起こりますが、過労や過度の運動、授乳による生理的な要因が最も多いとされています。薬剤治療とともに、まずは生活改善に取り組む必要があります。
その次に薬剤性が多く、最も頻度が低いものが下垂体腫瘍や甲状腺機能低下症などの病的要因となります。この場合は、薬剤治療に加えて、原因薬剤の中止や腫瘍が大きい場合は外科的な治療を考慮する必要があります。
また、プロラクチンは日中と夜間で値の変動がありますが、夜間にプロラクチンが異常高値となる潜在性高プロラクチン血症の人が少なくないと考えられています。
薬剤治療では、副作用として、吐き気や気分不良が起こることがありますが、新薬は内服回数も1週間に1回と少なく、副作用も軽減されています。
しかし、妊娠希望の際は、「パーロデル」など、妊娠中にも胎児に影響がでにくい、古いタイプの薬を内服する必要があります。
内服数日で症状が軽減されることが多いため、妊娠を希望される場合は、頑張ってなるべく飲み続けることが大切です。内服をやめると数日から数週間程度で値が戻るため、少なくとも妊娠まで内服を続ける必要があります。
まとめ
高プロラクチン血症がある場合の妊娠について
出産から産後のホルモン変動
なぜ不妊の原因になるの?
不妊に関わる症状とは
妊娠のためにできること