体の怠さや足のむくみ、寒気を感じるという症状を自覚した場合には 甲状腺機能低下症 が隠れている場合があります。
もし甲状腺機能低下症が見つかった場合には、内服薬で治療できるので少しでも疑わしい時には早めに病院を受診しましょう。
甲状腺機能低下症による倦怠感やむくみに要注意
甲状腺機能低下症とは
甲状腺ホルモンは体の代謝を維持するだけでなく、臓器を正常に動かすのに重要なホルモンです。甲状腺機能低下症は、その甲状腺から分泌されるホルモンの低下により、体の代謝が落ち、体にさまざまな影響を及ぼす病気です。
実際には、皮膚が乾燥してかさかさする、毛が抜ける、寒気がする、顔や手足にむくみが出る、声帯にもむくみが出るため声がかれる、怠くて疲れやすい、傾眠傾向になる、胃腸の動きが落ちることによる便秘、心臓の動きが落ちることによる脈拍の低下、脳の活動も落ちるのでうつ症状が出ることのもあります。
そのため、うつだと思い精神科を受診し、採血検査で甲状腺機能低下症を指摘されることもあります。甲状腺機能低下症のむくみは、押してもへこまないという特徴があります。心臓や腎臓の病気で体に水が溜まる場合のむくみは、押すとへこむので違いが見分けられます。
甲状腺機能低下症の原因
甲状腺が低下する原因は大きく分けて3つあります。それは、甲状腺そのものが障害されている場合、脳から甲状腺ホルモンを分泌するように指示を出す甲状腺刺激ホルモンなどが低下している中枢性の場合、甲状腺ホルモンは分泌されていてもそれを感知する臓器の反応性が低下している甲状腺ホルモン不応症の場合の3つです。
後者2つは脳の病気や遺伝子異常などの稀な病気なので、甲状腺機能低下症のほとんどが甲状腺自体の障害によります。
甲状腺自体の障害で一番多いものは、橋本病と呼ばれる慢性甲状腺炎です。20歳以降の女性に発症することが多く、男性の20倍の比率と言われています。20-40歳が約8割を占め、小児の発症は稀です。
未だに医学的に、発症の機序は不明ですが、自分の免疫異常によりリンパ球が甲状腺を破壊してしまうことはわかっています。甲状腺機能低下による体の不調以外に甲状腺自体が腫れることがあるため、首が太くなったことを気にして受診する患者さんもいます。
その他には甲状腺手術後や放射線治療後によるもの、海藻類などのヨードの摂り過ぎ、産後や甲状腺炎後の一過性のものなどがあります。
甲状腺機能低下症の検査
まずは問診でどのような症状があるか、発熱や甲状腺の治療歴の有無などを聞かれます。診察では甲状腺が腫れているか、どのようなむくみがあるか確認されます。
採血で甲状腺ホルモンと甲状腺刺激ホルモンを測定します。甲状腺自体の障害による場合は、甲状腺ホルモンの低下とそれに反応して甲状腺ホルモンを分泌させようとするため甲状腺刺激ホルモンが上昇しています。
甲状腺を破壊する抗甲状腺抗体の測定も行います。それでも原因が分からない場合は、甲状腺を直接細い注射針で刺して細胞を見る穿刺吸引細胞診が行われます。
健診で行うような一般検査では、コレステロールやクレアチンキナーゼが高値になります。そのため甲状腺機能低下症があることに気付かず、健診や他の病気などでコレステロールやクレアチンキナーゼが高いことを偶然指摘されて初めて見つかる人もいます。
甲状腺機能低下症の治療
甲状腺機能低下症の治療は急ぐものではないので、症状が重くなく、原因が一過性であるような産後、甲状腺炎後の回復過程の場合は甲状腺ホルモンの補充内服は行わず経過を見ることもあります。
またヨードの摂り過ぎによる場合は、食事の指導を行います。橋本病や放射線治療後の甲状腺機能低下症の場合は永続的に甲状腺ホルモンの補充が必要なため、チラージンという内服薬を少量から開始します。
チラージンは採血で甲状腺ホルモンと甲状腺刺激ホルモンの数値を確認しながら、正常化するまで徐々に増量していきます。
2~3か月で維持量となることが多いですが、体調や経過で必要な量が変化することもあるので外来には定期的に通院します。チラージンは臓器の動きを活発にさせる可能性があるので狭心症や肺に合併症がある患者さんには慎重に投与することが必要です。
まとめ
甲状腺機能低下症による倦怠感やむくみに要注意
甲状腺機能低下症とは
甲状腺機能低下症の原因
甲状腺機能低下症の検査
甲状腺機能低下症の治療