膠原病は関節リウマチや全身性エリテマトーデスなどたくさんの病気の総称です。病気によってさまざまな部位に病変が出現し、しかも多くは複数の臓器が障害されます。
そのため 膠原病 の専門家はまず 検査 よりも先に、頭から足まで全身をくまなく診察し、異常所見を集め、その上で検査を行います。よく施行される検査は自己抗体のチェックで、採血検査で確認することができます。
膠原病の専門家は検査よりも全身の診察所見を大切にします
膠原病は多数の病気の総称です
全身の複数の臓器(結合織や血管、肺、腎臓など)に炎症を起こすことで、さまざまな症状が出現する膠原病(こうげんびょう)はたくさんある病気をまとめた呼び方です。
具体的には、関節リウマチ、全身性エリテマトーデス(しばしば英語表記の頭文字をとってSLE(エス・エル・イー)と呼ばれます)、全身性強皮症(以前は単に“強皮症”と呼ばれていました)、多発性筋炎・皮膚筋炎、結節性多発動脈炎といった病気が含まれます。
なお膠原病は上記の古典的膠原病と呼ばれるものの他にその近縁疾患(悪性関節リウマチ、成人スチル病、抗リン脂質抗体症候群、混合性結合組織病、顕微鏡的多発血管炎、多発血管炎性肉芽腫症(以前はWegener肉芽腫症(ウェゲナーにくげしゅしょう)と呼ばれていました)、好酸球性多発血管炎性肉芽腫症、大動脈炎症候群(高安(たかやす)動脈炎とも呼ばれます)、側頭動脈炎(そくとうどうみゃくえん。巨細胞性動脈炎とも呼ばれます)など)、そして膠原病類縁疾患(シェーグレン症候群、ベーチェット病、強直性脊椎炎(きょうちょくせいせきついえん)など)にわけることがありますが、専門的になるのでこの項では全てをひっくるめて“膠原病”として扱います。
また同じような用語でリウマチ性疾患、結合組織疾患という言葉がありますが、ほぼ同じ意味と考えていただいてよいでしょう。
膠原病は未だに原因やその治療法が確立していない部分が多い病気で、そのため上記の個々の疾患のうち、関節リウマチを除く全てが厚生労働省の指定難病に含まれています。
各々の病気について詳しく知りたい方は、難病情報センターのホームページを参照されるとよいでしょう。専門家によってわかりやすく記載されており、おすすめです。
膠原病の専門家は診察所見を大切にします
上記のように膠原病はたくさんある病気の総称で、さらに病変の部位も1つではないことも多いために、胃潰瘍の検査→胃カメラ、心筋梗塞の検査→心電図、糖尿病の検査→血糖値といった“必殺技”のような検査がありません。
そのために、膠原病の専門家の医師(ほとんどは内科医です)は、まずは全身を詳しく診察するところから診療を始めます。
聴診器で心臓や肺を聴診することはもちろん、頭の横側にある動脈(最初の病名の中にある側頭動脈)、目、口の中、首や鎖骨の血管の雑音の有無、手指の腫れや変形・熱感、爪、全身の関節。全身の皮疹・赤みの有無などをくまなく調べます。
もちろん痛みや腫れなど自覚症状がある部位は徹底的に診察します。
胃潰瘍などを担当する消化器内科、心筋梗塞などを担当する循環器内科、糖尿病を担当する糖尿病・内分泌内科の医師も全身診察は行いますが、内科医の中で採血やレントゲンなどの検査に頼らずに診察所見で診断を進めていくことをもっとも得意としているのは膠原病専門の医師だと言われています。
ただし全国的に見ても膠原病を専門としている医師の数が少ないのが実情です。
自己抗体
膠原病を診断するときに全く検査を行わないわけではありません。よく行われる検査として自己抗体(じここうたい)と呼ばれるものを採血検査でチェックします。本来、抗体はからだの外から体内に侵入した異物に対してつくられ、からだを守る役割をする物質で、免疫システムにかかせないものです。
ところが自分自身の体に対して抗体が出来る場合があり(これが自己抗体です)、自己抗体が病態に深く関わっている病気を自己免疫性疾患と言います。膠原病は自己免疫性疾患です。ただし自己免疫性疾患=膠原病ではありません。
例えば甲状腺の病気であるバセドウ病は、甲状腺に対する自己抗体ができる自己免疫性疾患ですが膠原病ではありません。自己抗体にもたくさんの種類があり、個々の膠原病によって陽性率が違います。さらに健常な人でも陽性になることがあり、結果の解釈には注意が必要です。
やはり上述した診察所見が大切で、あくまで採血での自己抗体の有無はその補助と考えるべきでしょう。なお個々の病気に関連した自己抗体についての詳細については上記の難病情報センターのホームページをごらんください。
まとめ
膠原病の専門家は検査よりも全身の診察所見を大切にします
膠原病は多数の病気の総称です
膠原病の専門家は診察所見を大切にします
自己抗体