橋本病などさまざまな原因で甲状腺ホルモンが不足する甲状腺機能低下症では、むくみ、徐脈、記憶力低下、月経異常など全身に多彩な 症状 が出現します。
しかしどの症状も決め手とはならず、甲状腺機能低下症の有無は採血検査で甲状腺ホルモン(FT4)や甲状腺刺激ホルモン(TSH)をチェックしないとわかりません。
循環器科や皮膚科など実際の医療現場でも採血検査で 甲状腺機能低下症 の有無を チェック しています。
甲状腺機能低下症の症状はさまざま。採血でチェックを。
甲状腺機能低下症の概要
首の前面に位置する甲状腺からは甲状腺ホルモンが分泌されています。甲状腺機能低下症は甲状腺ホルモンが不足する病気です。
さまざまな原因や病気によって甲状腺ホルモンは低下しますが、成人の甲状腺機能低下症のなかでもっとも多い原因である慢性甲状腺炎(100数年前に日本人の橋本先生が発見したので橋本病とも呼ばれます)は特に40代以降の女性に多く、治療を必要としない軽度のものを含めると20%程度の成人女性は慢性甲状腺炎をわずらっているのではないかと考えられています。
慢性甲状腺炎以外には生まれつきのもの(先天性甲状腺疾患。先天性甲状腺ホルモン合成障害や先天性甲状腺無形成など)、薬剤性(ヨードやリチウム、アミオダロン)、脳下垂体の異常(脳下垂体からは甲状腺刺激ホルモンと呼ばれる甲状腺に作用して甲状腺ホルモンの分泌を促すホルモンが出ています。シーハン症候群や下垂体腺腫など)、甲状腺手術後(甲状腺がんなどで甲状腺を全て摘出したときなど)などがあります。
甲状腺機能低下症の症状
甲状腺から血液中に分泌された甲状腺ホルモンは全身に作用し、主として基礎代謝を調節しています。そのため甲状腺機能低下症では体のあちらこちらにさまざまな症状が出現します。
全身の症状として体のだるさ、疲れやすさ、体重増加、体温低下、声がかすれるなどの症状が出ます。消化器症状として、舌が大きくなる(舌肥大)、便秘、食欲低下を自覚することがあります。心臓の症状として心肥大、脈が遅くなる(徐脈)、低血圧、息切れなどが出現することもあります。
神経や筋肉の症状としてこむらがえり、筋肉痛、筋力低下があります。皮膚症状として手足のむくみ、肌が乾燥する・荒れる、髪の毛が薄くなる、眉毛の外側1/3の部分が薄くなる、皮膚が黄色くなるなどがあります。
精神症状として記憶力低下や計算力低下、話すスピードが遅くなる、活動性が低下するなどがあります。そのためうつ病や認知症と間違われる場合があります。さらに月経過多や無月経、そして不妊の原因になることもあります。
甲状腺機能低下症の診断は採血検査でないとできません
上述した症状のいくつかに該当する方も多いのではないかと思います。
しかしこれらの症状はどれひとつ甲状腺機能低下症の決め手、すなわちこの症状があれば甲状腺機能低下症の可能性がとても高い(専門用語で特異度(とくいど)が高い症状と言います)、あるいはこの症状がなければ甲状腺機能低下症はほぼ否定できる(感度が高い症状)といったものはなにひとつないのです。
そのため、セルフチェックで甲状腺機能低下症の有無を判定することはできません。診療所や病院で採血検査をしてチェックすることが必要です。
採血検査では甲状腺ホルモンであるFT4(フリー・ティー・フォー)と上述の甲状腺刺激ホルモン(TSH(ティー・エス・エイチ))を測定することが基本で、どこの医療機関でも測定してもらうことが可能です。
FT4やTSHが正常であれば、どれだけ症状があてはまっても、それは甲状腺機能低下症ではありません。反対に全く症状を自覚していない甲状腺機能低下症の方も珍しくありません。
医療現場でも採血検査で確認しています
実際の医療現場でも甲状腺機能低下症を疑ったときは必ず採血検査を行っています。
患者さんが甲状腺機能低下症を心配している場合はもちろん、徐脈を診療する循環器科の先生、脱毛症を診る皮膚科の先生、認知症が疑われている人を診察する精神科の先生、さらには不妊症を担当する先生なども一度は採血検査で甲状腺機能を確認することがよくあります。
採血をしないとわからないことは上述のとおりですが、甲状腺機能低下症の治療が簡単かつほぼ確実にできることも大きな理由です。甲状腺ホルモン剤を内服することが治療の基本です。
まとめ
甲状腺機能低下症の症状はさまざま。採血でチェックを。
甲状腺機能低下症の概要
甲状腺機能低下症の症状
甲状腺機能低下症の診断は採血検査でないとできません
医療現場でも採血検査で確認しています