全身性エリテマトーデスは20~30歳代の若い女性に多く発症する自己免疫性の病気で、全身に紅色の斑点(紅斑)ができることが特徴的な病気です。しかし、症状にはバリエーションがあり、関節や臓器にも症状がでることがあります。
そこで今回は、全身性エリテマトーデスが口の中(口腔内)に起こす「 口内炎 や 舌癌 」についてお話しします。
全身性エリテマトーデスが原因の「口内炎や舌癌」とは?
口腔内の症状
全身性エリテマトーデスは、その名の通り、全身のあらゆる器官に障害を及ぼします。そのため、病気を診断するための診断基準も10項目以上あり、その中の一つが「口腔内潰瘍」という項目です。
「口内炎」は潰瘍を含む、口の中の炎症のことを指します。潰瘍(かいよう)は、皮膚や粘膜などを覆う組織が欠損する(崩れる)ことで、浅いものは「びらん」とも言われます。
潰瘍が進行すると穴が空いてしまいます(穿孔)。皆さんも、「胃潰瘍の穿孔」という言葉を耳にしたことがあるのではないでしょうか。
全身性エリテマトーデスは軽い口腔内の炎症のこともあれば、口腔内潰瘍を生じることもあり、4人に1人に認めるという報告があります。
特徴としては、無痛性のものが多く、口の中でも特に上の部分にできるので、潰瘍が進行すると鼻の中とつながってしまうことがあります。まれにながら、炎症が持続することによって口腔内(歯肉や舌など)のガンが発生することがあります。
世界中で多くの研究が行われていますが、自分の免疫系が自分を攻撃してしまう(自己免疫疾患)という以外、残念ながら原因は特定されていません。そのため、口腔内病変に関しても、なぜ口の特定の部位のみが障害を受けやすいのか分かっていません。
全身性エリテマトーデスの口内炎の特徴とは?
ほとんどの場合、口の中の上顎側(硬口蓋)、口の奥(咽頭)や頬に当たる部分の粘膜に潰瘍ができます。潰瘍では、上皮が崩れ落ちるので、見た目は、白くて真ん中が凹んだ形になります。
口の中には、細かい神経や血管が走っているため、通常の潰瘍病変では強い痛みが伴いますが、全身性エリテマトーデスでは無痛性であることが特徴です。
特に硬口蓋は鼻腔(鼻からの息の通り道)の底面と接しているため、硬口蓋が潰瘍で侵食されると、穴があいて、鼻の中と口が通じてしまいます。そうすると、食事をするときに食べ物が鼻の中に逆流してしまうため、日常生活が非常に不便になります。
一部では、痛みを伴うこともあり、口内炎をきっかけに全身性エリテマトーデスが見つかることもあります。
ガンにも要注意!
頻度は低いものの、全身性エリテマトーデスの口腔内潰瘍と思っていたら、ガンだったというケースが全世界で報告されています。
口腔内のガンの初期は、全身性エリテマトーデスに認める口腔内潰瘍の見た目と非常に似ていて、白っぽく、組織が壊れるため凸凹しています。発症初期では、痛みが少ないことも似ています。
全身性エリテマトーデスは妊娠可能年齢の女性に多く、妊娠中に舌ガンが見つかったケースも報告されています。
口の中はリンパや血管が豊富で、小さなガンでも、知らないうちにリンパ節にまで転移した進行ガンで見つかるケースも多いため、全身性エリテマトーデスだから潰瘍だろうと決め付けずに、早めに専門家の診察を受けることが大切です。
口腔内病変の治療とは?
口腔内の炎症が強く現れているということは、自分自身に対する免疫が活性化している状態ですので、免疫抑制効果のある薬(副腎皮質ステロイド内服またはステロイドパルス療法、免疫抑制薬)や、痛みがあれば対症療法として適宜鎮痛薬が用いられます。
病型や重症度によって、治療法や治療期間などは細かく別れます。発症早期や、口腔内単独の症状であれば内服薬のみでもコントロールできることが多く、普段通りの生活が可能です。
舌ガンを含めた口腔ガンの場合は、浸潤度や転移の有無によって、手術方式が大きく変わります。再発のリスクが高いため、手術とともに、抗がん剤治療を併用します。
まとめ
全身性エリテマトーデスが原因の「口内炎や舌癌」とは?
口腔内の症状
全身性エリテマトーデスの口内炎の特徴とは?
ガンにも要注意!
口腔内病変の治療とは?