からだの中にがんがある場合、ある種のタンパク質やホルモンが増加する、あるいは健康な人には存在しない物質が出現することがあります。このような物質は腫瘍マーカーと呼ばれ、その多くは 血液検査 で測定され、 がん 診療に利用されています。
ただし腫瘍マーカーが正常値であっても必ずしもがんではないとは言えないこと、反対に腫瘍マーカーが異常値であっても絶対にがんだとは断定できないことに注意が必要です。
がんの血液検査である腫瘍マーカーの注意点を説明します
腫瘍マーカーとは何か
からだの中にがん(悪性腫瘍)ができると、ある種のタンパク質やホルモンが増加する、あるいは健康な人には存在しない物質が出現することがあります。このような物質は腫瘍マーカーと呼ばれ、その多くは血液検査で測定され、がん診療に利用されています。
さまざまながんに対して、たくさんの腫瘍マーカーが見つけられており、さらに医学の進歩とともに、その数はますます増加しています。しかしながら、腫瘍マーカーにはいくつか注意点や問題点が存在します。
代表的な注意点として、腫瘍マーカーが正常値であっても必ずしもがんではないとは言えないこと、反対に腫瘍マーカーが異常値であっても絶対にがんだとは断定できないことがあります。“何だ、結局何も言えないのか”と思われた方がいるかもしれません。実はそのとおりなのです。
そのために、医師は複数の腫瘍マーカーを組み合わせる、間隔を空けて測定しその変化をみる(どんどん増加してくるようならばがんの可能性が高い)、CTなどの画像検査や胃カメラ・大腸カメラなど他の検査所見も参考にする、などの方法によって注意深くがん診療にあたっています。
この項ではこれらの注意点について詳しく説明していきます。
腫瘍マーカーが正常値であっても、必ずしもがんがないとは言えません
一般的に腫瘍マーカーはがんが大きくなればなるほど、その数値が大きくなります。したがって、ごく小さな早期のがんでは腫瘍マーカーは正常範囲にとどまる場合があります。
反対に腫瘍マーカーが増加してくるくらいのがんであれば、(がんの種類にもよりますが)それなりにがんが大きくなっていることが多く、そのためX線やCT、胃カメラなどの検査でもがんを見つけることができる可能性が高くなります。
悪くすると、腫瘍マーカーが異常値となったときには、すでに他の部位にがんが転移してしまっているということもありえます。
以上のことから、腫瘍マーカーはほとんどの場合、市町村の住民検診では採用されていません。これはコストとパフォーマンスを考えると腫瘍マーカーよりもX線やバリウム検査、便鮮血検査などの方が、がんの早期発見には適していると考えられているからです。
ただし、コストを考慮に入れない場合、例えば自分で検査代を負担する人間ドックでは、しばしば腫瘍マーカーが検査項目に含まれています。また人間ドックや会社検診では腫瘍マーカーの血液検査をオプション、つまり追加料金を自己負担すると受けることができる場合もあります。
追加料金を払ってまで腫瘍マーカーの検査を受けた方がよいのかどうかについては、個人の考え方や背景によるとしか言えません。ただしこの“背景”は考慮するとよいでしょう。要は、じぶんにがんになりやすい素因があるかどうかです。
具体的には喫煙歴(タバコは全身のほぼすべてのがんに対してリスクとなります。ただし、がんを気にして腫瘍マーカーを測定するくらいであれば、まず禁煙するべきであることは言うまでもありません)、がんの家族歴(両親や姉妹など血のつながった人にがんになった人がいるか)などです。
特に乳がんや卵巣がんなど遺伝性が強い場合があるがんになった血縁者、あるいは比較的若い年齢でがんになった血縁者がいる人は要注意です。
腫瘍マーカーが異常値であっても、必ずしもがんがあるとは限りません
腫瘍マーカーはその種類にもよりますが、がん(悪性腫瘍)ではないときにも増加することがあります。
例えば、卵巣がんの腫瘍マーカーとして重要なCA125は子宮内膜症や子宮腺筋症でも値が上がります。肝細胞がんの腫瘍マーカーとして有名なAFPは妊娠時にも数値が上昇することが知られています。
大腸がんや胃がんの腫瘍マーカーであるCEAは糖尿病患者や喫煙者で異常値を示すことがあります。
もちろんがんの有無は慎重に見極める必要がありますし、たとえがんではないと判断された場合でも、異常値を示した腫瘍マーカーの推移を観察していくことが欠かせません。
まとめ
がんの血液検査である腫瘍マーカーの注意点を説明します
腫瘍マーカーとは何か
腫瘍マーカーが正常値であっても、必ずしもがんがないとは言えません
腫瘍マーカーが異常値であっても、必ずしもがんがあるとは限りません