膠原病は根治が難しいため、患者は長い年月をうまく付き合っていかなければならない病気です。発症のほとんどが出産可能期にある女性のため、時に妊娠や出産に対する問題を伴います。
しかし、 膠原病 患者の 妊娠 ・出産は絶対に不可能ということはありません。リスクを最小限に抑えながら計画的に進めることができるならば可能な場合もあるのです。
膠原病患者の妊娠・出産リスクと対処法
計画的な妊娠・出産なら可能な場合も
膠原病の患者の妊娠・出産には様々なリスクを伴うため医師の協力が不可欠です。主治医には「子供が欲しい」という強い希望を伝えることが最も重要です。
主治医と相談しながら病気を出産可能な状態までコントロールしていく治療プログラムを進めることや、妊娠中に胎児へ影響のない薬を使う必要があります。そのように準備を整えた上で病状の良いときを見計らって計画出産するようにすれば、病気のリスクは最小限に抑えられます。
重症のときには避妊が必要
膠原病が重症のときには、母体を守るために避妊が必要です。このような状態のときの妊娠は母体に重篤な影響を及ぼしかねないからです。
低用量ピルはほぼ100%の避妊効果があり、骨を守る働きも期待できますが、抗リン脂質抗体が陽性の人の場合は血栓症を起こす危険性があるためにお勧めできない避妊方法です。
抗リン脂質抗体が陰性の人ならば低用量ピルの使用を制限する必要はありません。その他の避妊方法、避妊用隔膜やゼリー、コンドームの使用は特に問題ありません。しかし、子宮内装置による避妊は感染症を起こしやすいため注意が必要です。
妊娠・出産が可能な目安
妊娠・出産が可能となる目安として、いくつかの条件が必要です。膠原病が少なくても半年以上(できれば10ヶ月以上が望ましい)の長期間にわたって寛解の状態でありかつ今後も良い状態が続くと予想されること、服用しているステロイド薬は維持量(1日15mg以下)であること、膠原病による重い内臓障害がないこと、免疫抑制剤は使っていないこと、心筋障害・肺血圧症がないことがあげられます。
また、SS-A抗体と抗リン脂質抗体が胎児に移行することによる胎児へのリスクについても事前に充分な理解をしておくことが必要です。
妊娠から出産までの治療プログラム
膠原病患者の場合、妊娠中は病状が軽くなり、出産後に悪化する傾向があります。そのため妊娠中から産後数週間は注意深く治療プログラムを組む必要があります。
具体的には妊娠30週までは薬を維持量とし、30週目以降から分娩後4週までは薬を増量した状態を続けたのちに少しずつ減らしていくというのが一般的です。なお、病気の状態によっては分娩当日と翌日は胎児への影響が少ないとされているステロイド薬を追加投与する場合もあります。
膠原病患者の妊娠・出産は家族の協力が不可欠
出産直後から始まる育児というのは相当な体力・気力を要します。また、育児は強いストレスにさらされるのが普通です。それらの理由から育児が始まると膠原病患者にとって病気悪化のリスクがとても高い状態になります。
病気の悪化を防止するために今まで以上に家族の協力が不可欠となりますので、事前に家族内で役割分担を話し合っておくことが大切です。さらに、万が一病気が悪化した等の育児に困ったときの手助けについて何を・誰に・どのように頼むのかを決めて前もって手配しておく等の準備が必要です。
膠原病患者の妊娠・出産にはリスクがありますが、無事に出産している患者も約半数います。膠原病だからと妊娠を諦める必要はありません。妊娠を望む場合は諦めずに主治医とよく相談しながら治療を続けることが最も大切なのです。
まとめ
膠原病患者の妊娠・出産リスクと対処法
計画的な妊娠・出産なら可能な場合も
重症のときには避妊が必要
妊娠・出産が可能な目安
妊娠から出産までの治療プログラム
膠原病患者の妊娠・出産は家族の協力が不可欠